第4回ヤングチャンピオン観戦報告

 2003.12.2、荒尾、2000m

レースのあらまし、そして見どころなど
荒尾競馬、晩秋の2歳重賞、その名は福山のそれと同じくヤングチャンピオン。
昨年までは距離1500mだったのだが、今年度の『九州競馬ガイドブック』中の重賞一覧等に掲載された距離は2000m。「2歳重賞でいきなり二千走らせるわけないやろ。絶対誤植やわ。」と思っていたのだが、何とホンマに2000mで施行。「年が明ければ3歳戦でも二千のレースなくはないけどさ、ここでやっても後に全然繋がらないもんな。この前の九州ジュニアグランプリ(サラの2歳重賞)も(今年初めて)二千でやったけど、結局道中超スローで終いだけの競馬だったし。」とは、"九州の首領"Tienさんが戦前語ったところ。

さて今年今回、注目は何と言ってもケイウンリーダー。当地でデビュー以来7戦全勝、荒尾2歳勢の絶対的トップである。この後福山の全日本2歳アラブ優駿への挑戦も視野に入れているようで、重賞ながら、ここは通過点とも言えようか。因みにかつての名古屋の有力馬、ローテーションの全弟(ということはあのセトノランボーの半弟)である。今回9頭立てと、若干頭数が少ないのは、この不動の中心馬の存在と無縁であるまい。
とまあ、ケイウンリーダーの本命は鉄板の筈なのだが・・・実はこのレース、本命の勝てない、荒れる重賞。昨年はユメゴゼンが、3年前はコウザンシンオーが2着に敗れた。そして一昨年こそ、あのマルシンランサーとハイセイアポロが競り合って共に沈み、馬単200,540円の超高額配当が飛び出た、かの有名なレースである。このあたりのジンクス、ちょっと気色悪い。
なお、上山で若草賞と若竹賞の2重賞を制したワタリオーカンは、上山廃止後こちらに移籍してきたが、まだ当地緒戦を迎えてはいない。

当日の概況
現地には11時過ぎに着。天候晴れ。12月上旬にしてはまだまだ暖かく、過ごしやすい好天。ただ北風が強く、午後になると雲が多くなった。
馬場状態は良。砂は完全に乾いている。行った行ったのレースや、ハイペースで前が潰れたレースもあったが、逃げ・先行馬に、最後の直線外を追い上げた馬が絡むレースが多い。

レース模様
距離2000m。発走地点は向こう正面、スタンドからはゴール板を挟んで真向かいのあたり。
最初に出が目立ったのはヨシノトライバルだが、それも一瞬、ケイウンリーダーやマイティイムラやブルバードタイムやコウザンシンシンが前に出てくる。結局先頭を奪ったのはマイティイムラ、差なくブルバードタイムとコウザンシンシンが続く。
一方注目のケイウンリーダー、最初の3コーナーまでにスッと控え、3、4コーナー中間あたりでは、前3頭との間隔が若干開くまでになる。
そして正面スタンド前。先頭変わらずマイティイムラ。1馬身ほど下がって2番手ブルバードタイム。1馬身ちょっと後方にコウザンシンシン、このインにヨシノトライバル。ケイウンリーダーはコウザンシンシンのほぼ真後ろ。このやや後方内にザティアナ、ケイウンの真後ろにカシス。シルバーコスモスはこの後方ケツ二。1頭前から離された殿はイキナオトコ。ペースは超スロー、ホームを通過するに従いより甚だしくなって、ゴール板前あたりでは、各馬の前後差ギュッと縮んで、先頭から中団までは一塊りに。

1周目(38KB)
1周目の正面スタンド前、好位勢
赤シャドのコウザンシンシンを素顔ケイウンリーダーが追う

1、2コーナーから向こう正面へ。隊列は先頭からマイティイムラ、ブルバードタイム、コウザンシンシン、ヨシノトライバル、ザティアナの順で、ここまで一団の先団・好位。ケイウンリーダーはこの集団の外の後詰めでじっくりと。カシスとシルバーコスモスはやや離されて、殿イキナオトコは相変わらずポツン殿。
レースが動くのは向こう正面半ば。ケイウンリーダーが一気に上昇。三角前には難なく先頭に躍り出る。このあたりで後続との差はもう4馬身以上。既に独走楽走で勝負あり。最後は2着に1秒9の大差を付ける圧勝となった。

