2003年、フクパーク記念観戦報告
2003.4.23、園田、1700m 但し重賞ではなく指定(特別)競走
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はじめに
兵庫県競馬において、唯一レース名に馬名を冠した重賞、フクパーク記念。1999年までは補助馬限定重賞として、そして2000年以降の3年は、菊水賞から3歳三冠競走第一弾の任を引き継ぎ、これまで41回の歴史を刻んできた。
が、今年2003年、指定競走に格下げとなってしまった。昨年姫山菊花賞のサラ重賞化に続き、これで三冠競走は二つまでも失われ、残るは楠賞ただ一つである。
兵庫県競馬の新千年紀はサラ時代、裏を返せばアラブ系縮小・終焉への道程である。以下、かつてのアラブ系3歳重賞、その実態の変遷を表にして示す。思うところは少なくないが、何を書いても陰鬱になることは明白なので、事実をもって語らしむることにする。
〜1999
2000
2001
2002
2003
フクパーク記念
補助馬
非重賞化
菊 水 賞
のじぎく賞
牝馬
楠 賞
改称※1
広 峰 賞
廃 止
六 甲 盃
※2
姫山菊花賞
表中の背景は、
赤
=アラブ系3歳三冠競走、
緑
=アラブ系競走、
灰色
=サラ系競走、白=廃止及び非重賞化。
※1:楠賞は併称が「全日本アラブ優駿」だったところ、'03年は「兵庫アラブ優駿」に改称。
※2:'00年は3歳重賞として施行。'01年の施行はなく'02年以降は古馬重賞化。
というわけで今回のフクパーク記念、非重賞化に併せて、御丁寧にも回次まで外されての施行である。が、個人的には扱いは全く重賞のそれ、「第42回フクパーク記念」として、レースに臨んだ次第。しかしながら1着賞金180万円とは寂しい。
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出走メンバーについて、そして当日の概況
その出走馬は内枠より以下の11頭。()内は騎手、性、斤量。牡54k牝53kの馬齢定量戦。
シルクダイオー(米田、牡、54k)、スマイルマイウエー(有馬、牝、53k)、ブイブイ(高馬)、ワシュウビジン(小牧太、牝、53k)、サンクリント(田中、牡、54k)、ビックワンマックス(平、牡、54k)、プラチナプリンス(木村、牡、54k)、ニホンカイブルー(三野、牡、54k)、ビミョウ(平松、牡、54k)、クールフォーチュン(岩田、牡、54k)、オーシャンユーノス(竹村、牡、54k)
昨年末の時点では、福山の全日本2歳アラブ優駿に遠征して勝利したクールフォーチュンと、地元重賞園田2歳優駿を制したホワイトタイガーが、二強と位置づけられた。が、その後クールフォーチュンは実戦から遠ざかり、今回はその福山遠征以来、ぶっつけ本番となってしまった(「中間蹄が変形してミニ放牧に出されていた。」と、兵庫の広報誌『Charge』vol.11中の記事にあり)。ホワイトタイガーも故障で戦線離脱(これも『Charge』より。恐らく福姫交流にて発症したものだと推察される)。上位の一角ベロシダハーバーも、若駒賞で3着完敗して以後実戦から遠ざかっている(放牧に出されたとのこと)。
この間代わって台頭したのが、あのサンバコール全弟サンクリント。12月3日デビュー戦こそ、距離短い820m戦で2着だったが、以後破竹の7連勝。この間若駒賞にフクパークトライアルのクリスタル賞、と、2つの指定競走も制している。今回クールフォーチュンとは初対決となるが、近況を思えば明らかにフォーチュンに分が悪い。他は全てこれまでに負かした連中ないしは格下とあって、前評判はサンクリント断然。兄譲りの破壊力ある捲り脚、加えていずれのレースでも終い持ったままで楽勝しており、それもむべなるかなというところである。
職場を抜け出して午後から園田へ。天気は曇り。空は暗く、今にも雨が落ちてきそうなところ、何とか踏み止まっている状況。
朝方降雨があったようで馬場状態は稍重。砂がやや湿り気を帯びて、蹄の掛かりは良さそう。砂は深めか。
インターロッキーくんが「お客さんむっちゃ少ないですよね。アラブの主要競走なのに、こんなんでいいの?」としきりに言うが、場内はその通り空きずきしている。「サラが主流でアラブはテキトー」という施策が見事浸透した結果だろうか。が、併せて入場者減を来しているこの現実、素晴らしく駄目駄目な主催者である。
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パドックから発走まで
