第41回楠賞 全日本アラブ優駿観戦報告観戦報告、別館

闘い終わって〜各馬にひとこと


チョウヨームサシ、お見事。前半若干掛かり気味になったのも何のその。「ちょうど前に集団があって、これがうまいこと壁になってくれた。」と、鞍上蔵重騎手が振り返ったが、その中団待機から、後半勝ち負けの位置まで押し上げて差し切れたのは、やはり潜在能力があればこそ。残り800mで仕掛けた時点で、前から8番手くらい。楠賞で、道中これだけ後方から差し届いて勝った馬は、近年いないのではないか。そしてこれが、金沢所属馬初の、加えてホーエイヒロボーイ産駒初の楠賞馬となった。
しかし個人的には、この馬は完全に盲点だった。昨年のダイリンフラワのこともあって、金沢所属馬には信頼を置き難いかなという意識があったのは事実。金沢贔屓の環ちゃんですら、連勝式では取り逃している。「あ、ひょっとしてトモの踏み込み(が浅かったから切ったん)?」と、彼の相馬眼の癖を先読みして振ると、曰く「それもあったけど、気になったのは馬体重。減りすぎてたから。」。実際前走比-7kの475kでの競馬であった。が、そこでピンときたワシ。「そうかあ。これ、絶対勝負賭けて絞ってきたんやわ。ほら、金沢って日頃の仕上げ、どうも緩いやん。」「そういえば冬の名古屋出稼ぎの2走は馬体重480k台で好勝負してるもんなあ。」と。案の定、TV中継の勝利騎手インタビューにおいて、蔵重jkが「馬体は絞れてきて絶好の出来で臨めたので云々」とコメント。まあ、以上、何を言っても後の祭り。

ミスターサックスは2着。道中の折り合いも完璧で、先団のアタマを早々に取って進め、2度目の三角手前から仕掛けて前を潰して、あとは後ろをねじ伏せる、と、何らしくじりもない競馬であった。にも拘わらず、チョウヨームサシに差し切られた。馬体の絞れた勝ち馬に比べて、やはり緩めであったかとも、この結果に立ち会えば思われる。大一番、それも長丁場においては、スタミナ温存で多少余裕残しで仕上げた方が良いという考えもある一方で、研ぎ澄ますが如くギリギリに作るべきだとの考え方もありうる(マックイーンを破ったライスシャワーの春天とかさ)。
まあ、「勝った相手が強かった」と言えばそれまでだが、それだけでは片付けられない、能力とは別の、ここ一番での勝負弱さと言おうか、トホホさ加減とでも言おうか、そういったものをこの馬には感じる。その理由を考えるに、結局「やっぱりナイスフレンド産駒」ということに落ち着いてしまうわけで。「肝心なところで決められるホーエイヒロボーイと、決められないナイスフレンドの差やな。」と、帰路Oku師匠やおさるさんとも語らった。科学的根拠などない話ではあるが、種牡馬論とは元よりこういった実例の集積であるからして、あながち的外れではあるまい。

緩い馬体のミスターサックスに対し、ギリギリ絞った(もしくは期せずしてそうなってしまった)サンキュウホマレは、この馬の守備範囲からは明らかに長かろう2400mを、終いまで渋太く逃げ残って3着。さすが岩田騎手、完璧にリードしたと思う。フクパークでの不甲斐ない負け方と、パドック気配の案外さで、私的には評価の落ちた馬だったが、かなり見直した。スピードの勝った逃げ馬ながら、最後の粘り腰はかなりのもの。

ダイニアキフジ、期待したのだが4着。道中サックスの直後の先団で進めるも、サックスが動いた時に置き去りにされた。以降は後退せぬものの、デレデレとしか伸びなかった。「ジリだよなあ。煮え切らない時のユノワンサイドみたいやんか。」とワシが言うと、「元々ああいう馬じゃん。斬れる脚なんてない。」とおさるさん。「でもキングカップの時は強かったのになあ。」「まああの時は。それでも兄よりは着順一つ上げて4着だから。」などと。

ケシゴホーエイは2周目二角、ブービーから捲っての5着。"プチ"サンバコールといったところ。脚質が極端だが、ここでこれだけ走れたら今後が楽しみ。ただし馬場状態と展開を選びそう。

トモシロトーザイは中団から後半押し上げたが、ジワジワとしか伸びず6着。道中ブッ掛かるのは判りきったこと。ただゲートがダービー以上に悪かった。これでアオり気味の発馬になり、掛かるのを助長した感も。しかしこれが実力なりかも。今後どういった戦績を残せるかが気になるところ。

レビンマサ、折り合いとセンスが進上の馬だと見込んでいたのだが、スタートから終始折り合いを欠いての走り、最後の三分三厘では早々に売り切れてしまった。案外な走りと結果になってしまい残念。目立ったのは前半の掛かりっぷりだけで、後半勝負が動いてからは存在感が希薄になってしまった。

キフネジーマーは先団インを取っての正攻法だったが、2度目の向こう流しで手応えが怪しくなってしまった。ちょっと今回は見込まれ過ぎた感も。

キソノコウリューウ、「やっぱり今回も出が悪かっただろ。」とゴールドレットさん。その悔いはあるものの、気を取り直してサンキュウの番手を果敢に取り、道中は折り合って。最後三角以降は距離適性や地力のこともあり、遅れるのは致し方ない。善戦だと思う。戦前の「例年に比してレベルの低い東海の、そのトップでもない馬」という低評価以上には走ったろう。地元の中距離戦では見どころありそう。

2002.6.19 記

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