第31回シルバー争覇観戦報告

 2003.12.10、名古屋、1900m

レースのあらまし、そして見どころなど
名古屋競馬の古馬重賞は、年末から初夏までに集中しており、夏先から晩秋の間には一つも存在しない。今回のシルバー争覇が、ゴールデンウィーク施行の春の名古屋杯以来、久々に迎える古馬重賞となる。なおこのレース、正月に行われる冬の名古屋杯のトライアルと明確に位置づけられており、1、2着馬に優先出走権が与えられる。施行距離も、名古屋杯と同様1900mである。
出走馬は全て名古屋所属。同じ週に笠松では、彼の地正月の古馬重賞アラブギフ大賞典の前哨戦たる、準重賞の銀嶺争覇が施行されるが故かと。

東海古馬最強アラブといえば、日本最強御存知マリンレオなのだが、この1年地元ではサラ編入されており、また現在戦列を遠ざかっているので、登場しない。このマリンレオを除くと、今季の名古屋アラブ古馬界は大混戦模様。それを明確に物語ろうのが、"東海の好漢"おーたさんが調査して、御自分のHPの掲示板上にて示された、以下のデータ。引用させていただきます。
(春の)名古屋杯以降、今回まで行われたアラブA1競走は13競走(但し、そのうち2競走は連続開催により2組扱い)。その間ブラウンダンディの金沢転出や、多少のクラス間の上下移動や出欠はあるものの、概ね出走メンバーは毎回似たようなもの。この13回の競走のうち、今回の出走馬で勝利をあげたのは、セトノランボー、グロリアスメロディの2勝、アインナッチー、ゴールドランプ、アイシスエールが1勝、と勝ち馬が毎回変わる混戦模様を呈している。今回のシルバー争覇も同様?
この状況、ブラウンダンディの加齢による衰え及び金沢転出、キソノコウリューウの休養、セトノランボーの不甲斐なさ、等々、原因は多々あろう。が、それにしても気になるのは、メンバーが何となく小粒になってきている点。グロリアスメロディやアインナッチーがA1を勝つというのは、馬の成長・充実が故だけではあるまい。

というわけで、今回登場するのは、その大混戦模様を現出する面々。セトノランボー、グロリアスメロディ、アイシスエール、ゴールドランプ、ボールドヒリュウ、グレンゼスター、エトセトラエトセトラ・・・
この中にあって注目は、唯1頭3歳での参戦、10月の帝冠賞を制したキジョージャンボ。現在5連勝中だが、前開催はA4組待遇だったので、ドンと格上挑戦である。古馬勢の面々が面々だけに、あっさり通用しそうな感も大。されど近年のこのレースにおいて、帝冠賞勝ってここに挑んだ上がり馬の3歳馬、キソノコウリューウやボールドヒリュウやラディガブライト、全て古馬の壁に跳ね返されている(これもおーたさんの言及するところ)。さて今年はいかなることに・・・

当日の概況
青春18きっぷを使って名古屋へ。名古屋駅からは、名鉄バスセンター13時20分発、三重交通の路線バスにて競馬場まで。現地には2時前に着。
ここ数日、ようやく冬らしく寒くなってきたが、この日は快晴で素晴らしい陽気。おかげで、風は強く空気はひんやりするものの、南向きのスタンドにいる限りは、暖かく過ごしやすい。土古のスタンドはだいたいいつも気温が高い。馬場状態は良。

レース模様
距離1900mは本番たる名古屋杯と同じ。スタート地点は2コーナー。
横一線の発馬で、全馬内外大きく広がってのバックストレッチ。内からセトノランボーが好発から、鞍上稔騎手に押されてハナに出てくる。その外に並んでグロリアスメロディも前へ。キジョージャンボも走る気満々の体で前へ。しかし鞍上丸野騎手、無理にはハナに立たず、3コーナーでは外目3番手に陣取った。次いで内アインナッチー中スマノリーフ、この外目にボールドヒリュウが行きたがりつつ。スマノとボールドの狭い間で、アイシスエールが前を壁にして続く。ゴールドランプは後方からの競馬、3、4コーナー中間では内外挟まれ窮屈になって首を上げている。大外トキノメイユウはダッシュこそ目立ったものの、大外からフロント奪うだけの二の脚なく、先行馬でありながら結局最後方。
正面スタンド前。先頭変わらずセトノランボー、フォームはまずまず伸びやか。2馬身ほどあって2番手グロリアスメロディだが、キジョージャンボが外に差なく、次第に馬体が併さって、ゴール板前では前後差半馬身に。スマノリーフは内で4番手。この外にボールドヒリュウ。インでアインナッチー、スマノリーフの真後ろにアイシスエール、このあたりが好位。次いで内トガミアスリート、外にセイフクガバナー、この両者の間にグレンゼスターが割り込み気味に入って。ゴールドランプはインコースでケツ二。殿にトキノメイユウ。

