第9回肥後さざんか賞観戦報告

 2003.11.19、荒尾、2000m

レースのあらまし、そして見どころなど
荒尾競馬、秋の3歳重賞、肥後さざんか賞。
従来は荒尾所属馬のみよるレースだったところ、今年は九州交流重賞であると、年度前半発行の『九州競馬ガイドブック』には掲載された。このあたり、同様に秋の3歳重賞で、九州交流戦だった、佐賀の九州アラブダービーが今年から廃止となり、秋の九州交流3歳重賞が消滅、という現状を承けてのことかと、端からは推察されたのだが・・・直前になっていざ蓋を開けると、結局これまでと変わらず、荒尾ローカル重賞のままで施行となった。

今年の荒尾3歳勢、現在断然の筆頭は、荒尾記念馬のワタリタキオン。福山の全日本アラブグランプリへの出走を早々に表明し、そのメンバーに選出された。全日本アラブグランプリは同月30日の施行、肥後さざんか賞からは中10日、両競走の間隔は短い。というわけで、出走すれば不動の本命であったのだが、当然目標は、全日本一本!ここは不出走となった。
因みに全日本アラブグランプリへ、同じ九州から、佐賀のヤングシャインも出走。ところがこのヤングシャイン、失礼ながら全国交流競走に顔を出すに足るほどの、実績も近況もあるとは思われず。「これ肥後さざんか賞目指してたつもりが九州交流じゃないって判って、『それなら』って感じに路線変更したんじゃないのか?」などと、"九州御大"Tienさんらと邪推。
閑話休題。
ワタリタキオン不在となると、レースは俄然混戦ムード漂うものとなった。
前開催のトライアル戦(以下TRと略。勝者はワタリタキオンである。)上位の、2着ユメゴゼン、3着ハリマブルースは、2歳重賞ヤングチャンピオンの2着馬と勝者で、実績・近況もまずまず。道営デビューのツルギビックワンは、転入後6連勝で荒尾記念に臨むも2着敗退。以後は成績今一つ、TRも5着止まり。メグミヒリュウは門松賞の勝者だが、好走はこのレースくらいで、休養明けの前走TRは9着最下位。他方、前開催TRより下の条件戦を走った馬のうちにも、ロトカイザーやトシスカイといった、近況に上昇ムード漂う連中もいたりして。
というわけで、予想もホンマに難しそう。さて、どうなることやら・・・

当日の概況
南西から前線が接近しているとのことで、天気予報はくもりのち雨。現地には11時半頃到着。この時点ではまだ曇天。しかしながら空気は湿っぽく、天気下り坂を体感するに充分。暑くも寒くもなく、過ごしやすい気温。そして2時半頃には、やっぱり予報通り雨降りとなってしまった。
馬場状態は朝から稍重。砂は程良く湿り気を帯びている。レースの展開としては、差し・追い込み馬の連入が非常に目立つ。メインレースまでの8レースで、逃げ・先行馬どうしでの決着は、結局一つもなかったのではないか。

レース模様
幸いなことに、パドックタイムの途中から雨が小粒になって、レース発走前には殆ど止んで、空も明るくなってくれた。
さて、レースの距離は2000m、発走地点は、向こう正面、スタンドからはゴール板を挟んで真向かいのあたり。
最内シビノランタナ、そして2番枠メグミヒリュウの出がいいが、やはりユメゴゼンが、二の脚効かせて程なくハナに立つ。カガヤキダイオーが接近して2番手に。ここに外からハリマブルースが、三角までに上昇、3、4コーナー中間では直付けになる。メグミヒリュウは次第に位置を下げて、結局ハリマより後ろ、3列目となる。ツルギビックワンがこれに続く。
正面スタンド前。先頭ユメゴゼン、吉留騎手の手綱は緩んで楽に快走。1馬身半ほどあって、次列内カガヤキダイオー外ハリマブルース、前後差殆どなしで併走。数馬身後方、メグミヒリュウが4番手。外にツルギビックワンがいて、内やや下がってシビノランタナが、この直後にニシノフレンド。以下は中団より後方。スーパーフラワーが8番手、この外目にロトカイザー、内やや後方にバニラフォッグ。トシスカイはロトカイザーの更に後ろの外、ややインのスマノミライ共々最後方。先団はユメゴゼン以下、競り合うようにも見えず、じんわりゆったり進行。それでも中団以降の隊列は、やや縦長になっている。

