第32回中京スポーツ賞観戦報告

 2003.9.21、金沢、2100m

はじめに
金沢競馬、9月の恒例重賞、中京スポーツ賞である。地方競馬の重賞日程においては、書き入れ時のお盆から日の浅い9月というのは、言うなれば「閑散期」であって、このレースも、いかにも谷間のシーズンの地味重賞といったムードを漂わせるものである。
そういったこともあってか、秋口の重賞ではあるが、11月の石川テレビ杯、年末の北國アラブチャンピオンと続く、本格的な秋の重賞戦線との関連性は薄い。昨年までは、7月に1500m重賞の農協牛乳杯があって(今年はこれが「アラブスプリントカップ」と名を改め、6月上旬に時期が移った。距離も1400mに。)、むしろこの再戦といった趣が強かったようだ。実際、アイカンセンプー、ホーエイショウハイ、マルイシヒーロー、ダイリンフラワ、スーパーベルガーと、近5年は農協牛乳杯の勝ち馬がこのレースも続けて制しているが、このうち以後の秋重賞を勝てたのは、昨年の"絶対女帝"スーパーベルガーだけであり、他の4頭は秋の主役にはなれなかったようだ。
因みに今年は、8月4日に全国交流セイユウ記念アラブグランプリが当地にて施行された。が、地元金沢勢は、最先着が7着コーワゴールドで、下位着順独占。他地区の強豪に全く通じず、いいところがなかった。というわけで、これは今回のレースの参考にはなるまい。地元勢どうしの競走では、展開やペース等、全て変わってこようと思われるので。

出走メンバーについて
さて、今年の出走馬は内枠より以下の11頭。()内は騎手、性齢、斤量。別定重量戦。
ワールドワン(大枝、牡5、53k)、ロックウイット(長嶋、牡5、53k)、ハヤキタスキー(平瀬、牡5、53k)、ホーエチャンピオン(徳留、牡8、54k)、コーワゴールド(鬼束、牡5、54k)、ショウリノサクセス(端、牡5、53k)、サクセスフレンド(中川、牡5、56k)、キミノミネフジ(山中、牡7、54k)、チャンピオンマサル(安部、牡4、53k)、ホーエイトップ(渡辺、牝4、54k)、スマノレイズ(堀場、牝6、51k)

セイユウ記念を直前回避したスーパーベルガーは、その後も出走することなく、ここにも姿を現さない。当日配布された現在の在厩馬ゼッケン番号表にはその名が載っていなかったので、本格的に休養ないし放牧中なのだろうか?
この女帝陛下に代わって、今回注目を一身に集めることになったのが、4歳牝馬ホーエイトップ。先月16日の笠松オールカマーを制した後、電撃的に金沢移籍となった。当地緒戦は前開催の9月8日A1戦。勝ってここに臨む。笠松所属で参戦した8月のセイユウ記念では金沢勢に大きく先着する3着好走であり、戦績(その内容・実はともかくとして)も全国区級。ここも不動の本命評価である。

当日の概況
当日朝特急サンダーバードに乗って金沢へ。競馬場には12時前に着。
先週後半から台風15号が接近して、前日の関西は雨。しかし当日は回復傾向で、住処を出た時点では雨はやんでいた(大阪周辺では日中も雨降りだったそうだが)。往路の道中、途中まではくもりだったが、小松あたりから雨模様になってしまう。到着した金沢も小雨。上空はちょっと暗い雲に覆われているが、競馬場に近い、河北潟の向こうの地平線際には青空が見られる。そこで「早く雨上がれよぉ。」と思うも、なかなかやんでくれず時が経つ。
この台風がもたらした雨が、どうやら残暑にとどめを刺すことになったようだ。前日の関西も寒かったが、この日の金沢も然り。気温も低く、空気はひんやりしている。ポロシャツに薄手の長袖パーカー羽織った程度の出で立ちでは寒い。
馬場状態は朝から終始重。路面に水こそ浮いてはいないが、砂が水分をたっぷり含んでいる感じ。湿った馬場の割には、時計は大して速くないようだ。レース展開の傾向としては、意外にも好位より後ろの馬が後半押し上げて、勝ち負けまで届いている。逃げ切りもあるがこれは人気・能力なり。終い馬が伸びるラインは、走路の比較的内側のよう。

