全日本タマツバキ記念 第3回アラブ大賞典観戦報告
2003.5.25、福山、1800m
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はじめに
タマツバキ記念が福山固定の全国古馬交流重賞となって、早くも3年目を迎えた。全国のアラブ競馬ファンにとっても、また地元のお客さんにとっても、ビッグレースとしてすっかり定着した感がある。
因みにこのレース、正式名称を「全日本タマツバキ記念 アラブ大賞典」という。さりながら「アラブ大賞典」なる、ありがちで没個性なメインタイトルの方では、誰も呼ばないし、恐らくこれではハナシが通じない。「タマツバキはタマツバキ」なのである。
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出走メンバーについて
さて、今年の出走馬は内枠より以下のフルゲート10頭。()内は騎手、性齢、斤量、所属地区。
レビンマサ(板垣、牡4、55k、上山)、ホマレエリート(野田、牝5、54k、福山)、ネーチャーフレンド(片桐、牡6、54k、福山)、ユキノホマレ(岡崎、牡4、55k、福山)、ダスティー(倉兼、牡7、54k、高知)、マリンレオ(宇都、牡7、54k、名古屋)、ドリーミング(渡辺、牝7、53k、福山)、サンバコール(田中、牡8、54k、兵庫)、ホーエイトップ(安藤光、牝4、54k、笠松)、クールテツオー(小牧太、牡5、55k、兵庫)
斤量は、牡馬4、5歳が55k、同6歳以上が54k、牝馬1k減かと。
金沢のスーパーベルガー(放牧中だそうで)と、佐賀のキングダイオー(九州アラブ王冠賞を勝つも、その前から出走の意志がなかったらしい)の姿がないのは残念だが、全国古馬頂上決戦に相応しい、錚々たるメンバーが揃った。まずは順にざっと。例によって他地区馬を、東から。
上山からはレビンマサ。全日本2歳アラブ優駿、全日本アラブグランプリに続き3度目の福山遠征であり、楠賞を含めて4度目の全国交流競走登場となる。2歳戦以外は全てサラ混合という今季の上山競馬事情の中、開幕以来サラB1級で2戦2勝と、アラブ古馬勢のうちでは最も良積を挙げている。
名古屋からは前年の覇者にして全国最強アラブ、御存知マリンレオが、連覇を狙って堂々登場。一昨年6月のセイユウ記念2着以後、実に1年11ヶ月もの間、負けなしの16連勝中。昨年は金沢のセイユウ記念も勝ち、秋以降はサラ戦を戦って、今年の元旦にはサラ重賞東海ゴールドカップをも制した。16連勝の数字も凄いが、中身はもっと濃い。
笠松からは4歳牝馬ホーエイトップ。昨年のアラブダービー馬で、全日本アラブグランプリで大健闘の3着。古馬となってからも、1月の名古屋競馬場開設記念に続き、前走春の名古屋杯も制している。笠松アラブ筆頭の地位を、着実に固めつつある感。
兵庫からは2頭参戦。いずれも前走がサラ混合重賞の兵庫大賞典である。
まずはその3着サンバコール。8歳にして古馬全国交流戦初登場。豪快な捲り脚は今なお健在で、「老雄」の称号は全く似合わない。福山は西日本アラブダービーにて、強烈なバック捲りを決めた思い出の地、4年半の歳月を経て、その再現、成るか?
