第36回兵庫大賞典観戦報告

 2000.5.5、園田、1870m

兵庫アラブ古馬、春の頂上決戦、兵庫大賞典。今年は距離1870に短縮ながらもいよいよその日がやって来た。昨年の六強の、まさに死闘にして名勝負から約1年。今年も最強アラブ達の激突に期待しつつ、園田競馬場へ。(予告編のページ「観るべし!!兵庫大賞典2000」はこちら
出走メンバー、事前の登録馬18頭から回避が出て結局9頭。内枠より、カズミサチフジ、ケイエスヨシゼン、アドミラル、イムラッドシンゲキ、アローパッション、ワシュウジョージ、トライバルサンダー、マイクリス、シャインマンリー。ヤングメドウの回避は意外で残念だが、頂上決戦に不足ない面々。
「キンキ」の吉田アナのコラム中、「兵庫大賞典、来年からはサラ系に移行予定」の旨の文面が見える。今開催に関する報道において、来年より大賞典サラ化のニュースは、周知の事実の如く、なし崩し的に流通している。まあ、何はともあれ、今年が最後の"正調"兵庫大賞典。(もっとも、今年は距離一八七であるわけで、長距離でこそ"正調"と見なすのであれば、去年で"正調"大賞典は終わっているわけだが。苦笑)

園田には12時半頃到着。天候晴れ。絶好の決戦日和だが、暑い!祝日なので、それなりの混雑は当然。"浦さん"オッズモニターのところで浦さん、ケーズにいさん(バイクで来場!)、そして本日こどもの日が誕生日の"リーダー"前田さん発見。アラブファンさんの姿も。スタンドではちーちゃんまりおちゃん。UV対策も万全?環さんもお連れさんと(ムフフ)。大西さんとひろちゃんもやや遅れて合流。さらにゴール板前を移動するディープさんを発見。彼は関西在住ながらも平日開催の兵庫へは足を運べないので、現場度MAXながらも園田は摂津盃以来とのこと。そしてメインレース前に山ちゃん登場。
好天維持のままメインレースを迎えようとしている。ワシら、9レース発走前からパドック待ちに入る。この間、メインの大賞典騎乗の騎手の面々が三々五々待機所にやってくる。女性陣から園田には不似合いな黄色い声援が飛ぶ。なお当日、ケーズにいさん、ちーちゃん、まりおちゃん各々の、赤木、岩田、太の横断幕、勢揃い。

電光掲示板の表示が10Rの出走馬に変わる。つまり馬体重発表。ヨシゼン497kで-10はよしよし。ワシュウジョージは450kで+1だがセイユウ賞以前に戻し切っていないのが中間の調整狂いを物語る。やがてパドックに出走各馬登場。
カズミサチフジはコンパクトにまとまった馬体でスタスタ周回。人気の気負いは感じられない。鍵は道中脚をいかに温存して直線爆発させるか。逃げるサンダーとの距離(カズミ自身は恐らく殿)を勝負所でいかに楽して詰めるかがポイント。
アドミラルの黒鹿毛も光る。イムラッドシンゲキ、まだら芦毛で鼻が短い、おまけに目を剥いて、なかなかのぶ男。たてがみもボサボサ灰色で、山ん婆もしくはナマハゲみたい。先行バテには前走で懲りて再度捲り差しに行くか。代打松本心平何を考える?アローパッションも悪くはない。平松今日はアドミラルではなくこちら。アドミラルは初騎乗政サマ(松浦政宏ね)。アローもアドミラルも脚をどう使う?
マイクリス、腹周りは多少ゆるいが馬体の張り、闘志、仕上げはかなりいい。人気を背負うカズミサチフジとは同厩(森澤っす!)同一馬主。こちら(マイクリス)は人気薄で気楽に乗れるとあって、思い切った策に出ようかともキンキ紙上でも伝える。隣の内はライバルのサンダー、どうする木村?ただしマイクリス自体テンが速い馬ではない(速ければ足掛け2年以上も差し追い込み届かずで敗戦繰り返しませんぜ)のでどう動くか?注目。
シャインマンリー、毛艶も気配もかなりいい。前走の先行粘りを見るに休養前より確実に地力アップしている。直線の末も以前より数段鋭くなっている点が差され負けない最大の要因か。サンダーにどこまで食い下がり、ワシュウやカズミをいかにしのぐか。
本命トライバルサンダー、遅れて登場、周回に加わる。気になるメンコ、今日は前走園田開催から使用の白メンコ着用。よく見ると額に稲妻マーク、サンダーです!507kの雄大な馬体。吉田アナすら「これで牝馬です」と事ある毎に口にする堂々たる馬格。腹から腰回りに、播磨賞時と同様冬毛のようなものが見えるが、どうも金髪の刺し毛かもしれない。山ちゃんも「これはこういう毛艶の馬やな」と判断。異存なし。要はパドック気配において本命評価を危うくするような事柄は何も見出されず、ということ。
ワシュウジョージ、出走してきたが案の定3月佐賀のセイユウ賞の遠征、激闘の疲れが出て中間狂いが生じたとのこと。馬体重450kは地元出走としては不足(ワシュウが遠征で馬体重落とすのは止むを得ぬこと、そこからの立ち上げが鍵なのだが)。ひ腹は上がってはいないが逆に若干ゆるめた感じ。山ちゃんとも「まだまだ冬の頃の絶好の馬体とは違うなあ、おい」と確認しあう。ただし気配は例によって二人曳き鶴首目は爛々。その気合いも周回を重ねるにつれ増す。「おいおいワシュウやっぱりええんとちゃうか」の評価に。
さて、問題のケイエスヨシゼン。パドック入場直後はモタモタしていたが、次第にやる気を見せ出した。どんどん活気づいてくる。毛艶は冬2走の最悪の状態は解消。明るい艶と張りが戻った。踏み込みも、歩様が若干固いながらもしっかり深め。つまりは「いいんです!」山ちゃんともども「ヨシゼンこれやる気になってるよ」と、気配についてはOK印。あとは一八七の距離足らずの克服次第。かつて着用していた緑メンコで頭絡はメンコの下。つまり素顔でレースに臨む模様。
カズミサチフジ、パドック(41KB)
森澤軍団その1、カズミサチフジ
余裕のパドック
マイクリス、返し馬(39KB)
森澤軍団その2、マイクリス
絶好の返し馬

