第40回姫山菊花賞観戦報告

 2000.10.26、姫路、2000m

サラブ導入に伴い春の菊水賞と秋の六甲盃をサラ系に明け渡したことにより、今年から兵庫アラブ4歳三冠競走は、フクパーク記念、楠賞全日本アラブ優駿、姫山菊花賞の三つに。というわけで、これまでだと、三冠最終関門六甲盃の約一月後、4歳崖っぷち重賞であった姫山菊花賞、三冠最後の一冠レースへと変貌を遂げる。併せて施行条件もハンデ戦から定量戦に。

私事ながら、今年ワシはここまで"新"兵庫三冠の二つ、フクパークと楠賞は現場観戦済み。残る一つも「兵庫発アラブ現場主義」の手前、行かねば・・・というわけで、やや無理をして時間をあけて、秋の"ひめけい"に出掛けた次第。
この週はぐずついた天候の日が多く、降雨もあり当日の馬場状態は不良。天気は曇りで観戦に支障は来さず何より。8レース発走時刻頃に競馬場に到着。
入場して9レースのパドックに足を運ぶと、平日ど真ん中にもかかわらず、相当数の方がいらしている。まずは"ひめけい"といえばこの御両人。"ひめけいの神様"の称号を持つちーちゃんと"ひめけい現場主義者"まりおちゃん。大西さんにエチゼンさんにブリセイくん。そして滋賀湖南から3号馬さん。パドックには例によって横断幕ズラリ。因みにこの日のワシのいでたち、白のカットソーに黒の半袖ブルゾン羽織って、つまりはタカライデン鞍上赤木騎手の勝負服(黒・白袖)のコスプレ、しょーもないミーハー受け狙い。それを皆さんに説明すると、半ば呆れ笑い、ブリセイくんがウけてくれたのでちょっと嬉しい。
そして大御所Okuさんもご来場。Okuさん、何だかんだで兵庫アラブ三冠、皆勤。「まいど」とまずは挨拶。そしてそれに続いて半ばお約束の「タカライデンてホンマ強いんか?」とのやり取り。きよちゃんの姿も、そして当然の事ながら、アラブファンくんも。しかしアラファン先生、地元の祭りの疲れか、えらいしんどそう。

さて、"姫な菊"(byまりおちゃん)こと姫山菊花賞。サラブ導入のあおりを受けて、今年の兵庫アラブ4歳勢、春からその層の薄さが著しい(春競馬における兵庫4歳戦線の情勢については、拙HPのフクパーク記念観戦報告をご参考に)。加えて、春の4歳戦線を彩った面々の大半が知らぬ間に戦線から霧散し、結果春の二冠に登場した馬のうち姫山に歩を進めてきたのは、筆頭タカライデンとフクパーク4着のヒュガチカラのみ。まあこういった、春の面々が秋につながってこないという傾向は、これまでにも少なからずあったことであり、致し方ないとも見なしうるが、今年は更に深刻なのは、夏から秋にかけて台頭した強力な新興勢力に乏しいという点。結局層の薄さが解消されず、ここに至ってしまった感が大きい。
もっとも、今年(というか今後)に関しては、昨年までと異なりトライアルレースが存在せず(従来は六甲盃トライアルサンスポチャレンジカップが、夏の登り馬がここで名乗りをあげ、新興勢力としての地位を固める場として機能していたのだが)、それなりの4歳上昇馬が古馬条件戦に埋没してしまっていたという、恵まれぬ状況ではあるのだが・・・
いずれにせよ、フクパーク優勝楠賞2着の、4歳筆頭タカライデンの地位を脅かしそうなライバルの出現をみぬまま、この姫山を迎えることになったわけで・・・
なお、春先まで世代最強の名を恣にしつつも、三冠ロード目前で頓挫したしまったハッコーディオスは、近日能検を通す目途がついたらしく、ようやく復帰とのこと。いずれにせよ4歳の大半を棒に振ってしまった。