もう一方が同4着クールテツオー。遠征競馬は3月の西日本アラブ大賞典に続き3度目となり、地元重賞戦線においては、昨年来常に主力の1頭。主戦岩田騎手がこの日JRA中京に参戦するので、今回は小牧太騎手鞍上。4走前(1着)以来、2度目のコンビとなる。
昨年はチーチーキングを送り込んで、見事3着を獲った高知からは、今年はダスティー。昨年は補欠待遇だったところ、1年越しで念願叶っての登場となる。岩手アラブ最後の世代の生き残りで、金沢を経て当地には一昨年秋から在籍。殿追走からの捲り追い込みの脚は今でもド迫力。泥馬場ならば一層強い。
迎え撃つ地元福山勢は4頭。4月の福山桜花賞、1〜4着馬がそのまま登場する。
その筆頭はユキノホマレ。福山大賞典、西日本アラブ大賞典、福山桜花賞と、今年既に重賞3勝を挙げている。長距離戦での息の長い、また破壊力ある追い込みが身上の、「瀬戸内の鬼脚」。
福山古馬戦線において、現在マイル・千八戦で最も信頼できるのがホマレエリート。この距離では逃げても差しても、とにかくシャープに駆けるし、実際強い。
そして「鉄の女」ドリーミング。いかなる舞台・距離でも、自在に、渋太く、メゲずに走る。「ジリ脚ですって?堅実と仰い!」とは彼女の弁?
ネーチャーフレンドは上山OB、昨秋来躍進。初のバリバリA1待遇となった桜花賞で4着と格好を付けて、ここに登場。
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当日の概況
事前の週間予報では、日曜日は曇天と告げていたところ、直前になって西から前線がやって来て、当日朝の予報はくもり時々雨。「何とかならんのか。」と思いつつ、早朝住処を出る。岡山県内まではくもりで持ち堪えていたものの、県境を越えて福山に入ったあたりで雨が落ち始める。現地到着は11時前。予報通り、小雨がはらはら落ちている。が、それ以上の崩れはなく、正午頃にはホントに雨が止んで、午後になると、どんどん空が明るくなってくれた。やがて雲が切れて、日が差すまでに。天気運だけはあるな。
午前中の降雨も僅かだったようで、馬場状態は終日良。「ずっと好天続きだから、ちょっとばかりの雨ならば、すぐに表面を流れて何ら問題ない。」とは、ある事情通の方の語るところ。この週末を前に砂の補充はないものの、中間に雨が降らなかったので砂の留まりは充分とのこと。見た目にも砂は浅くはない。
インコースは馬場が深いようで、最後の直線インで粘る逃げ馬が、後続にドッと捕まるケースが多い。しかしながら追い込みもほとんど決まらず、道中2、3列目からの先行・好位勢に有利な傾向のよう。馬場四、五分どころがいいライン。
天気が保ってくれたのは喜ばしい限りだが、風が非常に強く、砂埃が猛烈なのには閉口。目の周りはゾロゾロしてくるし、持ち物は細かい粒子でジャリジャリするし、カメラにも非常に悪そう。「こんなんなら、ちょっと雨降って馬場湿りゃよかったのに。」と、贅沢ながら思わずにはおれない。おまけにワシ、この風に2度も予想紙吹っ飛ばされて、それを追っかけて場内を走る羽目になる。そのカッコ悪い様を、悪意溢れる眼差しでニヤニヤ眺めていたのはアオちゃんである。
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装鞍所の眺め〜パドックタイム前
タマツバキは第10競走。そのパドック周回を前に、装鞍所の様子を"リーダー"前田っちや環さんや辻本くんらと眺める。マリンレオはいち早く装鞍所にやって来て、ずっと広場で曳かれていた。歩く姿やフォルム、遠目にも好感。レビンマサは最初広場で回されて、後半も馬房に入らず、鞍付けも外で済ませた。全日本アラブグランプリ時も同様であり、この時は馬がイライラしていたそうで、「今回もそうなのか?」と思われちょっと気懸かり。サンバコールもかなりの時間を曳かれて過ごした。かなり元気で、「パドックよりむしろ装鞍所での活気が印象に残った。」と、後で辻本くんが述懐。同時に「鞍とゼッケン載せる前の裸馬の姿だと、背中が下がったあたり、サスガに歳を感じますね。」とも。ユキノホマレやドリーミングは鞍付け済ませて以後、馬房を出て曳き運動。