1周目(24KB)
1周目の正面スタンド前、先頭ユメゴゼン
2列目外にハリマブルースが続く

1、2コーナーから向こう正面、引き続きユメゴゼンが先頭。1、2馬身程度の差でカガヤキダイオーが続く。しかしながらバック半ばあたり、カガヤキダイオーは先に遅れてまず脱落、ハリマブルースが単騎2番手に。メグミヒリュウが鞍上エイキチに叱咤されて食い下がり、ちょこっと上昇気配を見せるも、三角手前までに、結局前から遅れ気味になってしまう。これを外からツルギビックワンが、3コーナーで外から抜いて行き、前を追撃。ハリマブルースに迫ろうと。ところが三分三厘、先に脚が上がったのは追うツルギビックワンの方。
さて、先頭のこと。バック半ばあたりから、ユメゴゼン、涼しい顔して加速気味、3コーナー前、呆気なく後続を突き放す。ハリマブルースが唯1頭これに付いていく。ツルギビックワン以下3番手との間隔はドカ開きに。そして4コーナー手前、ハリマブルースも離されて、ユメゴゼンが独走態勢に。最後の直線はこのまま、結局9馬身、1秒7差を付けての圧勝ゴールとなった。2着もそのままハリマブルース。

ユメゴゼン(27KB)
ユメゴゼン、逃げ切り圧勝でゴールへ
吉留騎手の抑えて緩んだ手綱が楽勝を物語る。

3着争い。伸びぬながらツルギビックワンが位置を死守。これを追って中団からロトカイザーがどうにかこうにか押し上がってくる。四角手前、これを抜いて3番手に、そしてハリマブルースを追うが、到底間に合わず3着止まり。4着5着には、ツルギビックワンとメグミヒリュウがそのまま残った。
終わってみれば、逃げ・先行馬どうしで決着。差し馬勢で掲示盤に載ったのはロトカイザーだけ。この日の傾向と全く正反対の結果となった。他のレースは千三〜千五の短距離戦、二千の長丁場とは違うにしても、これだけ展開変わるものか?
  1着 6◎ユメゴゼン     牝3 55.0 吉留孝 松島壽 438 +7 1人 2:15:3
  2着 11×ハリマブルース   牝3 55.0 新町充 古澤清 475 +2 5人 2:17:0 9
  3着 8○ロトカイザー    牡3 56.0 有馬澄 幣旗昭 487 +2 2人 2:17:7 4
  4着 12×ツルギビックワン  牡3 56.0 尾林彦 佐伯茂 492 -5 4人 2:17:9 1
  5着 2▲メグミヒリュウ   牡3 56.0 西村栄 平山良 462 -5 8人 2:19:1 6
  6着 4 スマノミライ    牡3 56.0 高山伸 和田正 447 +2 10人 2:20:1 5
  7着 9△トシスカイ     セ3 56.0 鮫島克 幣旗昭 504 +2 3人 2:20:2 1/2
  8着 1 シビノランタナ   牝3 54.0☆中留伸 橋本幸 491+14 10人 2:20:3 クビ
  9着 5 スーパーフラワー  牝3 55.0 杉村一 工藤榮 481 +2 7人 2:20:5 1
  10着 7 カガヤキダイオー  牡3 56.0 椎葉智 岩本清 477 -2 6人 2:20:8 11/2
  11着 3 バニラフォッグ   牝3 55.0 林陽介 崎谷彦 452 +4 12人 2:21:6 4
  12着 10 ニシノフレンド   牝3 55.0 嶋崎公 吉永晃 424 +4 9人 2:21:8 1
    (予想印はワシの現地最終判断)
出走馬へのメモ
ユメゴゼン(1着)
438kの目方通りコンパクトな馬体。ナイスフレンド産駒の牝馬らしく、押し出し感の大してないルックス。皮膚は薄そうで毛艶はいい。胴の張りもまずまず。左トモを大きく振り上げる歩様。肩の捌きはちょっとギクシャク。すんなり逃げて、後半早々に後続を引き離す大勝。勝ち馬が圧勝となって、着差タイム差がドカ開きになるのは、当地の重賞においてはよく見られることだが、ホンマにこれだけ他馬から抜けて強いのか?と疑わしいくらい、強い勝ち方だった。
ハリマブルース(2着)