ということで出走馬、内枠より、ヒュガチカラ(小牧毅)、ノースパワー(尾林)、タキオビジン(下原)、タカライデン(赤木)、サエノリーダー(青山)、ニシノリュウジン(松平)、リジョウガバナー(小牧太)、ロンリーチャプリン(田中)、以上、無理から集めた感がなきにしもあらずの8頭。メイン前の9レースの発走前、装鞍所の広場でリジョウガバナーがギリギリまで引き運動をしていた。
そして各馬パドックに登場。
1番ヒュガチカラ。青鹿毛の馬体の重量感は出走馬中一番。馬体重479kだが見た目はそれ以上に大きく見える。なかなかの毛艶と張り。ゆったりとした周回だが舌を口の中でゴネゴネしているあたりに抑制された気合いを感じる。深めのブリンカーといい毛色、馬格といい舌の動きといい、福山のワールドアイにちょっと似ている。追い込み一手、先行有利の馬場、地力もさることながらやや劣勢か。
2番ノースパワー。それなりの素質馬と見なされている。ちょっとトモが堅いか。栗毛で品のあるルックスではある。Dハミ着用。
3番タキオビジン。前走のクイーンカップで初対面し、その可愛さにちょっと惹かれた馬。格的には上昇馬の一頭か。しかしながらこの馬、姫路に出走すると焦れ込み良積なしと『キンキ』紙上で指摘する。その通り今日も焦れ込みが激しい。頸を激しく上下させ、さらに尻っ跳ね。園田開催のQC時の品のある周回とはまるで別馬。西脇所属なのでどちらに出走するにせよ輸送はあるわけで、それが理由でもなかろう。よほど姫路が気に入らないのか。QCの善戦から狙ってみたかったのだが、これではその考えを改めねばなるまい。
そして4番が不動の本命タカライデン。馬体重440kと、春から目方はほとんど変わってはいないが、馬体の造りが格段にがっしりしてきた印象。骨格が固まったと言おうか。肩やトモの筋肉もしっかりしているし、何より顔つきから子供っぽさが消え、ガチッとした大人のそれになった感。周回気配も余裕のある中に気合いを滲み出させるといった、非常に良好なもの。文句ない。ワタリを編み込んだタテガミがこれまでトレードマークだったのだが、この日は編み込みなしのナチュラルざんばらヘア。
タカライデン、パドック(41KB)
タカライデン、パドック
春に比べて逞しさを増して
ニシノリュウジン、パドック(44KB)
ニシノリュウジン、パドック
兄によく似たルックス。気配は絶好!

5番サエノリーダー。周回気配はかなりうるさい。時折暴れ気味にパドック中央の芝生を周回ショートカットしようとする。ややコンパクトながらどっしり感のある馬体は父ホーエイヒロボーイ譲りか。青鹿毛の毛艶はよい。
6番ニシノリュウジン。夏の上り馬で前走はQC挑戦でタキオビジン共々格以上に善戦。そして何より昨年の姫山の覇者にして今年6月惜しくも急逝したニシノハクリュウの年子の全妹。兄妹連覇の勝ち星を兄に捧げるべく参戦。馬体や身のこなしが兄とそっくりとはQC観戦記の中でも記したが、当日のその馬体、気配、絶好!出走馬8頭中パドックの最も外目をぐいぐい周回。実に活気がある。トモの踏み込みも素晴らしい。パドック気配、どれが1番かと問われれば躊躇なくこの馬をワシは推す。
7番リジョウガバナー。これも上り馬でここでは対抗格評価を受けている。当初は短距離差し馬の色合いが濃かったようだが、ここ二走の千七戦連勝で距離延長への目途がたったとされる。従来は赤木のお手馬だが、赤木タカライデン騎乗につき、太さんテン乗りで打倒タカライデンを目論む。差し脚質が先行有利の馬場状態でどうか?腹袋の大きい、ボテッとした馬体。馬体重443kよりは大きく見える。厩務員さんに手綱を曳かれて歩かされているといった感じの、のんびりとした周回。ビソウウエスタンにちょっと近いか。父は園田往年の"晩熟帝王"マルセンガバナー、いうなれば"ご当地種牡馬"。血統的には今後の成長と長距離適性、見込めると思うのだが。
8番ロンリーチャプリン。これも差し馬らしい。トモの送りが堅いか。リジョウガバナー同様、ルックスはフツーの鹿毛馬。
本田さん(パドックおやぢです)の「とま〜れ〜」の号令がかかり、騎手が整列、そして騎乗。ここでびっくりは毅の髪型。再三「毅髪切れ」と茶化していたその念が届いたか、なんとバッサリ短髪になっている。サエノ騎乗の青山は重賞初乗り。
パドックから本馬場への移動中に、あいねすさんにお会いする。曰く「近走のタカライデン見るにつけ、あの馬距離の壁あるんじゃないかなあ」フムフム。確かに古馬オープンに混じっての走りとはいえ、三分三厘の勝負どころで突き放す脚に乏しい点はワシも気になっている。今回は他馬との地力の比較において不動とは思うが、今後さらに上を狙うとなると、どうか?という懐疑の念はワシも抱くところではある。

