第7回荒鷲賞観戦報告

 2003.10.19、高知、1900m

レースのあらまし、そして見どころなど
高知競馬の3歳戦線においては、初夏のマンペイ記念、梅雨から夏頃の南国優駿、そして秋の荒鷲賞が重賞にして三冠競走。今回の荒鷲賞が、その最終戦となるわけだ。
栄えある三冠重賞なのだが、1着賞金、今年のマンペイ記念と南国優駿の45万円から、もっと下がって、31万5000円。とてつもなく低い。
因みにこのレース、他の二冠戦が当地デビュー馬に出走資格が限られるのと異なり、他地区デビュー馬も出走可能。昨年の勝者スカイプリティーも兵庫デビュー馬。ところが今年の高知3歳戦線、他地区からの転入馬に大物はおらず、今回の出走馬も全て高知デビュー。ということで、これはどうでもいいハナシ。

今年の高知3歳世代においては、マンペイ記念馬エスケープハッチと、南国優駿馬コスモユーメーが、実力実績二強であると見なせよう。が・・・
エスケープハッチは、マンペイ記念後態勢整わなかったようで、南国優駿は出走できず、戦列復帰が前開催。今回荒鷲賞には間に合ったが、完調かどうか怪しいところ。最良のパートナー西川騎手が騎乗しない(自厩舎のファルコンパンチ騎乗)のも、その見立てを助長する。
一方のコスモユーメー、今回その姿は、ない。南国優駿の次走8月9日戦を出走取消、その理由は右前腕骨々折。症状は軽度だったのか、9月6日戦に出るも3着。やはり状態はよくないのだろう。
この2頭に代わって、今回不動の本命評価を受けることになったのはチーチーボーイ。マンペイ記念3着、南国優駿2着の戦績は二強に次ぐもの。南国優駿後、5戦全勝でここに臨んでくる。
ということで、このチーチーボーイに、オーゴンサチカゼ、ファルコンパンチといった上位の常連や、前々開催の荒鷲賞トライアルの勝者トサノアバレンボウなどが、いかに対するかといったあたり、このレースの焦点となろう。

当日の概況
秋らしい涼しい気候が続く。当日高知は清々しい晴天。が、そこはサスガに南国、10月半ば過ぎでも日差しは強く、日向は暑いくらい。
馬場状態は朝から終日稍重。しかし見た目に砂は殆ど乾いている。稍重馬場でありながら、散水車が出動するというのはどういうことか?
逃げ・先行馬が最後の直線差し馬に追い付かれるも、ゴール前差し返すというレースが、妙に目立つ。

レース模様
距離は南国優駿と同様1900m。発走地点は2コーナーから向こう正面に出たところ。
若干ばらけ気味の発馬から、押してブルーロマンがハナに立つ。外からプシャスオーが追って2番手。エスケープハッチは3番手、ファルコンパンチがこれに続く。チーチーボーイは積極的な先行策かと思いきや、意外にも5番手。最初の3コーナーまでに、ユタカヤタガラスが外からこれを抜いて行く。ここまでが先団で、以下は中団・後方勢。内ストロングオー外トサノアバレンボウ、次いで内ワイトメビウス中オーゴンサチカゼ外マウントハーバーグの併走、殿はカイヨウアラジン。以上が序盤の並び。
正面スタンド前。先頭変わらずブルーロマンだが、外にプレシャスオーがほぼ同列で。次列内にエスケープハッチ、その外にファルコンパンチ、同列さらに外でユタカヤタガラス。チーチーボーイはハッチとファルコンの後ろ、ちょっとポッケに入ったようなポジション。ここで間隔が開いて、隊列は前後二分戦の様相。