ケイウンリーダー、ゴール前(33KB)
ケイウンリーダー、楽々とゴールへ
西日で逆光キツい

2着争い。マイティイムラとブルバードタイムは勝ち馬に離されはしたが、引き続き集団のフロントキープ。その一方で、実績と人気・期待の割に、全く伸びを欠くのはコウザンシンシン、知らぬ間に圏外に。後方からはシルバーコスモスが押し上げて。
ということで最後の直線は、逃げたマイティイムラ、ブルバードタイムとシルバーコスモスの争い。一旦はブルバードタイムの方がマイティイムラに先んじたようだが、ブルバードが先に脚いろ鈍らせて再逆転。そこへ外からシルバーコスモスが追い付いて、残り数十で逆転、2着となった。
  1着 4◎ケイウンリーダー  牡2 55.0  尾林彦 佐伯茂 472+3 1人 2:18:5 レコード
  2着 7▲シルバーコスモス  牝2 54.0  吉留孝 中尾信 433-2 2人 2:20:4 大差
  3着 6 マイティイムラ   牝2 54.0  高山伸 橋本幸 425-8 6人 2:20:6 1
  4着 8△ブルバードタイム  牡2 55.0  後藤孝 畑田修 423+1 4人 2:20:8 3/4
  5着 1×ザティアナ     牝2 54.0  吉田隆 和田正 420-6 5人 2:22:0 6
  6着 2 ヨシノトライバル  牡2 55.0  林陽介 佐伯茂 431-3 9人 2:22:3 11/2
  7着 3 カシス       牡2 55.0  杉村一 工藤榮 457-5 7人 2:22:6 11/2
  8着 9○コウザンシンシン  牡2 55.0  西村栄 福島幸 501-8 3人 2:23:5 5
  9着 5 イキナオトコ    牡2 54.0 ☆河野直 宇都徳 470-1 8人 2:25:1 8
    (予想印はワシの現地最終判断)
出走馬へのメモ
ケイウンリーダー(1着)
7戦全勝。かなりドシッとした、若干腹が重いフォルムで、ソコソコの毛艶や、じんわり大人しく、時折物見も入るのんびりした気配も相まって、ともすれば鈍重に映りがちなルックス。正直、戦績ほど圧倒的な雰囲気はない。が、返し馬は伸びやかでゆったりとして好感、そしてレースは完勝。走る姿の方が断然カッコいい。
そのレース、能力の違いに任せて逃げることも可能だったろうが、敢えて控える競馬に。全く問題なく折り合いピッタリだったところが素晴らしい。圧勝は当然・納得だろうが、このスムーズなレース運びは収穫大だろう。
シルバーコスモス(2着)
8戦1勝2着1回。ユーノス産駒の黒い芦毛。スリムで脚長背高なところはその産駒らしい。やや毛あしは長いが雰囲気はまずまず。戦績に目立ったところはないが、差しプロパーである脚質とレースぶりに、二千戦への期待は高かった馬。その見込み通り、後方追走から2着に届いた。
マイティイムラ(3着)
6戦2勝。コロンとして詰まった胴、鹿毛ながらいかにもイムラッド産駒らしい。やや冬毛気味。首を曲げてイライラした周回だったが、後半は幾らか落ち着いた。控える競馬の経験もあるが2勝は全て逃げ切り。今日も逃げて3着残り、徹底先行で吉かと。
ブルバードタイム(4着)
6戦未勝利2着3回。やたら脚だけ長く見える。スッキリスリムな体型で、身のこなしはキビキビとしている。黒鹿毛でパッと見毛艶良さそうだが、ちょっと毛あしは長め。先行してまずまず残れたのでは。
ザティアナ(5着)
福山デビューで、前走3着が当地緒戦。通算8戦1勝。少し煩めだが、馬体の張りや艶は出走馬中随一。420kの小柄な馬だが、ガッチリしたフォルム。局部はちょっと開き気味。差し脚活かす競馬かと思われたが、中盤はスローが堪えたか、かなり前の好位、そのままになってしまった。
ヨシノトライバル(6着)
6戦1勝。首を上下に気っぷよく振りつつ周回。踏み込みも良好、馬体張りもまずまず、この中では好ルックス。通過順を見れば好位ママの結果。トライバルセンプー産駒、それも見た目いかにもそれらしい産駒であり、この馬の個性としては、先行競馬が望みだろうが、現状それに足る地力が付いていない感じ。
カシス(7着)
7戦1勝。青鹿毛で真っ黒な馬、それもあって馬体は光る。張りも良好。首が高く、小走り気味の周回、やや煩め。中団ママ、見せ場に乏しいレースになってしまった。
コウザンシンシン(8着)
6戦2勝2着2回。荒尾2歳勢としては、ケイウンリーダーに次ぐ存在。ホーエイヒロボーイ産駒らしくドッシリした胴回りだが、かなり胴長。のんびりじんわり歩いている。が、毛艶はソコソコで、あまりに無骨、垢抜けした感じではない。レースは先団・好位から。ここまでは良かったが、中盤以降全く伸びを欠いた。全く案外、これは負け過ぎ、何かあったのか?
イキナオトコ(9着)
道営デビュー、彼の地で3戦1勝2着1回、当地は2戦未勝利。栗毛の体表はやや冬毛っぽいが、馬体張りはいい。キビキビと力強い身のこなし、そして歩様。大きく見せるのはいかにもキタジマオー産駒らしいところ。と、ルックスはマルだが、レースは後方ママ。

ケイウンリーダー、口取り(36KB)
ケイウンリーダー、口取りにて
鞍上尾林兄、こっち向いてガッツポーズ

ちょっと注目の最終競走
最終第10レースはA3戦、距離1400m。ここに荒尾の4歳三強、ダイナマイトキング、イマリオーエンス、クニノオーカンが揃って登場。A1戦よりも面白そうな一戦。
結果はクニノオーカン、道中3番手インから、早目に抜け出して快勝。2着はイマリオーエンスが差して食い込んで。ダイナマイトキングは1番人気、ブリブリの馬体で確勝かと思いきや、好位から中盤行き脚悪く、終いどうにかこうにか差して、しかし逃げたシンセイボサツを抜けず、4着まで。
ダイナマイトが連対落ちするとは夢にも思わず、馬券はタテ目まともに食らった。この馬複、1,490円はオイシ過ぎる・・・

おしまい
最後に、再びケイウンリーダーについて。レースにまつわるイヤなジンクスも、終わってみれば関係なし。これだけ抜けて強ければ、レースも紛れようもないということか。いやはや、お見事でありました。これで全日本2歳アラブ優駿、とても楽しみになった。そしてそこで相見えようのは、5戦全勝の、あの道営の大物。
ところが・・・
全日本2歳アラブ優駿、前週になって結局回避との発表。故障発症したとの噂も(真偽のほどは不明)。うーん、非常に残念。
ここにおいて、「いくら丈夫とされるアラブと言えども、無事で過ごすことは容易くないのだなあ・・・」と、痛感させられた次第。

2004.2.22 記  
2004.2.24 追記

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