そしてパドックタイム。
1番シルクダイオー。入場時はかなり煩かったが次第にグッと集中して落ち着いてきた。濃い鹿毛の馬体は皮膚も薄く、銭形が浮き出るほど艶も張りもいい。前々走クリスタル賞は4着だが、今年に入り古馬混合の平場条件戦で4勝を挙げている。通算6勝は出走馬中サンクリントに次ぐ。
2番スマイルマイウエー。脚長で胴長だが首も高い。チャカチャカ煩くちょっと散漫な印象。毛艶は前回目にした若駒賞時よりは、格段に上向いている。4走前が若駒賞で最下位5着も、以後古馬混合条件戦で3連勝中。逃げに近い先行馬。
3番ブイブイ。黒鹿毛の艶は上々で、全身の筋肉がピシッと張って好馬体。時折小走りで気合いを出して周回。前走クリスタル賞8着、まだまだ格下だがルックスは好感。
4番ワシュウビジン。若干トモの送りはギクシャクしているが、踏み込みは大きく力強い。前回目にしたのは福姫交流時、これは休養明け緒戦で明らかに太め残りだったが、以後3戦を消化し、馬体が格段に絞れてきた。毛艶はソコソコなれどこれは個性か。無駄肉の落ちた様子がよく判り、印象はいい。福姫6着クリスタル賞6着、前走古馬条件戦で勝利。
そして5番がサンクリント。前が牝馬のワシュウビジンだからか、入場時に馬っ気を出しかけたが、程なくおさまった。前回目にした若駒賞時と同様ムキムキの馬体、毛艶も申し分ない。フォルムはさらにスカッと締まった感じ。トモ回りもゴツゴツ感が退いてスッキリしたような。やはり煩い周回で、前脚をバスバス振り上げ振り下ろし、蹄音を響かせる。このパドックでの荒々しさ、あのパッピーケイオーに比肩すると思う。年明け以降、クリスタル賞勝利まで使い詰めだったが、一息入って、今回約1月ぶりの実戦である。
6番ビックワンマックス。馬体重503kの大型馬だが、首が長くて高く、胴も太め。毛艶はソコソコ。その長い首を振って、気配は煩め。非常に大股に映る歩様。通算5戦1勝で、その1勝も古馬混合下級条件でのもの、かなり格下で、受賞額(=番組賞金)は出走馬中最低。
7番プラチナプリンス。馬体重439kに増して小柄に見えるが、小顔でスラリと細い首差しはいかにもスマノヒット産駒らしい。毛艶は一見いいが、よく見ると毛あしは長め。5走前は落馬競走中止、4走前の若駒賞は感冒で出走取り消しと、一時アクシデントが続いた。前々走クリスタル賞5着で前走勝利。追い込みタイプ。
8番ニホンカイブルー。相変わらずトモのボリュームに乏しいが、身のこなしはキビキビとしていて、この馬としては活気ある方。歩様も柔らかく歩幅も出ている。園田2歳優駿2着馬で、若駒賞4着、福姫交流5着の後、3走前久々の勝利で通算2勝目。前々走クリスタル賞3着、前走2着。昨秋来常にソコソコ健闘してはいるが、結局ソコソコでしかない。ただし、近走先行脚質に変えてきている感はある。
9番ビミョウ。首差しはゆったりしつつも、腹回りがボッテリしており、加えて真っ白芦毛なので、馬体が余計にコロンと見える。スタスタキビキビと、気っぷよく大外を歩くのはこの馬の常か。今日は頭絡がメンコの下、若駒賞時のブリンカーメンコは止めて、再び素顔でレースを走る模様。道営から昨年末転入、以来6戦して、若駒賞とクリスタル賞を共にサンクリントの2着ながら、2着4回3着1回と、当地での勝ち星はなし。追い込んでも先行しても、どうしても勝てない。ソコソコキャラという点では、ニホンカイブルーといい勝負。
10番がクールフォーチュン。馬体重427kは前走福山遠征時から-7k。4月7日のゲート試験時は417kだったそうで、2歳時から馬体増が全くない。そしてそのルックス、数字上での心配を払拭し得るものでは、ない。とにかく馬体がちっこいのだ。じんわりと周回していて、歩様はキビキビしているのだが、"エエ馬"としての発散する雰囲気が、ない。登場前に相当発汗したようで、胴回りにその跡が目立ち、毛艶はよく判らない。今日も福山時と同様、右目だけ深いブリンカーの付いたメンコを着用。ズバリ、積極的に推せない。
11番オーシャンユーノス。鹿毛馬だがスラリとした胴長脚長体型で、ニホンカイユーノス産駒らしさはある。大人しくのんびりと、と言うよりはやる気なさそうで、これもその産駒にありがちな点。毛艶はソコソコ、刺し毛気味に、体表に長い毛が混じる。通算11戦1勝2着1回3着2回、格下。
騎乗命令が掛かる。ここでニホンカイブルーが退場して裏手で騎手を乗せるのはいつものこと。サンクリントはここからコロッと落ち着く。「(若駒賞と同じで)やっぱり今日もやなぁ。」と、アオちゃんと確認し合う。
