第34回銀の鞍賞観戦報告

 2001.12.24、高知、1400m

今年の天皇誕生日は日曜日、よってクリスマスイブは振替休日。ということでこの週末は3連休。巷にはクリスマスムードが漂い、有馬記念ウィークでもある中、ワシはやっぱりアラブ観戦なのであった。せっかくの3連休、重賞が施行されるのであれば観ない手はない。
というわけで、観戦したのは高知の2歳重賞、銀の鞍賞。今回で34回目となる、伝統の一戦。過去の勝ち馬には、後に兵庫に移籍して園田金盃を勝ったタカサゴスピードなども名を連ねている。一昨年の勝者はチーチーキング、昨年の勝者はプレシャスボーイ、ここ2年は勝ち馬が後の3歳戦線、そして古馬一線級の競走において、主力の1頭として健闘している。ワシはこのレース、今回が初観戦。

高知へ。往路は快速ムーンライト高知にて。青春18きっぷの旅。明石停車が1:00で日をまたがなくていいので、18きっぷ利用の上では非常に都合が良い。高知到着が7:14。今回はほとんど眠れぬ車中泊であった。
降り立った早朝の高知、いくら南国といえど、この時季この時刻はやっぱり寒い。始発のファンバス発車時刻まで、繁華街のドトールコーヒーで時間を潰す。そして高知駅前10時発のファンバスで競馬場に。これが今年3度目の高知競馬場となる。

天気は晴れ。おかげで、陽が高くなるにつれて次第に暖かくなってくる。南に向いた正面スタンドに座っていればけっこう快適。
馬場状態は稍重。見た目には良馬場と変わらない。表面は乾いており、ハローかけが通ると砂が舞う。

昼頃に"同志"ディープさん、高知の主もりも先生がお越し。前日はサラ系2歳重賞金の鞍賞を、御両人プラス電設師の3人で観戦し、昨晩は忘年会だったとのこと。電設師は今日は仕事で来場は叶わず、残念。
この日は名古屋でサラの統一GIIレース、名古屋グランプリがあり、この場外発売のため、メインレースの銀の鞍賞発走は、時間が繰り下がって16:10。

※銀の鞍賞についてはここからです
さて、銀の鞍賞。出走馬は以下のフルゲート12頭。()内は騎手、性別、斤量。
チュウオーボス(川江、牡、55k)、ミツキノミヤロン(西川、牝、53k)、マルチタイガー(徳留、牡、55k)、ミスターブラウン(西内、牡、55k)、ヒダカシュウホウ(北野、牡、55k)、レッツゴーベイビー(宮川、牡、55k)、ホベツクイン(赤岡、牝、53k)、ホーエイミラクル(戸梶、牝、53k)、チーチーメガミ(中西、牝、53k)、ユタカビジン(山北、牝、53k)、テイケイミチカヒメ(花本、牝、53k)、カミケンマック(倉兼、牡、55k)
負担重量は定量、牡馬55k牝馬53k。

パドックから発走まで
さてパドック。季節柄か、どの馬もおしなべて冴えぬ毛艶であるので、そのあたりは個々には触れぬことにする。
1番チュウオーボス。3戦1勝。馬体重551kの大型馬。確かに大きい。しかし出来は平凡。
2番ミツキノミヤロン。5戦1勝2着2回。チャカチャカと小刻みな脚の送りで周回。
3番マルチタイガー。7戦5勝2着2回と、ここまで断然の成績を残している。馬体の実入りや毛艶はさすがにこの中では良い。時折ガッとなるのをなだめられている。
4番ミスターブラウン。7戦2勝1着1回だが、2勝はいずれも800m戦。尾花栗毛、パワーレイクみたいなルックス。トモの送りが硬い。
5番がヒダカシュウホウ。6戦2勝2着2回。マルチタイガーを下した星が光る。今月9日、福山の全日本アラブ2歳優駿に遠征した馬(結果は7着)。冬毛が出ている。雰囲気は福山での前走時と変わらない、こじんまりとした印象。
6番レッツゴーベイビー。7戦1勝2着1回。気が悪いのか、周回には加わらず、パドック入り口の横で1頭隔離されていた。ガッチリした体型。
7番ホベツクイン。6戦未勝利2着2回。焦れ込んでの周回。細身であるのに腹周りだけボテッとした体型。
8番ホーエイミラクル。3戦2勝。腹周りが重い。黒鹿毛の艶はよく見ると大したことはない。
9番チーチーメガミ。6戦1勝。トモの送りがギッタンバッタンしている。雰囲気はある。
10番ユタカビジン。6戦1勝。馬体重418kの数字通り、やはり小さく、そして細く見える。なるほどビソウサウス産駒といった感じの芦毛。
11番テイケイミチカヒメ。5戦1勝2着2回、キタナい芦毛で顔には流星、ちょっとハッコーディオスのニセモノみたい。冬毛気味だが馬体のシルエットは力感があって悪くない。
12番カミケンマック。7戦1勝。トモの送りが歩みについてこないという感じの、妙な歩様。首の高い周回。

本馬場入場から各馬次々に返し馬を敢行。マルチタイガーはクビを下げた、ハミにもたれたような走り。ヒダカシュウホウは小気味よいキャンター。

マルチタイガー(38KB)
マルチタイガー、つんのめったようなフォームの返し馬
奥の芦毛はユタカビジン

「ヒダカシュウホウ、全日本の時は全然パッとしなかったけど、この中に入るとそれなりに見えるなあ。」とディープさん。「551kはともかくとして、どの馬もそれなりの馬格で格好はついてるよね。貧相な馬ばっかりの2歳戦じゃなくてよかったわ。」とも。
予想。といってもお初の馬がほとんどで、なおかつ抜けた馬が1頭にライバルが1頭という状況。ここは素直に本命サイドのマルチタイガー−ヒダカシュウホウの馬複1点。