第9競走、C2の3組戦、3歳有力どころでキングカップ2着馬スイグンの逃げ楽勝(ホントはゴール前で観戦したかったのだが)をモニターで観て、急いでパドックに戻る。ここでいきなり空が暗くなって、カメラ者を焦らせる。
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パドック、本馬場入場、そして返し馬
そして始まる、タマツバキのパドック周回。
1番レビンマサ。馬体重535kは前走比+12k。これは過去最大の値。やはり胴は太い。それ以上に、身が締まっていない感じがする。実は事前に「レビンマサは先週の後半(福山に)やって来て、それ以後飼い葉食っていない。」と、とある筋から聞かされていたのだが、結果この目方。不可解に思う。歩幅はソコソコ、さほど力強いとは思われない。が、"同志"ディープさんは「太いは太いけど、思ったよりよかったやん。」と。のんびりと歩いていて、途中暫し膠着する。
2番ホマレエリート。元来シャープなフォルムだが、今日はそこに程良く実が入って、ラインがさらにガッチリしている。じんわりマイペースの周回。歩みが遅いのはいつものこと。これも途中1度膠着する。「背中や腰にまだらに模様付いてますけど、何ですかね。治療の跡?」と、辻本くんが装鞍所を眺めた際に指摘したが、結局真相は不明。地元4頭のうち、彼女だけが前開催のA1戦を走って、これは1着。千八戦はやはり強い。
3番ネーチャーフレンド。実入りはローゼンホーマ記念や桜花賞の時と変わらず良好。毛艶まあまあなのもこの馬なりかと。カチッとした直線的なフォルム。キビキビとした身のこなしで、気配は大人しくマイペース。この中では格下ではあるが、見た目だけなら見劣りはしない。
4番ユキノホマレ。馬体重524kは前走比+8kで過去最大。緩め感こそないものの、胴回りの厚さが明らかに増していて、ヒ腹まで太い。元は比較的胴長体型なのだが、背の高さもあってか、今日はむしろ胴詰まりに見える。ちょっと立派過ぎる感。馬体張りと毛艶は上々。キビキビとした歩様で、やる気には溢れていよう。桜花賞後に裂蹄を発症し、出走予定だった前開催のA1戦を回避。おかげで昨年12月のアラブ王冠以来、半年ぶりの千八戦となった。裂蹄は癒え、調子急上昇らしいが、さてどうか。『福山エース』の予想、重いシルシ半分の一方で、トラックマン2人が無印というのも怪しい。
5番ダスティー。胴のラインが下がっていてボッテリ体型なのは個性。栗毛の体表に刺し毛気味に白いものが混じって毛艶ソコソコなのも然り。輸送でテンション上がったからか、身のこなしはかなりシャキッとしていて、この馬としては、意外なほどよく見せるパドック気配だと思う。南国桜花賞捲り切れず4着が前走。
そして6番がマリンレオ。馬体重465kは前走比-1kで、まずまずの適性値。実は輸送がさほど得意ではないそうで、事前には馬体重減が懸念されたようだが、その関門はクリアしたよう。薄い皮膚、締まった馬体。落ち着き払って悠々と歩いている。そしてトモの踏み込みが抜群。実のところ、今季は裂蹄が甚だしく、状態、臨戦過程共に、昨年よりは落ちようとは危惧されていたのだ。実際、前々走予定していたサラA2戦を出走取消している。「そりゃ去年はねえ、コンスタントに使えてたし、オマケに前走の名古屋杯で、楽勝なのに終い追われて気合い入れられたほど、万全の態勢で臨んだからねえ。」と、"東海の好漢"おーたさんも語ったところ。それが蓋を開ければこのルックス。「全くいいじゃん!」と思う。
7番ドリーミング。相変わらず見事な毛艶ではある。が、最近の彼女になく幅が薄くてヒ腹も細くなっている。トモの踏み込みはまずまずあるが、歩様は硬い。前開催、実に1年ぶりに出走機会をスキップした。サスガに歴戦の疲れが出たようだ。ただ、この休みで完全にリフレッシュできたかどうかは疑問。