そして本馬場入場から返し馬。クールフォーチュンは遅れて入場し、一角方向にそのまま直行し、即4コーナーの待機所に向かう。他の殆どの馬も、直線半ば、ないしは4コーナーあたりから反転して駆け出し、順回りに走って待機所に入り、ホームストレッチを再度流さない。が、唯1頭サンクリントは、時間を掛けてジワリと1周ダクを踏み、再度正面スタンド前にやって来て、ゆったり流して行く。
予想。サンクリントのアタマは鉄板。考えるのは馬単の相手だけ。距離がやや長めなこともあり、ワシはビミョウを一番手に抜擢。勝てぬだろうが2着は充分取れそう。フォーチュンとワシュウビジンは実績で好走されるやも知れぬので少々押さえ、加えてパドック好感だったシルクダイオーも。ニホンカイブルーは意識的に切った。
アオちゃんが「なあなあユーノすけクン、何から買うたん?」と訊くので、「本線はサンクリント→ビミョウ。これで決まりだと思うけど。」云々と応えると、ニヤニヤしつつ「よっしゃよっしゃ。」と返す(これがどういう意味だったかは後述)。
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レースなり
さてレース。距離はこれまでの1870m、ではなく1700m。若駒賞や園田2歳優駿と同距離であり、春を迎えての舞台の進展というものが、ない。「もう重賞じゃあないので一八七じゃあや〜りません!」といったニュアンスがぷんぷん漂って、イヤだ。スタート地点は向こう正面半ば。
ゲートが開く。中枠より外の数頭の出が目立ったが、ワシュウビジンが二の脚鋭くスッとハナに立つ。内からスマイルマイウエーも有馬騎手に押されて前に。ニホンカイブルーも好発からワシュウの外に続く。一方ビックワンマックスがアオってドカ遅れ。サンクリントもそれほど鋭い出っ端ではないが、ゆったり追走して行く。3コーナー過ぎではワシュウビジンはすんなり単騎先頭で、ニホンカイブルーが2番手、スマイルマイウエーは内で控えた。ニホンカイの外にクールフォーチュンが続くが、これは口を割って、明らかに掛かり気味。ここまで4頭が先団で、数馬身切れてシルクダイオーは好位のフロント内。サンクリントは次列外、ビミョウは好発ながらサンクリントを前に見る後方にまで下げた。
「こんなに掛かっちゃっって、スマン岩田」
byクールフォーチュン
正面スタンド前。先頭変わらずワシュウビジン、刻むペースは見た目にスローだが、充分折り合っている。2馬身くらいの差で2番手内スマイルマイウエー外ニホンカイブルー。次いでクールフォーチュンが4番手、まだ引っ掛かっている。直後インにシルクダイオーがやや上がり、その直後にブイブイが。ややあって内ビックワンマックスその外プラチナプリンスで、サンクリントはこの外、でんと追走。さらに後方、内にオーシャンユーノス外ビミョウ、これが最後列。
最初の正面スタンド前
先頭ワシュウビジン、2番手芦毛ニホンカイブルー
一、二角、ニホンカイブルーが積極的に、ワシュウビジンの外、半馬身差まで間合いを詰める。バックに出ると、前2頭と3番手スマイルとの差はやや開き、直後では早くもシルクダイオーとクールフォーチュンが内外併走で上昇せんと。この後方は4馬身くらいあってサンクリントが単騎、クリント以外の中団勢は置かれ気味で、この後ろがドカ開きになっている。この中を、ビミョウが上昇せんとしているが、前との距離が相当ある。
バック半ば過ぎから三角手前、クールフォーチュンがシルクダイオーに置かれたところ、サンクリントが捲り脚開陳で、外から一気に前に迫る。あれよあれよという間にフォーチュン、スマイル、シルクと交わし、三分三厘、前2頭の外まで襲来。折しもニホンカイブルーがワシュウビジンを交わして先頭を奪ったところ、サンクリント、「ターゲット、ロック・オン!」とばかりに、ニホンカイの外へ馬体を併せにかかる。
四角周回、右鞭入れて必死に堪えるニホンカイブルー三野っち。一方サンクリント田中は手綱しごくも一息入れ気味の風情。そして最後の直線、サンクリント、じわりじわりとニホンカイを競り落として勝負あり。残り100を切ってその差は2馬身離れた。最後はマナブ、手綱抑え加減で楽走のVゴールとなった。
サンクリント、ゴール前は流して楽勝
マナブちん、既に手綱ガッチリなんだよな
