第35回銀の鞍賞観戦報告

 2002.12.22、高知、1400m

はじめに、そして出走馬について
高知競馬唯一の2歳重賞、銀の鞍賞。サラの2歳重賞である金の鞍賞と、いかにもセット然として存在している。「何でサラが金でアラブが銀やねん。」などと、我が儘は申しません。アラブ系縮小のこの御時世、高知も例外でなく重賞の数を減らした中、2歳重賞が残ってくれているだけでも有り難いので。
それにしても悲しいのは今年の賞金額。1着のそれ、何と45万円。昨年の100万円もかなり低額だが、これだけ下がると非常にキビシイ。"大御所"Oku師匠曰く、「さすがにこの額、ワタシが目撃した重賞の中でも最低やわ。」と。苦しい運営が続く高知競馬のこと、致し方ないのだろうが・・・

その出走メンバーは内枠より以下の10頭。()内は、騎手。全馬牡馬。負担重量は定量55k。
コスモユーメー(倉兼)、ファルコンパンチ(西川)、オーゴンサチカゼ(中越)、アポロシャイン(山北)、スパンキーレオ(花本)、チーチーボーイ(中西)、スマノリーダー(北野)、ストロングオー(徳留)、チャンピオンエース(赤岡)、ニホンカイペガサス(宮川実)

ワシにとっては全て今回お初の馬。また、高知の事情にはどうも疎いワシであるので、メンバー見渡しても全くピンとこない。後でパドック評と共に付すコメントは、当日予想紙等から仕入れた、付け焼き刃のもの、御了承の程を。

当日の概況
天皇誕生日絡みで3連休となったこの週末、その真ん中日曜施行ながら、ワシはやっぱり日帰りの旅。今回も往路は三ノ宮−高知間の高速バスにて。競馬場には正午前に到着。
この週末は日本列島の南岸に前線が停滞し、西日本各地概ね天気は崩れるとの予報だったが、幸いにも前日土曜に西日本の雨は峠を越えた模様で、当日は高知の天気も回復。到着時は曇天だったが、次第に雲が切れて、一時は大きく晴れ間が覗くくらい。そしてさすが南国、12月下旬ながら温かい日和で、日が差すと日向は暑いほど。
前日の雨で馬場状態は完全なる不良。走路の所々に水が浮き、馬が駆けると「バシャランバシャラン」と、いかにもそれらしい音がする。