8番サンバコール。馬体重、前走比-16kの499k。馬体重が500kを割ったのは4歳春、骨折で1年半の休養に入る前以来。最近は510k台が適性体重であるので、相当軽い。その目方通り、前走兵庫大賞典時と比して、トモのボリュームが明らかに落ちているし、ヒ腹は巻きあがっている。「ケツの筋肉、全然落ちてるよねぇ。」と環ちゃんも。ヒ腹の薄さが助長するからか、トモの踏み込みは相当深く見える。身のこなしがガチガチに硬いのはこの馬の個性。活気は充分、煩いわけではない。さて、このルックスこの目方でどうか。
9番ホーエイトップ。明るい鹿毛の馬体は皮膚が薄そうで、毛艶も張りも上々。小顔で首はスラリ。ゆったりした胴回りで、ホーエイヒロボーイ産駒らしく元来は腹袋が太い体型、しかしそのライン、今日はシャープ。終始スッチャスッチャ小走りで、やや気配は煩めか。昨秋の全日本アラブグランプリでも同様だった。
10番クールテツオー。輸送で目方減ろうと予想されたところ、馬体重は前走比+4kの456k。まずまずの適正値、多少緩めに作ってきたにしても、これは成功だろう。目方減った時に比べて、胴回りや特にヒ腹が太いが、ワシはこのフォルムの方が好み。張りと実入り、毛艶は充分。時折チャカチャカして、やはり輸送故か、テンションは上がっている。おまけに三白眼になっている。
クールテツオー、パドック
馬体減りなく実入りは充分
ユキノホマレ、本馬場に登場
岡崎さん流し目?馬体は厚過ぎか?
本馬場入場から返し馬。最後に登場したホーエイトップとクールテツオーは、入場口で即左折で一角方向に直行。そのまま3コーナーの待機所に直行して、ホームを流さない。他の8頭はしずしずとスタンド前を入場行進して、ゆったりと駆け出す。みんなバックまではダクで。そこから真っ先にキャンターに移行したのはマリンレオ。そのまま8頭のうち最初に正面スタンド前にやって来る。宇都騎手の手綱はガッチリながらも、伸び伸びとした駆けり。ネーチャーフレンドはやや強め。ダスティーはゆったりと。ホマレエリートはインコースをスッとシャープに。ユキノホマレはソコソコの強さながらダイナミックな走りで。サンバコールは楽走。レビンマサはダクでホームにやって来て、そこからキャンターに下ろす。この際天を仰いで、口向き悪いことこの上なし。最後は例によってドリーミング、キビキビしつつも、この馬のキャンターとしては軽めで。
マリンレオ、返し馬
ゆったり伸び伸び、いい感じ
レビンマサ、ダクからキャンターに移行
口割って天仰いでバタバタ
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予想
予想。出走馬の地力と脚質から、レース展開を考えて。
マリンレオの気配に問題が見出されぬとあっては、中心はやはりこれ。レースの流れにおいても、その重心はこの馬となろう。すなわち、好位から中盤自力で上昇して前を潰し、そのまま押し切る競馬。実績と能力通り走ってくれれば、前々で競馬する馬たちや、他の好位勢はひとたまりもないのではと思う。福山の深馬場は得意ではなく、ちょっと湿った馬場が望みだったろうが、今更じたばたしてもらっても困る。
そこで相手には、強い差し・追い込み馬を。まずはサンバコール。恐らく向こう正面で一気に捲ってこよう。マリンレオに追い付いて、勢いに任せて交わし切れれば逆転の目も。馬体重大幅減には目をつぶって。
そしてもう1頭、ユキノホマレも。完全なる「長距離上等!」の馬で、距離千八は久々でもあり、実のところ状態も不透明。それでも末脚に期待する。バコールよりさらに遅れて追い上げると思われ、仮にバコールの捲り脚が止まった場合、バコールもレオも丸呑みできまいか?その可能性に一票。
というわけで、ワシの馬券は上記3頭の三角買い。スケベ馬券はユキノ→バコールの馬単。