ホーエイヒロボーイ産駒だが、首が細長いのはそれらしくない。胴はややどっしり。じんわりした気配だが、動きが概してスローモー。毛艶ソコソコ。先行して2番手死守。3着馬とは4馬身差、これも想像以上に走っている。
ロトカイザー(3着)
脚長背高に見える。バンバンに実の入った胴、黒鹿毛の毛艶・張りはよく見せる。トモの出がやや遅いが、気合い乗りは上々。好感抱かされた1頭。有馬騎手(この日、元中津所属騎手の招待競走、中津ジョッキーズメモリアルがあったので当地参戦)騎乗もあって人気になった。中団待機で中盤動くが、思ったより押し上がれず。案外。
ツルギビックワン(4着)
首を前に出しのんびりと、と言うよりは覇気全くなく周回。胴のラインが下がって緩く、踏み込みも浅い。毛艶も最悪。ひと目で買いたくなくなる。差し脚勝負をするかと思いきや、今日は好位からの競馬。慣れぬことだったからか、三分三厘で脚が止まった。それでもこの着順、前残りの展開が幸いした体裁。
メグミヒリュウ(5着)
首も胴もスラリとしてスマート、ユーノス産駒らしい体型。毛艶も馬体張りも上々で、前走惨敗の割には好ルックス。のんびりと、覇気には欠ける周回。先行競馬も、前記の通り、押し上げたのは三角前の僅かな間だけ。それでも5着に残ったのは、4着馬と同様、展開が故だろう。
スマノミライ(6着)
馬体張りはまずまず。スマノヒット産駒にしてはちょっと無骨。トモは大股で踏み込む。前半最後方から中盤徐々に進出。しかしここまで。
トシスカイ(7着)
馬体重504k、値通り大きく見える。濃い灰色芦毛、そしてユーノス産駒。同様のユノエージェントにルックスはやや似る。馬体張りは上々。キビキビと気っぷいい身のこなし。踏み込みは浅く、また脚を殆ど振り上げない歩様。佐賀の鮫島騎手鞍上で、かなりの人気。後方からの競馬、鮫ちゃん必殺のバック捲りも出ず敗退。展開向かなかったにしても、期待を裏切った。が、格的にはこんなもんかとも。
シビノランタナ(8着)
491kの値通り大型。前走比+14kだけあって、ちょっと胴は重いか。じんわりした周回気配。大股に踏み込んで力感はある。前半好位から進めるも、結局ここまで。
スーパーフラワー(9着)
胴は緩め。首を上下させつつ、時折チャカチャカと煩いところを見せる。毛艶は大したことない。中団ママ。
カガヤキダイオー(10着)
上山デビュー、佐賀所属で荒尾記念を走って8着、8月から当地所属。実入りあって肉感的だが重い印象。張りも毛艶もソコソコ。歩くのが遅い。2番手で進めたが、2周目向こう正面までだった。
バニラフォッグ(11着)
まだ相当黒っぽい芦毛ユーノス産駒。骨格は伸びやかでこの産駒らしいが、腹はやや重め。ずっと尻尾を振り回しての周回。後方ママ。
ニシノフレンド(12着)
馬体張りはソコソコ。トモの踏み込みが全く出ておらず、爪先立ちのような脚の送りで、接地に力強さが皆無の歩様。荒尾記念では低人気ながら、ワタリタキオン、ツルギビックワン、ハリマブルースに次ぐ4着好走したが、ここでは好位から早々に後退。
メグミヒリュウ(30KB)
メグミヒリュウ、返し馬
ダイオーの遺志、メグミの誇りを抱いて、翔べ!
ハリマブルース(30KB)
ハリマブルース、返し馬
やっぱり首がひょろ長いと思う。

おしまい
混戦混戦と思いつつ、馬券も迷って悩んで苦労したところ、結局トライアル上位2頭の1、2着で決着。そしてヤングチャンピオンの1着2着がひっくり返っただけ。ワタリタキオンの存在が圧倒的で、どうしてもこれにばかり関心・注目が行ってしまうけれど、その裏で、当地デビューの生え抜き馬が、しっかり踏ん張って成長していることが、図らずも現れたんじゃないだろうか。
昨年の3歳勢、クニノオーカン、マルシンランサー、イマリオーエンス、ダイナマイトキングらに比べると、今年の面々、(タキオンは例外として)ちょっと小粒な感は否めない。が、「そんなことないぞ!」とばかり、これからの活躍を期待しておきましょう。なかなか上位に出世できない、当地のレース体系なんかに負けるな!


2004.1.10 記

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