パドックから発走まで
パドックタイム。全11レース施行のうちの第10競走である。発走時間が16時とちょっと遅い。再び曇ってきた空模様も相まって、若干光量が落ちたもとでの、パドック周回からレースとなった。
1番コスモユーメー。7月下旬のデビューから4戦4勝で、最も早く台頭した。しかし10月上旬戦を直前取消して以来の実戦となる。その4連勝も全て800m戦であり、いきなりの千四戦、また現地事情通のお方によれば「今回はせいぜい六分の出来」だそうで。登場した姿、ひと目でそれも納得。冬毛ボーボー腹回りタポタポの酷いルックスなのである。馬体重446kだが「全然そんなあるようには見えんぞ。」とOku師匠や3号馬さんらが一様に指摘する。とにかく馬券買う気を失せさせる見た目。
2番ファルコンパンチ。通算5戦1勝3着1回。前走1組戦を6着。入場早々からガチャガチャと煩い。終始首を振り上げて、おまけに白目を剥いて、完全に焦れ込んでいる。周回の後半は列を外れて入り口脇で1頭隔離されていた。黒鹿毛の馬体はパッと見いいし、胸前の筋肉の張りもなかなかではあるのだが。
3番オーゴンサチカゼ。4戦1勝2着2回。近2走を1組で連続2着。周回当初は落ち着いていたものの、どんどん煩くなった。姿勢が高く、チャカチャカした歩みがそれを助長する。少々胴長だがまだ馬体が出来ていないようで、重めの腹回りもあって、ラインがちょっと下がっている。毛艶はまあまあ。
4番アポロシャイン。あのタッチアップ産駒。6戦1勝。近2走1組で連続4着。青毛の真っ黒な馬なので一見毛艶はよさそうだが、その実毛あしはかなり伸びている。430kの目方通りコンパクトな馬格、寸詰まりで猫背気味に見えるほど。ちょっとまだまだ幼い体型。
5番スパンキーレオ。7戦2勝2着1回。近3走を2着1着1着で来ているが、全て2組戦でのもの。首を振り上げて、これも相当煩いし姿勢が高い。毛艶と馬体張りはソコソコのレベル。馬体重407kの数字通り、馬体の線は細いしヒ腹も上がった体型。
6番チーチーボーイ。8戦1勝2着3回3着3回。前開催2歳1組戦の勝者がこれ。栗毛のユーノス産駒だが、重ためな胴回り故か詰まったフォルムで、体型はユーノス産駒らしくない。これは3号馬さんとも同意見。ただ「ホンマユーノス産駒はパドックで気合いを現さへんな。」とOku師匠が言及するように、この点だけは父似か。毛艶は今一つ。
7番スマノリーダー。7戦3勝2着2回3着1回。コスモユーメー不在の間1組で3連勝し躍進、しかし前走は5着に敗れている。毛艶も張りもなかなかのもので、この中では筋肉の付きが目を惹く。だんだん気合いが乗ってきて、細かい動きが目立ってくる。見た目の印象は出走メンバー中一番。他馬に優った戦績も「むべなるかな」というところ。
8番ストロングオー。6戦1勝3着2回。近2走1組で連続3着。ちょっとポテッとした栗毛のルックス。好意的に取れば実入りいい、素っ気なく言えば単に太い馬体。印象は並だが、気合いが入ってぐいぐいと歩く。毛艶はあまり冴えない。
9番チャンピオンエース。7戦1勝2着1回3着1回。3走前の1組戦2着から、以後5着7着と戦績下降気味。コロンとした、これも仔馬っぽさが残るフォルム。かなり高速で小気味よく、首をキビキビ上下に振る仕草が印象的。明るい鹿毛の毛艶はメンバー中かなりいい方。割と好感抱かされた。これは3号馬さんとも見解一致。
10番ニホンカイペガサス。7戦1勝2着1回3着1回。前々走2組戦で初勝利も前走1組戦で8着。焦げ茶に灰色をまぶしたような毛色の芦毛のユーノス産駒。6号馬と同様に胴が重たく、体型はそれらしくない。毛艶は意外にもいい。良く言えばじんわりと、悪く言えばやる気ない気配。
2歳馬だからか、煩い素振りを見せる馬が多い。概してお腹がポコンとしていて、毛艶もソコソコ。

本馬場入場から返し馬。2歳戦ながらも各馬比較的整然と入場してジワッと返し馬に入るのは当地の流儀か、なかなかに好ましい。全馬まる1周コースを流して、キャンターで再度スタンド前を通過して行く。みんなシャープに駆けている。「ストロングオーのキャンターがいいですねえ。」とは3号馬さん。