レースなり
レース発走。距離は1400m。どの馬にとっても初めて経験する距離。福山のマイルを走ったヒダカシュウホウにとっても、千四は初。ゲートは4コーナーのポケット。時刻は4時をまわり、太陽は西の空低く雲に隠れ、かなり薄暗い中、ゲートオープン。
最内のチュウオーボスがちょっと立ち後れる。マルチタイガーは好発で前へ。その内からミツキノミヤロン。外からチーチーメガミも被せ気味にフロントを取りにいく。大外カミケンマックはこれらの直後外に。テイケイミチカヒメが先行勢を前に見る次列に。以下は好位、中団。ユタカビジン、ホーエイメガミらが続き、ヒダカシュウホウは最後方を追走。

1周目(30KB)
最初の正面スタンド前
先頭橙帽チーチーメガミ、赤帽がマルチタイガー

1、2コーナーから向こう流し、フロントは息も入らぬであろうせめぎ合い。外からチーチーメガミが執拗に前へ前へ、インではミツキノミヤロンも負けじにといった具合。両頭の間でマルチタイガーが窮屈な感じで半馬身ほど下がりかけるが、それでも位置はキープしている。次列外にカミケンマックが付きまとい、テイケイミチカヒメは引き続き5番手あたり。ここから後ろはやや開き、ホーエーメガミ以下が追走。
レースの流れが一変するのは3コーナー手前、先行勢と中団との差が一気に詰まる。そしてここに、外から格段の脚いろで迫ってきたのがヒダカシュウホウ。バック半ばから差し脚開陳。前半の先行争いが堪えたか、怪しくなるフロント勢に、好位からテイケイミチカヒメ、中団からホーエイメガミが追い付くところ、三分三厘でこれらをまとめて呑み込んで、あれよあれよという間に先団へ。四角でホーエイメガミが先頭に立ったのも一瞬のこと、ヒダカシュウホウが堂々先頭に躍り出て、最後の直線は独走となってゴールへ。鞍上北野騎手、ゴール手前から特大のアクションで拳を握り、「よっしゃぁ!」叫び一発とともにゴールイン。
そして2着争い、外目から束の間先頭に立ったホーエイメガミが直線インに入って粘るところ、ヒダカには後ろから交わされつつも中団から終いスルスル上昇してきたユタカビジンが、これをゴール寸前交わして2着。ホーエイメガミはアタマ差で3着。終始好位のテイケイミチカヒメが4着。5着はこれも後方よりのレッツゴーベイビー。マルチタイガーは8着に終わる。

ヒダカシュウホウ(39KB)
ヒダカシュウホウ、ゴールへ
鞍上北野、大きくガッツポーズ

レース終わって
ヒダカシュウホウは単勝2番人気だが、大本命のマルチタイガーがトび、2着に単勝7番人気のユタカビジンが紛れ込んだおかげで、払戻金は馬複9550円、枠単5440円。
ヒダカシュウホウの圧勝はともかく、マルチタイガーの敗戦にガクッとくるワシ。そのあたりをもりも先生に解説願うと、曰く、「このレース、最初2ハロンのタイムが24秒3(橋口アナが実況で触れる)、明らかに速すぎるんですよ。その先行争いにマルチタイガーは加わっちゃって、退くに退けない状況になっちゃったという。案の定先行勢は総崩れで、中団から差しに徹したヒダカシュウホウには絶好の展開になりましたね。」。「じゃあ2着の人気薄ユタカビジンってのは。」「道中好位以下からの全くの展開利でしょ。」。なるほど。「まあ2歳戦でなおかつ全馬初距離のレースなんて、ホンマあてになりませんよ。ただ、ヒダカシュウホウが勝ってくれて、全日本アラブ2歳優駿の、レースの格が保たれて、よかったんじゃないですか。」とはディープさん。「それにしても、北野のガッツポーズがどんどん派手になる。」と、もりも先生が言及する。

最終レースの返し馬の後に、表彰式と口取り撮影が行われる。このレースには優勝レイがあり、ヒダカシュウホウはそれをかけられ撮影に臨む。この優勝レイが、写真の通り、ピンクの布地であり、何だか牝馬重賞のそれみたいで、妙に気になった。

ヒダカシュウホウ、口取り(46KB)
口取り撮影に臨むヒダカシュウホウと関係者さん
ピンクの優勝レイが・・・

最終レースはC1クラスのクリスマス特別。ここは3歳有力馬プレシャスボーイが快勝。このあたりのクラスでもたもたしてもらっては困る馬なので、この勝利はやれやれ。なお、かつての新潟筆頭馬ヤングスプリンターも出走しており、前走プレシャスを下して勝っていることもあって、ソコソコ人気を集めていたが、前半は逃げて結局4着であった。

ということでこの日の競馬は終了。もりも先生のクルマで高知駅まで送っていただく。ディープさんは空路伊丹へ。ワシは高知からの復路の常套手段、18:24発の特急南風で岡山まで。岡山−相生間は21:02発のこだまですっ飛ばし、相生よりは新快速で西明石に帰着。

高知の2歳アラブにとって、明けて3歳になれば、マンペイ記念に始まる、アラブ三冠路線が待ち構えている。着実に伸びるかヒダカシュウホウ、マルチタイガーの巻き返しはあるか、はたまた他の馬が台頭するのか。加えて、地元三冠のみならず、他地区の交流競走もあるわけであり、こちらに対してのお楽しみも。
さて、瀬戸内海を渡って、その実力を知らしめる馬は?

2002.1.8 記

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