本馬場に各馬登場。ワシュウジョージは入場早々1コーナーへ一目散。返し馬はしない模様。トライバルサンダーは4コーナーへダグを踏んで、いの一番に返し馬。豪快に駆ける。続いてイムラッドシンゲキ、シャインマンリーと続々。ヨシゼンも例によって強め。横で「なあまた舌出しとるな」と山ちゃんの指摘通り、またもや舌越し。カズミサチフジは内埒沿いをダグ程度。一方マイクリスは黒く光るブリブリの馬体でドドドッと気合い充分の強めのキャンター。

馬券は当然サンダーから売れている。ヒモにはカズミが高い支持を集めていたが、パドック以降ワシュウが人気面で猛チャージ。予想紙の評価以上に気配が悪くない結果かと。休日開催のヨシゼンの人気はまあ予測ができるところ。何といっても三冠馬、メジャーなのでたまにしか園田をしない方々はとりあえあず押さえるだろうとは想像に難くない。

で、予想。常識的に考えるのであれば、サンダーが逃げそのまま、完調であればワシュウ自力差しで2着までには少なくとも来ようか。カズミが播磨賞の斬れ脚を使えれば圏内。あとはヨシゼンの追い込み(これはミラクルの領域のハナシですね)
であるが、今回、ワシ個人的には予想は二の次。このレースの個人的テーマは、ズバリ「ヨシゼン!」これは当初から、パドック気配上々ならば馬券もヨシゼンと心中と決めていたので。期待するはヨシゼン怒濤の超絶追い込み。「馬にも誇りがある、大賞典のレイ、他の馬に渡しとうないやろ、なあヨシゼン」といったところ。はっきり言って感情移入しすぎ。「甘いね!」百も承知。

いよいよレース発走。二角ポケットが園田一八七のスタート地点。決戦の火蓋、今切られる。
好発は内からワシュウジョージ、大外シャインマンリー。トライバルサンダー並のスタートながらも鞍上田中が若干押すと難なくハナに。程なく先頭巡航に入る。2番手永島シャインマンリー、3番手内ワシュウ、いつもよりは前の位置取り、久々を考えてか、逃げサンダーから離れて追走は不利と読んでの太の判断か。マイクリスは発馬で鞍上木村が押して押して押して、サンダーにタイマン張ろうとしたのか。しかしながら案の定テンの脚には限界があり、結局4番手、しかしこれも従来のマイクリスからすれば絶好のポジション。5、6番手は内アローパッション外アドミラル。7番手ヨシゼン次いでイムラッドシンゲキやはり今日は後方待機。殿は例によって赤木カズミサチフジ。
1周目(46KB)
1周目正面スタンド前
先頭サンダー2番手シャインマンリー
追走ヨシゼン(39KB)
追走ケイエスヨシゼン
これが素顔!案の定舌出し