ホマレエリートが逃げの手に出るならば、これはかなり強いと思う。が、ややこしいことに、クールテツオー騎乗の太さん、逃げ宣言しているそうだ。マリンレオ不発のケースを想定すれば、この2頭も狙いの範疇に入ってこようが、ワシはそれはないと思うので、買わない。ホマレ騎乗の野田クン、太さん発言を承けて、「別にハナには拘らない、2、3番手からでもいい。」とコメントしたそうで、この日和見な態度もマイナス材料。
レビンマサは距離千八は合うし、この距離ならばレースも巧いし実際強い。が、前述の通り、状態が釈然としないので買わず。ホーエイトップはソツない先行馬なのだが、地元では勝っても負けても「何となく」といった走り、あまりアテにしたくない。ただ、昨年の全日本AGP3着時のように、強敵相手の大舞台だと、見込み以上に力発揮する可能性も残すか。ドリーミングは堅実に自分の位置は維持出来ようが、最後の決め手勝負にて、鋭さの欠如が露呈してしまいそう。ダスティーにとっては、他馬との能力比較もともかくとして、このバサバサの良馬場は明らかに不利。他馬に泣きが入りそうな、グダグダの悪馬場なら馬券対象となり得たが。ネーチャーフレンドは格下の感は否めぬ。一昨年のこのレース、同様なポジションだった、ヨシユキトップほどの押し出し感もない。
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激突!古馬の強豪
いよいよレース。さすがに全国交流大一番、ゴール前にはカメラの砲列ズラリ。ワシは場所取りが遅れたので、カメラ構える集団のうちでは最も四角寄り、ゴール前30m前あたりが立ち位置。因みに左隣はリーダーである。空は再び明るくなっており光量は充分、やや逆光気味ですらある。距離1800m、スタート地点は2コーナー。
ゲートが開く。ユキノホマレが出負けて、後方からの競馬となる。同様に最内レビンマサも後手踏んだものの、これは押し上がってリカバー試みる。さて前では、ホマレエリート好発のところ、大外から宣言通り、クールテツオーが何が何でもの構えでハナを奪取。すると野田クンはすんなり2番手に。三角手前では外に切り替える。このあたりまでに、レビンマサが先団まで辿り着く。マリンレオは好発で好位だったところ、知らぬ間に下げて、いや下がって?いく。と、代わって外から前に来たのは何とサンバコール。よもやの好位競馬なれど、走りっぷりは折り合って楽々。
そして正面スタンド前。先頭変わらずクールテツオー。馬場二、三分どころのライン。半馬身下がった外目2番手ホマレエリート。テツオーの直後インにはレビンマサが3番手に付ける、掛かり気味の走り。レビンの同列、ホマレエリートの直後外にサンバコール、全く意外の4番手。次列インベタでドリーミングが、これは四角コーナリングで上昇してのもの。その外併走ネーチャーフレンド、スタートから積極的に好位維持。同列外にホーエイトップ、サンバコールの直後外の位置。マリンレオはホーエイトップのさらに直後。ユキノホマレがケツ二で、殿追走がダスティー。テツオーの作り出すペースは全くスロー。ホマレエリートも喧嘩売らず、野田クンの手綱は張り気味ながらも控えている。
1周目正面スタンド前、先頭から
先頭テツオー折り合って、2番手外ホマレエリート
同じく最初の正面、好位勢
サンバコールよもやの4番手前付け、マリンレオは右端8番手
1、2コーナー中間、ユキノホマレが少々前に詰めると、直前のマリンレオ、動かぬのか動けぬのか、追い付かれてしまう。そして全馬向こう正面へ。好位・中団勢もペースを上げて前へ上がらんと。殿ダスティーも鞍上倉兼騎手のアクションが激しくなって上昇試みる。一方、ユキノホマレはまだ我慢か、反応鈍いのか、動きは目立たない。マリンレオ、宇都騎手は追い立てているようだが、スッとは動けていないようだ。