スマノリーダー(34KB)
スマノリーダー、返し馬
ルックスはメンバー中随一だったと思う

購入した予想紙『中島高級競馬號』では、スマノリーダーとオーゴンサチカゼが本命印を分け合っている。成績からすればスマノの信頼性は高そうだが、前走5着を含めた連対落ち2戦はいずれも不良馬場でのレース。今日の馬場においては不安が残る。オーゴンサチカゼは差しプロパーのようだが、ここで勝ち切れるかどうか。前走勝利に加え元来が堅実そうなチーチーボーイが次いで高評価。コスモユーメーは何とも取捨微妙な扱い。
ワシはパドックでの印象を頼り、ここはスマノリーダーを軸に据える。鞍上に北野騎手を初めて迎え勝負気配も漂う。道悪への適性は無視。ここから3頭へ。オーゴンサチカゼはあまり好感抱かなかったが取り敢えず。そして何となくチーチーボーイ、加えて妙に惹かれたチャンピオンエースを抜擢。マルセンガバナー産駒ということもワシの興味をそそる。
Oku師匠やもりも先生、電設の男@ともろうさんらは、事前には「ここはコスモユーメーがオイシイやろ。」と見込んでいらしたが、あの見た目とあってはサスガに困ったよう。3号馬さんはあれこれと。返し馬の印象も重視して、ちゃんとストロングオー絡みの馬券も買った。のだが・・・

レースなり
さてレース。距離1400m。高知の2歳戦はここまで全て施行距離1300m以下だったので、千四戦は全馬にとって初体験となる。スタート地点は4コーナーのポケット。
ゲートが開く。各馬一線のスタートから、まずは中チーチーボーイが先頭を窺う。程なく内ファルコンパンチも並びかけ、ややあって最内からコスモユーメーが押されて同列に。最初の直線半ばまでに、コスモユーメーがクビくらい先んじハナ。差がなく外にチーチーボーイ、両頭の間僅かにあってファルコンパンチ。この3頭が先行体勢。ここで間隔が開いて以下好位。その前列外にはチャンピオンエース、内にストロングオー。その直後インにスパンキーレオがいて、ほぼ同列の外、ストロングオーの直後にスマノリーダー。次いでニホンカイペガサスが位置し、ややあってケツ二にオーゴンサチカゼ。殿にアポロシャイン。

最初の直線(32KB)
最初の直線、先行3頭
内コスモユーメー外チーチーボーイ間ファルコンパンチ

1コーナーから2コーナー。先頭コスモユーメーが1馬身くらい単騎抜け出し、外にチーチーボーイが続く。このあたり、ファルコンパンチは引き続き3番手ながら前2頭との距離が開く。
向こう流し半ば手前。後方から動いたのがオーゴンサチカゼ。外をグイグイ駆け上がり、好位スマノリーダーの同列あたりまでやって来る。問題はスマノリーダー、北野騎手の手は既に動き気味になるも、行きっぷりがよろしくない。
そして三角手前。依然先頭走行コスモユーメー、踏ん張っている。しかし2番手チーチーボーイも仕掛け気味にその外に続いている。ファルコンパンチが盛り返して、好位差しの体裁で押し上げてきている。
レースがヒートアップしたのは三分三厘。行き脚目立ったのがファルコンパンチ。外目に進路を取って前に迫る。と、ここに三角回ってスパッと取り付いたのがストロングオー。ファルコンのさらに外を、これと併せ馬の形でどんどん進む。直後インでは好位から、スパンキーレオがジワッと差を詰め、さらにオーゴンサチカゼも寄せてくる。四角手前では前列がとても賑やかになった。しかしここに、スマノリーダーは絡めていない。既に圏外。
数頭ほぼ横一線で4コーナーを回る。内で辛うじて先頭はコスモユーメーだが、勢いで優ったのが外ストロングオー、大外オーゴンサチカゼも、遜色ない脚いろでフロントに躍り出る。ファルコンパンチがここで僅かに遅れたような。

最後の直線(40KB)
ゴールまで50mを切って、3頭追い比べ
外オーゴン中ストロング内ファルコン。ホンマ横一線に見える

そして最後の直線勝負。勢いあるのは外2頭、ストロングオーとオーゴンサチカゼ、殊にオーゴンのそれが目立つ。コスモユーメーは直線半ば手前で脱落。そのインからスパンキーレオがスルスルと。そしてファルコンパンチがまたまた盛り返す。ストロングオーの内からこれに迫る。ラスト100は馬場外目、オーゴン、ストロング、ファルコン3頭の追い比べ。大外オーゴン優勢に見えたのだが、その実しっかり抜けていたのは内ストロングオー。最後はクビ差グイと抜けて、真っ先に決勝線を通過していた。