1周目(46KB)
最初の正面スタンド前、先行集団
3番手内の赤シャドーロールがエスケープハッチ

先頭2頭の併走は2コーナーあたりまで続くが、残ったのはプレシャスオーの方。向こう流しに出ると、2列目からファルコンパンチとユタカヤタガラスが仕掛ける。チーチーボーイはこれを見て上昇気配。ここでエスケープハッチが頭を上げ、脚が鈍って一旦ズルッと後退してしまう。バック半ばでは、ホワイトメビウス、ストロングオー、マウントハーバーグが横一線に、さらにこれを追ってオーゴンサチカゼもトサノアバレンボウも、つまりは中団・後方勢がゴソッと、終い勝負で持ち上がってくる。
混戦の3コーナー周回から三分三厘。先頭プレシャスオーの外へユタカヤタガラスが並び掛ける。さらにこの外にチーチーボーイが追い付いてきた。ファルコンパンチは前2頭の後ろでちょっと離され加減。バックで下がったエスケープハッチは、馬場中程のラインで必死のリカバー。が、俄然賑やかになったのは集団外目。チーチーボーイの直後にホワイトメビウスがスルスルと。オーゴンサチカゼもメビウスを追い掛ける体裁で。その一方でトサノアバレンボウ、密やかにインからスルスルと。

最後の直線(45KB)
最後の直線、残り50くらい
2列目内の黄帽の流星顔が遅れたチーチーボーイ

4コーナー、満を持してかようやくのことでか、ここでチーチーボーイが先頭に立つ。が、外の隣にホワイトメビウスが追い付いてピッタリと。加えてインからトサノアバレンボウが急襲。束の間フロント3頭となったが、真っ先に脱落したのは本命のチーチーボーイ方、残り100までに降参。一瞬トサノアバレンボウが斬れ脚見せてちょっと抜け出したが、ホワイトメビウスも負けずに伸びる。ここへ外からオーゴンサチカゼが追い付いて、終いはこの3頭が横一線の勝負。接戦となったが、結果中ホワイトメビウスが競り勝った。