パドックから発走まで
この日は結局、お知り合いの方の誰ともお目に掛かることないままの競馬観戦。そしてパドックタイムとなる。この頃になると、どうにかこうにか雨粒がパラパラになり、レース前にはやんでくれた。
1番ワールドワン。胴が詰まり気味のコンパクトな体型。馬体張りはまずまず。首を上下させてリズムを取って、キビキビとした周回。この6月に福山から転入。福山時代はC2の最上位あたりだったかと。前走前開催のA2戦5着。
2番ロックウイット。ガッチリ体型で、胸前から腹回りはボリュームと張りに富んでいる。毛艶はソコソコ。周回当初は細かい動きがあったが、次第に落ち着いてきた。前走前々開催のA1戦4着。何だかんだで今年はA1主力の1頭となっている。
3番ハヤキタスキー。入場時にかなり暴れた。その後も首を振ってチャカチャカして、歩みもセカセカと速い。前走前々開催のA1戦で1着。これが自身A1初勝ち。
4番ホーエチャンピオン。今や8歳となったが、歳の割には以前と変わらず見映えのする馬体。実入りも張りも充分で毛艶も上々。歩幅が浅いのは従来通り。かなり大人しくはあるが。今年は8月セイユウ記念の開催から始動し、緒戦はA2で2着。以後前々開催前開催とA1戦を走るもいずれも3着。
5番コーワゴールド。伸びやかな馬体で毛艶もまずまず、加えて踏み込みも力強く大きく、見た目はかなりいい感じ。3開催休んだので、セイユウ記念7着以来の実戦となる。
6番ショウリノサクセス。馬体重493kの値通り大柄で、胴の太さと長さが目立つ体型。その締まりはソコソコ。落ち着いてのんびりした周回。前走前開催のA2戦2着。
7番がサクセスフレンド。気合い満ち満ちた感じで、外外をガシガシと歩いている。ちょっとトモの送りはギタバタしてはいるが。胴は太めで厚いが、締まりは充分。馬体重467kも適正値、問題なかろう。涼しい割には発汗が多い。前走前々開催のA1戦2着。
8番キミノミネフジ。概ねのんびりした周回だが、この馬としてはやる気感じさせる方かと。毛艶も上々で結構よく見える。前走前開催のA1戦4着。
9番チャンピオンマサル。馬体重527k、やっぱりデカい。全兄ホーエチャンピオンよりデカい。が、印象は全く垢抜けない。胴も垂れて鈍重な感じ。のんびりと歩いている。前走前走前開催のA1戦5着。
そして10番がホーエイトップ。緩くなりがちな当地の仕上げにあって、一体どんな馬体・目方で出てくるかと注目だったのだが、馬体重は501kで笠松時代と変わらない。フォルムもスッキリしており重さは感じられない。毛艶も上々で皮膚も薄そうで、仕上げは大丈夫そう。時折尻尾を振り回すのはこの馬の癖。時に小走りになるが概ねキビキビとしており、気配も彼女らしいもの。笠松時代と同様黒メンコ着用だが、頭絡はメンコの下。素顔でレースを走る模様。
11番スマノレイズ。437kの馬体重よりは大きく見える。スラリとしていて毛艶は上々。前走前開催のA1戦でホーエイトップの2着好走。
騎乗命令が掛かると、チャンピオンマサルは退場して、パドックの外で騎手を乗せた。ホーエイトップは渡辺騎手が跨ると、バカバカ走り出そうとするほどに、一気に煩くなった。

本馬場入場から返し馬。笠松時代のホーエイトップは、入場口から即一角方向に駆け出して行くのが常だったが、今回は当地の流儀通り、スタンド前の外ラチ沿いを厩務員さんに曳かれて歩いていく。殆どの馬が手綱を放されると順回りに駆けて、4コーナー奥の待機所に直行し、ホームストレッチを再度流さない。キミノミネフジなどは、ゴール100m前あたりまで来るも、そこで反転、待機所に向かった。
その中にあってホームを再度流したのは3頭。サクセスフレンドは例によって、内ラチ沿いをじんわりとダクで。コーワゴールドは馬場真ん中をキビキビと駆けた。最後にホーエチャンピオンが、六分どころをダイナミックに通過して行った。

予想。予想紙上のシルシも、オッズ的にも、ホーエイトップに一本被り。確かにこれに逆らう手はないし、中心はこの馬だと思う。が、それもともかくとして、頼りにしたいのはサクセスフレンド。地元限定戦であれば、この馬は相当強い。事実今季は10戦して、3勝2着4回3着1回4着1回、崩れたのはセイユウ記念8着だけであり、連対率7割は強調できよう。今回も斤量は56kの背負い頭だが、これは毎度のこと。
しかしながら、予想紙上において、相変わらず評価高いのはホーエチャンピオン。サクセスとのハンデ差が2kあるにせよ、この支持は異様。距離二千超の実績もサクセスの方が遙かに優るにも拘わらず、「サクセスは距離不安、ホーエは二一戦のここが目標」といったニュアンスが、紙面に漂う。「アホか・・・」。
というわけで、勝負はホーエイトップ−サクセスフレンドの馬複と、サクセス→ホーエイトップの馬単。ホーエチャンピオンは一銭も買いたくないところだが、鞍上徳留騎手が怖いので少々。加えて三連単で、キミノミネフジを3着候補に抜擢。この馬、長距離得意の追い込み専門なので、ハマれば3着には来られそう。見た目好感であったし、鞍上山中騎手にも期待。コーワゴールドは、何故か蔵重騎手が乗らず、テン乗り鬼束騎手、ちょっどうか?と思い、買わない。