ストロングオー(39KB)
ゴール直前、グッと抜け出すストロングオー
こう見ると確実に前に出ている

勝ち馬を挟んで内外離れて、さらに際どく見えたのが2着争い。しかしこれも外オーゴンサチカゼがクビ差先んじて、ファルコンパンチが負けて3着。ここで3馬身開いて、スパンキーレオがコスモユーメーを交わして4着。5着コスモユーメー。スマノリーダーは6着止まり。チーチーボーイは四角以降伸びず7着。8着ニホンカイペガサス9着アポロシャインはそれぞれ中団と後方を追走ママ。最下位は早々に好位から脱落したチャンピオンエース。

反省、そしておしまい
ストロングオー、地味な評価もお構いなし、快勝だ。戦前ノーマークだったのでリアルタイムでは意識しなかったが、リプレイ見直すと、後半の伸び脚差し脚もさることながら、前半からの位置取りも好位で実に理想的。馬もともかく、鞍上徳留騎手がやっぱり巧い。「徳さんは常に要注意人物」とはもりも先生や電設師が口にする高知の格言。「あーやっぱりストロングオーですかぁ。いい馬だとは思ったんですけどね。」とは3号馬さん。続けて「馬格ありますよね。」と。しかしこれが、いかにもそれらしいキタジマオー産駒という・・・馬格だけでなく、実績面でもちゃんと大物になれるかは、微妙。
オーゴンサチカゼの2着は戦前の評価通りのものか。後方からちゃんと来るのは大したもの。同じ差し・追い込みでも、去年のヒダカシュウホウよりは確実性ありそうに思えるのは気のせいか?
ファルコンパンチは早め3番手から持ちこたえた体裁だが、道中何度も位置を下げている(いや下がってしまっているのか?)ので、先行競馬と差し競馬を両方した感じ。脚が持続せず、かといってタレもせずまた伸びる妙な走りだった。「やっぱり気性難だからでしょう。」とは3号馬さん。
スパンキーレオは何とも慎ましく終始インベタの競馬。ソツなく好位から押し上げて、まずまずの着順となった。クラス慣れしてくると今後楽しみ。
コスモユーメー、この出来あの見た目でこれだけ走れば上々なのではないか。道中軽快に逃げていたし、最後もまずまず粘れていたし。着順に増して、今後への期待を感じさせるレースだった。早熟傾向あるナイスフレンド産駒であるが、それでもソコソコは伸びよう。好みのタイプではないけれど。
それにしてもスマノリーダー、今日は全く見せ場がなかった。この馬、ホンマに不良馬場が駄目みたいだ。今回はその確認が出来ただけ、長所や魅力を見出すことにおいては収穫なし。それにしてもこれだけ雨馬場走らないと、今後の競馬人生、難儀しそう。
馬券は当然外れ。ただストロングオー、後日オッズを確認したところ、馬複ではどの馬との組み合わせも、4番手くらいには売れており、これは意外。

「勝ち時計1分34秒6は、不良馬場にしては遅い。」のではあるけれど・・・
「レベルとしてはどうだかわからないけれど、レース自体は結構面白かったんじゃない?」とは、地元事情通のあるお方のまとめ。年が明けての3歳戦線、このレースのように、白熱した上位拮抗状況で、お互い切磋琢磨していってくれれば、レベルもアップしようしレースの魅力も増すであろうし、何よりだと思う。
例年通りならば、次の大舞台は約5ヶ月先、初夏5月、3歳三冠第一弾マンペイ記念。逞しくなった君等の姿と好レース、見せてくれよ。
「高知の未来は、君たちの脚に懸かっているのだ!」←大袈裟過ぎ

2002.12.28 記

兵庫発アラブ現場主義ホームに戻る