ホワイトメビウス(58KB)
ゴール直前、中から僅かに抜けるホワイトメビウス
内トサノアバレンボウ外オーゴンサチカゼ

  1着 1 ホワイトメビウス  牡3 55.0 宮川実 打越初 453+3 8人 2:13:1
  2着 4○オーゴンサチカゼ  牡3 55.0 中越豊 宗石大 441-2 3人 2:13:1 アタマ
  3着 9 トサノアバレンボウ 牡3 55.0 川江光 田中譲 479+7 5人 2:13:2 クビ
  4着 3×エスケープハッチ  牡3 55.0 上田将 田中譲 481+1 2人 2:13:7 21/2
  5着 5◎チーチーボーイ   牡3 55.0 中西達 別府真 469-4 1人 2:13:8 3/4
  6着 12 ユタカヤタガラス  牡3 55.0 鷹野宏 山岡恒 451 0 10人 2:14:3 21/2
  7着 11 マウントハーバーグ 牡3 55.0 倉兼育 平和人 514+8 11人 2:14:5 1
  8着 8 カイヨウアラジン  牡3 55.0 西内忍 打越初 460+5 5人 2:14:5 アタマ
  9着 10 プレシャスオー   牡3 55.0 花本正 山岡恒 467-1 11人 2:15:6 5
  10着 6△ファルコンパンチ  牡3 55.0 西川敏 大関吉 483+2 4人 2:15:9 11/2
  11着 2 ストロングオー   牡3 55.0 明神繁 別府真 447-3 5人 2:16:4 21/2
  12着 7 ブルーロマン    牡3 55.0 赤岡修 松木啓 466+2 8人 2:18:8 大差
    (予想印はワシの現地最終判断)
出走馬へのメモ
ホワイトメビウス(1着)
ベルベットのような灰色芦毛の毛艶。キュッとコンパクトなルックス。気配は至極大人しい。踏み込みは浅め。重賞初挑戦なのもともかく、これまで3歳1組戦すら勝ったことがない格下馬。「若い頃の父ユーノスに、見た目そっくり」ということで、一部で注目されているに過ぎなかった。当然全くの人気薄。ところがこれが、見事な決め脚競馬。終いの叩き合いを、身体と首をメイチに伸ばして制したのも印象的。
オーゴンサチカゼ(2着)
毛艶は張りはソコソコだが、じんわりした気合い乗りで、若干硬めながら力強い踏み込み。無骨なあまり垢抜けして見えないクチだが、パドックでは好感抱かされた1頭。生粋の追い込み馬で、終いよく迫ったが僅かに及ばす勝ちを逃した。3頭接戦の外で2着惜敗、銀の鞍賞と全く同じ。
トサノアバレンボウ(3着)
パドック周回序盤では、鶴首気味で小走りする姿が見られた。歩様は硬いか。これも後方からの競馬。2周目三、四角、他馬が大きく回る中、内からスルスル上昇。直線抜け出す脚は目立ったが、ゴール前僅かに止まったか。「長丁場向き」との陣営の見立てに応える好走かと。
エスケープハッチ(4着)
実物目にしたのは今回初。首を曲げて小走りしたり終始イライラ気味、悍性強そう。しかしながら胴回りのラインはちょっとぼやけ気味で、毛艶も並。「もっとシャープでギラギラした馬」だと思っていたところ、これは案外な印象。レース前半は無難な先行競馬だったが、中盤下がったのが致命的。最後の直線前3頭に追い付いて、終いは外から脚を伸ばして何とか4着。まだまだ良化の余地あろうし、鞍上の兼ね合いもあろう、今後に期待。
チーチーボーイ(5着)
腹袋が下がったボッテリ体型。落ち着きは充分で、踏み込みはある。が、正直平凡で、本命馬相応の押し出し感はない。レースでは人気を見事に裏切った。先行しなかったのか?出来なかったのか?何故普段通りの競馬をしなかったのかが疑問。中盤までの位置取りも窮屈、逃げ馬が自ら進んで取る位置ではないのでは。それでも一旦は先頭に立ったが、結局差し馬勢に食われた。
ユタカヤタガラス(6着)
大人しい気配で、キビキビした歩みだとは思う。毛艶もまずまず。先団で流れに乗って攻めたが、四角あたりで後退してしまった。ビソウエルシド産駒で、距離延びて良かろうという評価が春の時点ではあったが、その後の戦績は短距離向きと物語る。
マウントハーバーグ(7着)
胴は太めだが背高脚長体型で、目方の割には重量感を感じさせない。内に首をひん曲げつつうつむいて、ちょっとソワソワしているか。
カイヨウアラジン(8着)
入場時に跳ねたり、首を振り上げたりと、煩さが目立った。黒鹿毛の毛色もあって、毛艶はよく見えた。道中ドンケツ追走から三分三厘動いてこの着順だが、7着馬には抜き返された。
プレシャスオー(9着)
毛艶はスッキリしていて馬体も好ルックス。あのプレシャスボーイの半弟で、父がミスターヨシゼンからキタジマオーに変わっている。「ルックスだけは・・・」のキタジマオー産駒であるからして。逃げ持ちこたえて、この馬のキャラは出せたろう。
ファルコンパンチ(10着)
やや毛あしは長いが、黒鹿毛の肌はやっぱり光る。ガシガシと気配が煩いのはこの馬の常。周回後半は例によって、パドック入り口で隔離されたが、今回は割と長時間周回した方だろう。レース前半は無難な先行競馬、いい位置取りだと思った。が、三角前から追走に苦労、そして後退。期待を裏切った1頭。が、南国優駿も大きく離された3着であり、この馬、レースセンスと地力の割には、長距離適性に欠けるのやも。
ストロングオー(11着)
毛艶はソコソコ、トモの出はあまりないが、身のこなしはキビキビと。メンコ着用することが多くなったが今日は素顔。三角手前まで差し競馬の雰囲気だったが、そこまでだったようだ。銀の鞍賞馬も、全く停滞。ルックスもそれなりにしか映らない。
ブルーロマン(12着)
大人しく落ち着いてはいるが、歩幅が狭く、パドック最内を周回。地味。前半レースを引っ張るも、早々に売り切れ。格・地力的にも致し方ないか。
おしまい
結果的には差し馬の競馬。しかしながら前が競って潰れたわけでもなく、先行勢が弱い馬だったわけでもない。非常に不可解なレースだったと思う。本命馬の位置取りも、らしくないものであったし。それより何より不可解なのは勝ち馬だろう。ホンマに・・・
「何故だぁ!?」

2003.12.13 記

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