各馬本馬場に登場。タカライデン、ニシノ、リジョウ、ロンリーの4頭は四角方向に歩みを進めてから返し馬に、他の4頭はゴール前から駆け出す。
タキオビジンが1周回ってホームストレッチにやって来るが、ここでタキオ、気配がかなりうるさく舌越ししており、そのためか、ゴール板前まではやって来ず、鞍上下原、結局途中で引き返してしまう。タカライデンはじっくりとダクに下ろし、出走馬中最後に、軽めながら非常にきびきびとしたキャンターで内埒沿いを駆けてスタンド前を通過。上記以外の各馬は概ね強めのキャンター。

で、予想。常識的に考え、馬単を当てに行くのであれば、アタマタカライデンにヒモを数点絞って、で決まりなのだが、皆さんスケベ心プンプン、ヒモタカライデンを少なからず押さえてある。かく申すワシもヒモタカライデンの馬単総流し、但しどれも言う程配当はつかない。まあそれはともかく、勝負馬券はタカライデンから、パドック絶好のニシノと対抗格リジョウへの2点、枠連(馬単じゃないところが保守的)。配当を考えれば、応援するは連下評価までのニシノリュウジン!某くんはワシより更に大胆に、お楽しみ馬券で馬単ニシノ−リジョウの裏表、どスケベ!Okuさんは定番の「何だかんだで終わってみたら小牧太やねんで」、+ニシノリュウジン。なお、単勝人気は、タカライデン、リジョウ、ノース、ニシノ、タキオの順。

さあレース発走。姫路二千、スタート地点は向こう正面2コーナー寄り。ワシの隣で観戦のまりおちゃん、"姫な菊"をずっと楽しみにしていたらしく、また赤木jkファンということもあり、レースを迎えるにあたって緊張気味。「アカンオナカ痛とうなってきた」「オナカイタイヨ〜!」これが"ひめけい現場主義者"の思い入れ、やね。
リアルタイムインプレッション
スタート。発馬が心配されたタカライデンだが今回はポンと好発。内タキオビジン外ニシノリュウジンも前に、暫しタカライデンと競るがこれを制してタカライデンハナをがっちりキープ。ということで先頭タカライデン2番手外ニシノ内タキオでレースは進行。タカライデン、先頭とはいえ後続との差は1馬身程度、集団のアタマといった状況。
この隊列のまま正面スタンド前に。上記先行3頭の後ろに他馬の多くが差がなく続く。差し戦法の太リジョウガバナーも馬群一団の中の5、6番手あたり。ほとんど離されてはいない。殿はやや間が空いてヒュガチカラ、この位置取りは予想されたのではっきり視認。さほど縦長にならぬまま2周目へ、淡々としたながれのまま。

1周目(41KB)
1周目スタンド前、一団
先頭タカライデン2番手外ニシノ3番手内タキオ

そして2周目三分三厘、ほぼ馬なりのままタカライデンが加速、いよいよ腰を上げたといった感でリードを広げにかかる。ニシノにタキオ、ついていこうとそれぞれの鞍上松平下原のアクションが大きくなる。太リジョウも勝負に。これを承けてタカライデン、赤木もGoの4コーナー。この時点でタカライデンと他馬との手応えの差、歴然。ワシはタカライデンの勝利を確信。
最後の直線、内埒沿いを足どり確かに走るタカライデン。そして注目は2着争い。馬場やや外目でニシノリュウジンが粘り、この大外にリジョウガバナーが併せてくる。アタマに浮かぶは馬券の配当、となると応援するのはニシノリュウジン。カメラ構えつつもワシ「松平残せ〜!」声援の甲斐あって、ニシノリュウジン、リジョウの追撃を振り切り2着死守。そしてその先ではタカライデン、余裕充分に兵庫二冠のVゴール。ワシ、鞍上赤木のガッツポーズに期待してファインダー像にタカライデンを追い続けるも、思いの外冷静に、ガッツポーズもなく駆け抜ける赤木withタカライデン。ウィニングランもせず引き揚げてくる。ゴール通過時、欲どおしいワシ、勝者に対してより先に「松平よ〜やった!」の掛け声、然る後に加えて「赤木いいぞ!」