隊列は安定して正面スタンド前。アドミラルが外からやはり行きたがり内ワシュウ中マイクリスとともに3番手集団。サンダーはここでは後ろと付かず離れず余裕の溜め逃げ。マンリーがっちり外2番手。下げた平松アローの外にヨシゼン。カズミはシンゲキを抜いて後方2頭目。
2周目向こう流しで先団がギュッと固まる。そして一群ペースアップ。余裕は先頭サンダーと内ワシュウ、ちょっと仕掛けてサンダーをきっちりマーク。外マンリー永島手綱をしごきながらも2番手死守。マイクリス木村押して必死の食らいつき。そして三角坂の手前、ヨシゼンが動く。アローは苦しくなる。三分三厘、やはりズブいヨシゼンの外に、いよいよカズミが忍び寄る。「まだ動いたらあかん、まだや、もっと脚溜めるんや」と三角のカズミを見ながら山ちゃんが言う。実際これ以上の辛抱は無理といった体で坂の下りで一気に押し上げ、四角で先団に取り付く。
そして直線、いよいよサンダー末脚リリース。スッと後方を離しにかかる。同時にワシュウ、太がGOサイン。内から馬場三分どころに馬を出しサンダーを追撃。ここでサンダー、ワシュウの2頭と後方はちぎれ、マッチレースか、と思いきや、脚を伸ばすワシュウと同じだけサンダーがさらに加速、遂に追撃を振り切りサンダー古馬最強のVゴール。2着ワシュウ、結局馬体は合わず。サンダー意識のワシのカメラのファインダーにもワシュウの姿は入らず。
やや離れた3着争いは大激戦。必死に食い下がるシャインマンリーの外にマイクリス渾身の追い込み、さらに大外カズミが一度は集団を抜けかける。残りわずかでマイクリスとカズミの間にヨシゼンが突っ込み、先にカズミが止まる。最後は内マンリー中マイクリス外ヨシゼン鼻面並べて入線。結果3着マイクリス4着マンリー5着ヨシゼン、アタマ、アタマの差。6着カズミは遅れること3/4馬身。
結局、ヨシゼンの夢=ワシの夢は潰える。思い入れ強すぎるのも大人気ないなとは自覚、自戒しつつも、時にはということでご容赦願いたい。
トライバルサンダー、ゴール前(41KB)
トライバルサンダー、ゴール間近
ワシュウは写らず、鞍上学、ニヤリ
トライバルサンダー、口取り(45KB)
トライバルサンダー、ウィナにて
額に"サンダー"印

サンダー、本命人気に応える文句無しの勝利。田中、ウィニングランすればいいのに1コーナーから普通に引き揚げる。ただし検量前に退場する前にスタンドに向かってガッツポーズ。
吉田アナ曰く、「過去35回の大賞典の歴史の中に牝馬の勝ち馬は1頭もなく、36回目、アラブ最後の大賞典にして初めて牝馬の戴冠。」(もっとも今回は最後にして一八七の中距離でのレースであるのだが)それにつけてもトライバルサンダー、強い!ちょっとバケモノの領域に達した感がある。「他地区転入馬に勝たれるのは面白くない。」とアラブファンさんは漏らしたが、何はともあれ強い。最後の直線もまだ余裕があるようにすら見受けられる。できあがったワシのサンダーゴール直前の写真、鞍上田中、心なしか余裕の笑み。迫るワシュウに気づいているはずであるにも関わらず、である。
そのサンダーに結局唯1頭迫ったのがワシュウジョージ。中間仕上げ万全ではなかったにせよやはり自力上位。園田の現看板の地位に恥じぬ走りはさすが。対戦3度目にして初めてサンダーの後塵を拝することになったがこれは止むなし。

今回の大賞典、そしてその試走であった4月中のS1戦2レースを総括するに、中距離までの古馬現有勢力の力関係が見えたといえまいか。すなわちサンダー、ワシュウの二強がレースの着差で例えれば3〜5馬身は確実に抜きん出ており、その後ろに第二集団がギュッと固まり鎬を削るといった状況。つまりはシャインマンリー、マイクリス、カズミサチフジ、そしてヨシゼン(中距離では残念ながらこのグループ)。さらに大賞典は欠場だったがヤングメドウ、ニシノハクリュウあたりがこれに該当。これらをあわよくばベストスイセイ、アドミラル、アローパッションあたりが脅かし、その気になればイムラッドシンゲキ、オカノテイセン、ユウターヒロボーイ、マノノトップガンといった面々も虎視眈々。こうなるとタッカースカレー、マキオリンボー、キクノパワフルあたりが復帰してどうなるかが即断できぬ。 そして、忘れるぺからず、"王者"エイランボーイ。休養前の強さで復帰してくれることを切に願う。であるならば彼の格はどの辺り?ワシュウ、サンダーの遙か前方であらんことを。

戦い終わってオフは前田さんの誕生会。みんな「スキスキリーダー!(大笑)」である。(もう訳わからん、エエ加減にしなさい!)ということで連休の一日が終わるのであった。

兵庫古馬勢、次の大一番は敵地福山に乗り込んでの6月山陽杯。ワシュウは恐らく行くであろうし、こうなるとサンダーも是非!兵庫の至宝の二騎の強さを福山でも見たいし、福山勢にも頑張って欲しい。何とも楽しみ。「先の楽しみの無理矢理再生産?」まあそう言うなかれ。それが競馬。アラブ競馬のある限り。

2000.5.7 記

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