1周目(32KB)
1周目の正面スタンド前、逃げるセトノランボー
2列目外の緑帽がキジョージャンボ

1、2コーナーから向こう正面。アイシスエールが外に持ち出し、前列のボールドヒリュウらに並び掛ける。グレンゼスターは好位馬群の真ん中を割って上昇気味。その一方でセイフクガバナーは外で早々に後退加減。
三角周回。セトノランボーがインで先頭死守。グロリアスメロディが外に出しセトノに並び掛ける。そしてキジョージャンボ、余裕の手応えでこの外へ。グロリアスとキジョーの間に食い付いていくのはボールドヒリュウ。次いで追撃するのはアイシスエール、グレンゼスターはこのインまで上昇してきている。程なく、アイシスエールの行き脚が一瞬鈍って、そこを衝いてグレンゼスターが前に出る。続くのはスマノリーフだが、前からやや離された。ゴールトランプが外に出してスマノの直後に。
そして4コーナー、キジョージャンボが持ったままで先頭に躍り出る。直線を迎えた時点で1馬身先んじ、これで勝負あり。直線半ば、丸野騎手から叱咤を受けると、スッと後続を2馬身強引き離す。最後は2着争い2頭の追撃を受けて、着差1馬身とはなったが、印象としては完勝のVゴール。