レースなり
されレース。距離2100mのスタート地点は2コーナーのポケット。ここから1周と3/4。
ゲートが開く。大外スマノレイズが出負けるが、他は一団の発馬。サクセスフレンドも大して鋭い発馬ではなかったが、やはり押されてハナに出てくる。内のロックウイットが比較的好発で一瞬は先頭だったが、程なくすんなり控えた。ここへ外からホーエイトップも上昇して、バック半ばでは早々に2番手に据わった。ロックウイットは3番手に。外チャンピオンマサル内ホーエチャンピオンの兄弟が併走気味に続き、次いでコーワゴールドが。
正面スタンド前。先頭サクセスフレンドのリードは6馬身はあろうか。内ラチ沿いをスタスタと。2番手変わらずホーエイトップがガッチリと、折り合いも問題なし。次列インにロックウイットがいて、その横ホーエイトップの真後ろにショウリノサクセス、この外目にチャンピオンマサル。次列は内ワールドワン中ハヤキタスキー、チャンピオンマサルの真後ろにホーエチャンピオン。コーワゴールドはホーエの外目、ちょっと先んじた位置。3番手集団はここまで一団。やや離れてキミノミネフジがゆったりケツ二追走で、殿は出負けたスマノレイズのまま。

1周目(30KB)
1周目、正面スタンド前
先頭サクセス。2番手にホーエイトップがガッチリ。

1コーナーが近づくと、先頭サクセスとホーエイトップの差がスッと、2馬身くらいまで縮まる。が、1、2コーナー中間で再度サクセスが引き離す。ストレッチ毎に後続を離す、サクセスフレンドいつもの競馬。
しかしながら2コーナーを回って向こう正面に出ると、その半ばを迎えずして、ホーエイトップがサクセスにビッタリ直付けとなる。そして三角手前、早々にホーエイトップが先頭に立つ。そのまま三分三厘ブッチ切って、5馬身以上は先んじてしまい、これで勝負あり。最後の直線は全く楽走、しかしながら後続を離す一方の、想像以上のワンサイド勝ちとなってしまった。2着とは2秒の大差がついていた。

ホーエイトップ(33KB)
ホーエイトップ、楽走のゴール前。しかし圧勝!
これが素顔!結構カワイイけれど意外に鼻面長ぁい

さて後方。時間を向こう正面半ばに戻して。3番手は内ロックウイット外ショウリノサクセスだったところ、コーワゴールドが捲り気味に動いて、両者の中を割って交わして上昇。ホーエチャンピオンはコーワの始動からちょっと遅れて、外をじわじわと駆け上がる。そして4コーナー手前、この頃サクセスフレンドは、内ラチ沿いでマイペースに2番手を死守。
四角回って最後の直線へ。必死に逃げ粘るサクセスフレンド目がけて、馬場ど真ん中ホーエチャンピオンがずんと襲来。内のロックウイットや先に上昇したコーワゴールドを既に交わしてサクセスに迫る。「徳さんやっぱり来るのか!」と一瞬思わされた局面。が、残り100を迎えずしてホーエは失速。これを振り切ってサクセスフレンドが粘り切る。そしてゴールというその刹那、大外をドバッと、茶色い巨体が追い込んで横切った。これがキミノミネフジ。かなり際どい。
リプレイが場内モニターに流れる。キミノミネフジ、四角中団から大外回して急上昇。ゴール寸前で馬体が重なっている。「あれ利っさん(山中騎手)替わったんちゃうんか?」と隣のオヤヂか独りごつ。が、結果はクビ差際どくサクセスが残して2着。キミノミネフジ3着。
ホーエチャンピオンは1馬身半差で4着。コーワゴールドは半馬身差5着。スマノレイズは追い込んで6着。ロックウイットは7着。8着ショウリノサクセス、9着ハヤキタスキー、10着チャンピオンマサル、11着ワールドワン。