バック半ば、そして三角手前。先頭は3頭。テツオー、エリート、バコールの順。テツオーが一旦スーッと引き離したところ、「逃すまじ」とばかりエリートが追って、そしてそして、サンバコールがやや仕掛けられ、外から被さってくる。「マナブ、三角手前で仕掛ける時、あまりにもマリンレオがやって来んから『ホンマにもう行ってまうで、エエのか?エエのか?』って感じで、思いっ切り後ろ振り返ってたやろ。」と、リーダーが後述した局面。というわけで、三角回って程なく、サンバコール、マナブに手綱をソコソコしごかれた程度で、外からじわっと先頭に立つ。ここから4コーナーまで、バコール一気に突き放さず、また抜かれたテツオーもエリートもよく食い下がって走って、先団3頭一団の隊形が維持される。
この後ろは暫し4、5馬身くらい離れた。そこをレビンマサがインから仕掛けられて、まずは追走勢のフロントを取る。更にスッと外に持ち出しつつ、前を単騎追っての三分三厘となる。これを追っては内ドリーミング外ホーエイトップ。ホーエイトップは何とかレビンを追おうかと。ドリーミングは伸び脚ない、コーナリングで間合い詰めるのが精一杯。マリンレオが何とかここまで来ていたようだが、この時点でまだ反応が鈍く、印象薄く再後退しそうになっている。
4コーナー、先頭サンバコール、鞍上マナブに気合い入れられ本気モード、そして最後の直線勝負。バコールが押し切らんと。2番手テツオーも内で頑強に粘る。それほど差は開かない。が、残り100を切って、サンバコール、グイッともうひと伸び。これで勝負あり。実際のところ、リアルタイムでの印象は、もっとワンサイドなもの、終いはマナブ、見せ鞭しつつの余裕の走りとなって、日本一のゴールに飛び込んだ。
サンバコール、抜け出して日本一のゴールへ
痩せても躍動するケツは筋肉ムキムキ。写真は手ブレでイマイチ
さて2着争い。ホマレエリートは直線に入ってやがて遅れた。外からレビンマサが脚を伸ばす。これが粘るテツオーを、残り50を切って交わす。そして残り僅かとなって、大外をマリンレオが急襲、四角周回でようやく末脚に火が点いて突っ込んでくる。が、レビンマサと馬体が合ったところがゴール板前。結果レビンマサ、マリンレオをクビ差凌いで2着、サンバコールとは1馬身半差。クールテツオーは半馬身差4着。5着は追い込んだユキノホマレ、1馬身半差。ただし末脚はマリンレオに及ばなかった。これにハナ差交わされ、ホマレエリートが6着。ホーエイトップはレビンマサを追ってそれなりに差し込んではいたものの半馬身差の7着。ドリーミングはインでアタマ差8着。1馬身差で9着ネーチャーフレンド、それほど離されてはいない。最下位ダスティー、4馬身差。
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レース終わって、はぁ・・・反省。そしておしまい
サンバコール、よもやの好位付け。前半3列目、先頭からは3馬身程度の差だったので、これはもう、好位と言うより先行競馬である。三角手前での発進も、常識的に前をすんなり捉えたもので、捲りと呼ぶには全く至らない。お釣りを充分残して、最後の直線、余力ありありで押し切ってしまった。「強いなあ。」と思う反面、「らしくないよなあ。」との想いは禁じ得ない。これ、サンバコールを応援した人もそうでない人も、多くの方が抱いた感想なのでは。確かに「追い込み効かぬ馬場状態と8歳という年齢考えたら、先行ちょい差しが最適だろう。」という、リーダーや辻本くんらの分析は、ワシも諒解は出来る。が、却って「じゃあ、何故に日頃、その勝利掴むに効率的な競馬しないのだ?サンバコールをサンバコールたらしむる、あのバック捲りは何だったのだ?」とばかり、釈然としない想いに捕らわれる。
まあ、それは時に置いておいて。しかしまあ、8歳にしてこの強さ。長期休養があって、今回35戦目と、歳の割には消耗していないにしても、ただただ驚愕するばかりだ。さて、問題は今後。もう一つの古馬全国交流戦の金沢セイユウ記念、今年は真夏も真夏の8月開催。実はサンバコール、夏場に走ったこと、一度もない。果たして8歳馬が、初めて夏競馬、それも厳しかろう頂上決戦に、登場叶うのか?