キジョージャンボ(34KB)
キジョージャンボ、西日馬体に受けゴールへ
馬体伸び切った瞬間にしても、大きく伸びやかな馬体だと思う

さて2着争い。四角周回では、最内逃げ粘るセトノランボー、その外グロリアスメロディ、抜け出したキジョージャンボのラインの外で、馬場真ん中押し上げたグレンゼスター、その外ボールドヒリュウ、そして大外アイシスエール、と、5頭が横一線で圏内。セトノランボーはよく食い下がったが、残り100でガクッと失速して脱落。ボールドヒリュウは、残り150までは最も脚いろ目立ったものの、これも直線半ばで止まった。代わってグレンゼスターがずんと前に。が、ワンテンポ遅れて末脚繰り出したアイシスエールが、残り50でひと斬れ。ここからクビ差前に出る。そしてゴール前、ちょっと止まったグレンゼスターに1馬身先んじて2着入線。
  1着 8○キジョージャンボ  牡3 52.0 丸野勝 井上正 522 0 2人 2:04:0
  2着 7▲アイシスエール   牡4 53.0 向山牧 竹地正 424 0 4人 2:04:2 1
  3着 10 グレンゼスター   牡5 53.0 河端秀 宮本仁 486+6 7人 2:04:4 1
  4着 9×ボールドヒリュウ  牡5 52.0 吉本隆 錦見勇 468+8 5人 2:04:5 3/4
  5着 6△ゴールドランプ   牡6 54.0 兒島真 恣c隆 506+6 6人 2:04:7 1
  6着 5×グロリアスメロディ 牝7 52.0 竹下太 伊藤光 436+2 3人 2:05:0 11/2
  7着 2◎セトノランボー   牡6 55.0 吉田稔 伊藤定 524+2 1人 2:05:7 3
  8着 3 トガミアスリート  牡5 52.0 横井将 藤ケ人 492 0 12人 2:05:9 1
  9着 11 セイフクガバナー  牡6 52.0 安部幸 新山廣 510+5 8人 2:06:8 4
  10着 4 スマノリーフ    牝5 52.0 宮下瞳 岩田克 436+5 11人 2:06:8 アタマ
  11着 12 トキノメイユウ   牡8 55.0 福重正 安部弘 458 0 9人 2:06:9 1/2
  12着 1 アインナッチー   牝6 52.0 平田貴 伊藤己 462 0 10人 2:07:4 21/2
    (予想印はワシの現地最終判断)
出走馬へのメモ
キジョージャンボ(1着)
最後に入場するのはこの馬の常。相変わらず大きいが、この馬にしてはフォルムはシャープ、悪く言えばこじんまりした方かという感想。キビキビした身のこなしのところ、気合いが乗って、首を上下に細かく動かしている。
見ようによっては折り合い付いていなさそうな、必ずしもスムーズではない競馬ではあるが、何だかんだで3番手先行抜け出し押し切り、強い競馬での完勝。3歳馬苦戦のジンクスも、古馬の壁も、格上挑戦も、全てあっさりクリア。「古馬勢がだらしないから・・・」とは、まあ敢えて言うまい。個人的に印を◎から○に一格下げたのは、この馬いつも見た目ブリブリ絶好で、ルックスを強調材料には、却ってし辛いから。
アイシスエール(2着)
毛艶と馬体張りはこの中にあってはいい方。424kの軽量馬だが、目方ほどは小さく見えない。キビキビとした周回で、歩幅はある方。好位追走から末脚発揮、最後の最後で伸びて2着獲り。2周目1、2角での押し上げは目立った一方、三角で向山騎手が押っつけ押っつけになったという、道中若干ギクシャクしたところは、ちょっと気になった点。因みにこの馬、「名古屋所属でありながら、道中スローな競馬に付き合わされる地元土古戦よりも、淀みなく流れて末脚発揮できる笠松戦の方が合いそう。」だそうで。これは『競馬エース』の評価。
グレンゼスター(3着)
体高あって首の付く角度も高め。やや背垂れ気味。黒鹿毛の毛色も相まって、毛艶と馬体張りの見た目は出走馬中随一。大きく見せる。追い込みに近い差し馬で、「コーナーでもたついて動けないタイプ」(『競馬エース』より)だそうだが、今日は中盤から早目の上昇、三分三厘から直線よく伸びた。最後の最後で微妙に止まったのは、仕掛けが早かったが故か。
ボールドヒリュウ(4着)
均整の取れた体型。実入りも馬体張りも上々。外外をキビキビと周回。と、ホンマにいつ見ても好印象のパドック。が、レースでは何とも難しい馬。道中掛かり気味ながらも何とか好位で。脚は溜められたのか、3コーナーから先団圏内、最後の直線もひと脚繰り出した。が、止まった。ホンマに脚の使いどころが難しい。それでも今日は、この馬にしては、まずまず見どころある競馬だったのでは。
ゴールドランプ(5着)
毛艶はまずまず。前肢は出ず、トモの歩幅は小さく、やっぱり身のこなしはカッチカチ。歩みが遅く、次第に前との間隔が開く。レースでアテにならないのは相変わらず。先行上等だが、今日は序盤後方から。後半上昇したがここまで。それにしても思うのは、この馬、コーナーでの走り、恐ろしく下手。大跳びだからか、外外回れなかった時にゃあ、首上げて引っ掛かって、もうバタバタ。
グロリアスメロディ(6着)
昨シーズンの冬場もそうだったが、やっぱり冬毛が既にドッサリ出ている。腹回りもポコンとしていて、格好はよくない。踏み込みはしっかりしている。追い込み馬だと思っていたところ、近走の好走は前々での競馬が多い。今日も然り。終いまでよく粘ったが、ちょっと保たなかった感じ。平場は勝ち負け叶っても、重賞ではやっぱり好成績出せない。平オープン馬の宿命か?
セトノランボー(7着)
腹回りにもボテッとした感じはなく、今日はスカッとシャープな格好いいフォルム。毛艶も馬体張りも上々。踏み込みも力強く、加えて尾離れもいい。近況からすれば、信頼するのは危険なのだが、このルックスを前に、現場的◎評価。しかし・・・レースでは逃げてやはり保たず。残り100でやっぱり沈んだ。信じたワシがやっぱり愚か。この馬、逃げるレース多いいクセに、逃げる競馬、下手だよなあ。超スローで溜め逃げするのに、結局後ろの馬に抜かれてばかりなんだから。
トガミアスリート(8着)
胴回りに冬毛が出ている。そしてその胴はちょっと重い。差し専門だが、ここではちょっと力足らずだった感じ。
セイフクガバナー(9着)
上山オープン馬が、彼の地のシーズン終了(実は廃止なのだけれど)に伴いこちらに転入。今日がその緒戦。ドンと太く詰まった巨体は上山時代と同様。気合いは入っている。毛あしは伸びた感じ。先行タイプの筈なのだが、今日は前半好位、そして中盤早々に位置を下げてしまった。緒戦が重賞、しかも千九戦とあっては、短距離向きと思われるこの馬にとっては、いかにも荷が重い。
スマノリーフ(10着)
首差ししなやかで、コンパクトな馬体。ヒ腹は若干上がり気味。そしてやや冬毛が出ている。首を上下させつつ、ゆったり大人しく周回。果敢に先行先行しようとする意志は充分感じられるのだが、力的にここでは苦しいか。
トキノメイユウ(11着)
ペンキでベタ塗りしたが如く、とにかく真っ白。馬体はパンパン。大股だが、左トモの出はよくない。大外から好発するも、内に切れ込む時点で既に、他の先行勢に遅れをとってしまった。先行馬でありながら、それに足るだけの脚力がないということが明白、この現実は哀れだ。
アインナッチー(12着)
冬毛がゴワゴワと、剛毛の如く体表を覆っている。歩幅は出ているが歩様は硬い。前半は好位競馬も、後半は勝負に絡めなかった。

アイシスエール(45KB)
アイシスエール、パドック
ショッキングピンクのシャドーロールに同色の豹柄メンコが目に痛いぞ

おしまい
というわけで、ここはあっさりとキジョージャンボが、下克上を叶えてしまった次第。何だかんだでこれで6連勝、勢いと地力強化は、どうやらホンモノのよう。
そして次回は、決戦の名古屋杯。名古屋勢から、新たなる強敵が現れるわけでもなく、同じ正月開催にアラブギフ大賞典が控えている笠松勢が、出張してくることもまずはあり得ず、このままで行けば、キジョージャンボくんの勝利、濃厚なり。
しかしなあ、これでエエのか?古馬の諸君。特にアンタ!一応、腐っても、"冬のディフェンディングチャンピオン"やろ。セトノランボー・・・

2004.3.1 記

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