さて2着争い。ニホンカイブルーが必死に踏ん張るところ、外からビミョウがゴール前強襲。三分三厘7、8番手から追い込んだらしい。直線フォーチュンやシルクダイオーを交わして猛追。が、時既に遅し、結局ニホンカイブルーが残って2着、サンクリントとは1馬身1/4差。ビミョウは1馬身1/4差の3着まで。シルクダイオーが好位差しの体裁で三角以降上昇し1馬身差4着。クールフォーチュンは三角あたりで一旦置かれて、ビミョウと共に最後挽回するも3/4差の5着が精一杯、シルクを抜き返せず。
以下、6着追い込んだプラチナプリンス。7着先行バテスマイルマイウエー。8着後方ママでオーシャンユーノス。ワシュウビジンはインベタ差のない4番手で四角周回するが、直線脱落して9着。10着ビックワンマックス、11着最下位ブイブイ。
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反省、そしておしまい
サンクリント、圧倒的である。他馬とはモノが違い過ぎる。印象的だったのは、レース後ウィナでの、マナブ騎手と吉田アナのやり取り。吉田アナ、自ら明言されてはいないけれども、サンバコールが大好き(間違いない!)。その兄をも引き合いに出しつつ、とても嬉しそうにマナブちんに話を振っていた。「まだまだあの兄には及ばないけれども、どちらも騎手の思う通りに走ってくれる。」「今は発展途上、実力の半分も出していない。」マナブちんのサンクリント評の大意はこんな感じ。
さりながら、栃さんは冷静。曰く、「でも勝ちタイム(1分53秒6)、この馬場にしては大したことないよね。最後もそんなに離してないし。そりゃこの中じゃ強いけど、(楠賞の)2400mでどうかは、まだわからないよな。」。実際、昨年一昨年と、ミスターサックスもクールテツオーも、フクパーク記念では「どないもこないもない」圧勝決めて、不動の本命評価で楠賞に臨むも敗退しているだけに、サンクリント及びその陣営としても油断の出来ぬところではある。が、終い大差でなかったのは、抜け出して残り50で、早々に鞍上が手綱ガチッと抑えて流したからでもあり、タイムと着差以上の強さだったことは間違いなかろう。
それにしても、ニホンカイブルーが2着に残って、ビミョウが届かず3着とは・・・個人的には最悪の結果となってしまった。ここでアオちゃん、ワシに向かってニヤニヤと「思った通りや!ユーノすけクンは(連対馬の)片一方は当たるけど、絶対片方外すもん。ビミョウ買わなくて大正解やわ。」。ワシが予想下手なのは認めるし、馬券は自己責任なので反論しようもないのだけれど、これだけあからさまに、かつオモシロオカシク指摘されると、むっちゃむちゃ気ぃ悪い。
まあ、ニホンカイブルーは積極的な2番手競馬で残ったのだから、これは評価できる。他方ビミョウはなあ、前半の位置取りが後ろ過ぎたか。サンクリントはともかく、それ以外の前の馬を、あそこから全部交わせる自信、あったのか?平松っちゃん。
シルクダイオーはまずまずいい競馬だったと思う。この着順は現状の実力に見合おう。「この兄弟(全兄がシルクスピード)は(馬格が)大きく出た方がホントはいいのだが。」との、北防記者のコメントは味がある。
クールフォーチュンはいいところがなかった。岩田騎手をもってしても、道中相当掛かったし、シルクダイオーに負けたあたり、状態の善し悪しが結果に出た感。今後どこまで持ち直せるか、なのだが・・・2歳時の良積は、地力や走りにおける絶対的アドバンテージによってというより、センスと根性に負う部分が大きかったのでは、とワシは思うのだ。馬体が減っているのも不安材料。さて、どうなんだろう?
ワシュウビジンは好スタートからの折り合い充分な逃げ競馬に、センスを感じるが、今の彼女にとって、距離千七は長いと思う。たとえ地力上位だとしても、楠賞目指すのは酷かと。兵庫に留まり続けるより、早々に福山に移った方がいいのかも。C級上位まで進めば、毎回マイル戦走れるからして。
最後に今後のこと。今年の楠賞は、かなり日程が繰り下がって、6月19日の施行予定。2ヶ月弱、中7週と、ここからかなり日程が開く。出走が叶いそうなみんな、その間、くれぐれも無事に過ごせよ。
そして地元の注目は、当然サンクリント。
「サンクリントが本気になって走るレースを観てみたい。」とは、兵庫アラブウォッチャー共通の声。見せるのか?本気の走り。見せねばならぬ、激闘を切望。というわけで、
「抜かぬ名刀、いざ抜いたら曇ってた。」なんてことのないように・・・
研ぎ澄ませ!その豪脚――
彼の場合は、だんびらよりも、44マグナムの方が似つかわしいかな。
2003.5.13 記
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