それにしてもマリンレオが完敗するとは。「サンバコールとマリンレオ、位置取りが全くテレコやんか。」とは、誰しも思うだろう。最初の向こう正面ではまずまず好位だったところ、ホームでは後方8番手。『競馬エース』のHPに後日、戸沢調教師の「結果的には控えて行く作戦が悪かったかな。」なるコメントが載った。ズバリ、作戦負け。「ゴール板前通過して1コーナーに向かうあたり、馬が一瞬グッと行く気になったでしょう。あの局面で(鞍上の作戦はどうであれ)、抑えずに行って欲しいですよね。負けた時に非常に悔いが残る。」と、辻本くんが言及。それにしても2周目のバック以降、勝負所での反応は悪かった。見直したリプレイの1、2コーナーを走る姿、馬場が深いせいか、掻き込みも普段と勝手が違って「えっちらおっちら」した感じでもあった。終い直線だけで追い込んで3着したが、「よく3着まで来たな。」と思う。
2頭の間に割って入っての2着レビンマサ。出遅れもあったりで、正面スタンド前でも掛かっていたが、3コーナー以降は見事な競馬を見せた。インベタ走行から、前3頭が加速して間隔が開いたところで外に持ち出して、最後まで良く伸びた。そして上山勢としては、一昨年昨年のペルターブレーブ1着2着に続き、またもや連対叶った。因みにレース後、「レビンマサは飼い葉食ってなかったんじゃなくって、(意識的に)セーブしてたんだってさ。」と聞かされて、「何じゃそれ、ガックシ。」。この飼い葉と馬体重の件もあり、馬券的には全く無視でこの結果。多少見くびったという感は否めず。が、やっぱり千八戦は強い。
クールテツオーはホントに逃げて、4着。「今日の馬場やと、逃げたら最後どうしても内に入って止まるもんなあ。」とリーダーが。「それはしょうがないでしょう。逃げ馬(騎乗の騎手)が最後内を明けるのは恥ですから。」と応じる辻本くん。しかし個人的には、逃げたことがホンマに良かったのかは、不明。ただ、「こーれだけ前半緩く逃げてくれれば、サンバコールも楽やったろうて。(サンバコールの)いいアシストになったんちゃうか。」とOku師匠らが振り返ったように、期せずしてサンバコールの勝ちに影響したとは、ワシも思う。
ユキノホマレはどうにかこうにか追い込んでの5着。ゲートが悪いのは個性で、前半後方待機なので影響は少なかろうが、やはりリズムを考えるといいことはない。そして道中の走りもやや重そうだった。末脚の始動が遅い(バック半ばではまだ助走)のは、ファンとしては時にじれったいけれども、それはこの馬の間合い。とまれ、やはり距離千八は短い感じだった。このあたり、今後の課題となろう。福山のオープン平場戦で最も数多いのがこの距離であるからして、これで格好付かないようでは困る。
ホマレエリートはすんなり2番手からの競馬、最後差されてここまで落ちた。果敢に逃げたら?そう思うと惜しい。ホーエイトップとドリーミングは、集団の流れには乗れたものの、それを更に上昇する脚はなかったという感じだ。ネーチャーフレンドも中団ママ、ダスティーも後半必死で押し上げようとはしていたが、結果殿ママとなってしまった。
が、このレース、勝ち馬と最下位ダスティーのタイム差は、僅かに2秒。勝ち馬と8着ドリーミングまでならば、コンマ9差である。昨年一昨年同様、各馬の着差詰まった、大接戦となった。
その勝ち時計、1分59秒7。この日の良馬場でこのタイム、結構速いと個人的には思ったところ、「いやあ、このメンツこの馬場としたら遅いやろ。前半のペースもヌルかったしよ。」とはOku師匠。
う〜ん。決して悪いレースではないのだけれども・・・何とも「変なレースだった。」という印象が拭えぬなあ。ずっと食べたかった超高級料理、念願叶って口にしたところ、決して不味くはないのだけれど、「えっ!こんな味なの?」とばかり、どうも釈然としない――喩えるならば、こんな場面でのそんな心情。
さりながら、
「これも競馬」(byOku師匠)
なんだよな。
2003.6.15 記
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