タカライデン、ゴール直前(43KB)
タカライデン、ゴール直前
セーフティーリードでゴールへ一気


以下、ダイジェストの中継より補足
好発はタカライデンとタキオビジン、ニシノリュウジンは松平がかなりしごいて前を取りに。太リジョウはややあおり気味の発馬。1周目三角坂下あたりで先頭タカライデン2番手外ニシノ、内でタキオは下原がやや控えて3番手に落ち着く。リジョウはこの辺りで4、5番手にリカバー。
正面スタンド前、先頭タカライデンリード1馬身強。若干口を割り気味。2番手外ニシノ3番手タキオ、折り合って。ニシノとタキオの間に青山サエノが掛かり気味に割り込み、これを2馬身弱前に見て外リジョウ内ノース。ここまでは一団でケツ2ロンリーと殿ヒュガチカラは離れて単走。
2周目1、2コーナーから向こう流し、その半ばで真っ先に動いたのは太リジョウ、外から寄せる。ここで一瞬タカ、ニシノ、タキオ、リジョウの間隔がギュッと縮まるが、3、4コーナー、タカライデンが再度1、2馬身スッと後続を離す。余裕充分。ここではニシノもタキオも手綱が動き、リジョウ太は鞭を入れての捲りトライ。
最後の直線、脚を伸ばすタカライデン。一気にではないが次第次第にリードを広げ確勝圏へ。結局2馬身1/2差の1着。
外2番手ニシノリュウジン、そこにリジョウがさらに外から併せに行き、残り150m辺り、1/2馬身差まで馬体が合い、ゴールまで両者競り合いを繰り広げるも、最後はニシノが1馬身振り切る。タキオビジンは内で残り約100mまでは持ちこたえたが、最後は失速して3着リジョウから4馬身遅れた4着。これ以降は遅れて入線。5着最後方からヒュガチカラ、6着ロンリー7着ノース、最下位サエノリーダー。

ゴール板前のコース上で口取り撮影。タカライデンに跨り写真におさまる赤木騎手の、挙げた右手、突き立てた指二本。二冠をアピールか。
ウィナでの表彰式。そして吉田アナの勝利騎手インタビュー。「スタートを五分に出た時点で、赤木騎手自身、勝利を大方確信したのでは?」との吉田アナの問いに、赤木騎手肯定の受け答え。「スタートはよかった。正直いつもより折り合ってレースができた。」とのこと。まさに今日は完勝快勝といったところ。
表彰式後、最終レースの騎乗がないこともあり、多くのファンのサイン攻めに対し、一人ひとりに丁寧に応じてくれる赤木騎手。ファンへの応対の丁寧さにおいては従来より定評のある彼、好感度またまた更にUP!かく申すワシもフクパークのゴール前写真にサインを貰い、満足ぢゃ。
この後皆さんと"だんまく"を撤収し、"ひめけい"を後に。皆さんはプチ宴会開催だがワシは日常へ、速攻とって返したのだった。「手羽先食べたかったよ〜!」

2着ニシノリュウジン、兄妹制覇には至らなかったが大健闘、先行して最後まで粘り込み、立派な走りだったと思う。今後も注目していきたい。兄の存在の大きさに押し潰されるようなヤワじゃないことは充分証明されたよね。
3着リジョウガバナーは今後もっと伸びて欲しい。偉大なる父マルセンガバナーの、種牡馬としての格を上げる為にも。
タキオビジンは不完全燃焼であろうがそれでも4着。ある意味サスガではあろう。気性の安定性を増して、フルタイム才色兼備を目指してね。しっとり落ち着いた貴女がワシは好きなのサ!(ミーハー的物言いにも程がある)
最後に、とにもかくにもタカライデン。順当に二冠達成。これで次の、且つ最大の目標は、まさにちょうど一月後、11/26の、第1回全日本アラブグランプリ@福山。コウザンハヤヒデの前に屈し楠賞で取り逃した"全日本"のタイトル、奪取するチャンス再来。充実の4歳秋、他地区の有力馬の台頭も著しかろうが、楠賞2着、兵庫筆頭の名に賭けて、健闘を期待。平均ペースで先団から早めに逃げ馬を捕らえ、かつ集団から抜け出せられたら、粘り込み、勝機多分にあろうか、と。
ともあれ決戦は11.26、福山二二五。待つべし、そして観るべし――

2000.10.31 記

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