振り返って
ホーエイトップ。強いなあ。「こんなに強かったっけ?」と思うほど強い競馬。実際、当初は血統故(ミスターホンマルの半妹)に人気先行していた嫌いがあったのは事実。が、東海3歳戦線を勝ち負けし、3歳秋以後積極的に他地区遠征しているうちに、その舞台に見合うだけ成長したと思う。加えてこの馬、やっぱり距離は長めの方が強い。
サクセスフレンドはホンマに全力でよくやっていると思うのだが。昨年のこのレースでスーパーベルガーに可愛がられたのと同じような競馬になってしまった。
勝ち時計2分19秒6、ちょっと掛かっている。が、それにしても2着とのタイム差が2秒とは、開いたなあ。同距離のセイユウ記念における、3着ホーエイと8着サクセスのタイム差が1秒5であり、これよりも開いたのだから、どうしょうもない。昨年のベルガーとサクセスのタイム差ですら、1秒7であるからして、これをも凌いでしまっている。何だかなあ。
キミノミネフジの3着は、馬券的に狙った通りでワシはニンマリ。「2着替わるか」というシーンにはドキッとしたが、この馬自身としても充分好走だろう。3着という着順は、彼の金沢での重賞出走のうちで最高着順であるからして(これまでは5着3回7着8着各1回10着3回、全く平凡な結果)。
ホーエチャンピオンの、最後四角回った時の走りは目を見張ったが、案の定残り100で止まった。これは当地所属となって以降、距離二千超の競馬において毎回見られること。致し方ない。むしろ今回は、見せ場作るまでこれだけ馬を動かした、徳留騎手を褒めるべき。加齢に伴う衰えもあろうし。
バックで一瞬斬れある走り見せたコーワゴールドだったが、終いまで続かなかった。蔵重騎手が乗らぬのもともかくとして、醒めて振り返るならば、黒百合賞制した今季序盤が出来過ぎな戦績であり、「常時ソコソコ掲示板に」という程度が本来の格なのかも。

馬券は的中でゴッチャンです。それにしても、その配当、枠複320円、馬複400円、枠単340円、馬単350円と、一番高額だったのが馬複。無条件に馬単買った人間の多さが窺われる。三連単4,020円も美味しい。
因みにレース後の口取り撮影。セイユウ記念時と同様に、今回もコース上でなく、入場口あたりの関係者エリアにて済ませていた。前週の兼六園ジュニアカップでもそうだったようで、最近ではこれが常態となったのか。これ、非常につまらない。ファンサービスすべきこの御時世、何故に勝ち馬の晴れ姿、客の前に見せぬよう改悪するかなあ・・・

おしまい
以下は後日談。まずはこの翌日、22日のA2戦。ここに、所属厩舎の解散(国光徹調教師師が亡くなられたので)に伴って当地に転じた、"東海先代王者"ブラウンダンディが登場。本来ならばA1バリバリで、重賞に出るべきところ、移籍緒戦での重賞出走は不可のようで、A2に回された模様。この1900m戦を、他馬より4k以上重い58k背負って勝利。
そしてこの次開催、10月5日のA1戦、距離1500mということもあってか、ホーエイトップに黒星。勝ったのはやっぱりサクセスフレンド。サスガに千五戦では強い。2秒差完敗の借り、すかさずキッチリ返すところも心憎い。

そして想いを馳せるべきは、秋のメインシーズン。さし当たっての注目は、11月16日の石川テレビ杯。ホーエイトップ、ブラウンダンディ、そしてサクセスフレンド、距離2000mを、いかに走る?。この三強の争いは興味深いぞ!というわけで・・・
薄くなりつつあるのは、女帝陛下の影。
「"絶対女帝"?所詮"一年女王"じゃない。」
いい加減、こんな揶揄、聞こえてきそうだぞ。まあ、機が熟したところで、「2003年、女帝決定戦」やって欲しいですな。

帰路のハプニング
日曜金沢観戦の常として、帰路は金沢17:15始発の雷鳥42号にて。ところが今回、敦賀を過ぎて湖西線に入った途端、一駅目の永原で停まってしまう。アナウンスに曰く、「台風の影響の強風により、近江今津−比良間で運転見合わせ中です。」と。停車すること30分。何と結局「この列車はこれまでで運転取り止めします。近江塩津まで各停で戻って、後続の特急を臨時停車させるのでこれに乗車して下さい」とのこと。というわけで、日も暮れた、辺りに何もない近江塩津のホームに数十分足止め食って、後続のサンダーバード94号に乗り込むことに。米原周りに経路変更したサンダーバードに乗るのは貴重な経験なれど、定刻から1時間遅れて大阪に、どうにかこうにか辿り着いた次第。

2003.10.13 記

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