第46回白鷺賞観戦報告

 2002.10.31、姫路、2000m

はじめに、出走馬について〜今年の白鷺賞事情
姫路競馬、秋開催恒例の古馬重賞、白鷺賞。出走馬は内枠より以下の11頭。()内は騎手、性齢、斤量。
ハッタブライト(谷川、牡4、53k)、ミスターサックス(小牧太、牡3、54k)、ユウターエルシー(下原、牝4、52k)、マサノライデン(松浦政、牡5、54k)、ホクセツジョージ(永島、牡4、54k)、ツバサキング(岩永、牡6、52k)、マキオフラッシュ(松平、牝4、53k)、クールテツオー(岩田、牡4、59k)、スーパーチャレンジ(尾林、牡6、54k)、ジョージサンキュウ(青山、牡4、53k)、タカライデン(赤木、牡5、55k)
負担重量は賞金別定。クールテツオーが背負い頭で59k。これは8月の摂津盃時背負った58.5kを越える、彼にとっての最高負担重量。

昨年一昨年と、この白鷺賞が兵庫アラブ系古馬にとって、年内最後の重賞であったのだが、今年はアラ・サラ混合重賞の園田金盃が11月28日施行となったので、3年ぶりに古馬最終決戦の任を外れた。
ということで、その園田金盃に向けて、アラブ陣営の前哨戦として、有力馬の現状の見極めが焦点となろうところ、であるのだが・・・
これまでアラ・サラ混合重賞にてサラを撃破した経験のある2頭、昨年の園田金盃馬ワシュウジョージと、今春の兵庫大賞典馬サンバコールは、共に休養が明けぬようで姿を見せず。もう1頭の強豪にして昨年のこのレースの勝ち馬ハッコーディオスも、今春3月以来実戦から遠ざかっており出走はならず。
出走馬の顔触れを見るに、これは8月の摂津盃の再戦といったところ。若干小粒な印象は否めない。因みに摂津盃と同様、ソレユケイチマツもキッチリ回避(嫌味)。兵庫の古馬重賞の度に、強豪勢揃いの高レベルな一戦を期待してしまうのだが、実際はそうなることは非常に稀、多分それは幻想でしかないのだろう。ここにあっては、今回の走りが園田金盃に繋がろう馬は、そう多くはなさそう。正味な話、本命クールテツオーくらいか。
何だかイマイチ盛り上がらないのだが、レースの焦点はもう一つある。すなわちミスターサックスの走り。数日前に、全日本アラブグランプリの他地区出走馬として選出されたのだが(フクパーク記念勝ちと楠賞2着が効いていよう)、それは秋競馬にて地力の白黒をつける機会のないままでのこと(今年から姫山菊花賞がサラ重賞となり、兵庫の秋競馬からアラブの3歳重賞が消滅してしまったので)。この馬、夏を越えた現在の地力に大いに不安があり、選出後の今更ではあるものの、この古馬重賞でどれだけやれるかが、次走アラブグランプリに向けて要注目なのである。

姫路には2時過ぎに到着。天気は曇り時々晴れといったところ。先週末から週始めにかけて、関西にも寒波が襲来して、一気に冷え込んだのだが、この日はそれも若干緩んだ感じ、さほど寒くなく過ごしやすい。幸い風も弱くて助かる。
馬場状態は良だが、砂は乾き切った感じではなく、ちょっと粘り気を帯びているような。

パドックから発走まで
そしてパドックタイム。
1番ハッタブライト。馬体張りは良好で皮膚が薄そう。タカライデンをちょっとコロンとさせたような素っ気ないルックス。S1とA1の中間といった地位で、前走前々開催のS1で3着。
2番がミスターサックス。馬体重は前走比+8kの531k、成長分があるにせよ、ちょっと肥え過ぎでは。個人的には絞れた方が良かろうと思うのだが。案の定胴回りは太くて馬体全体が緩め。春の時点でもそう思ったが一層その傾向が強まった。トモの踏み込みも甘い感じ。のんびりゆったりと周回していたが、後半次第にキビキビしてくる。パドックではメンコを被っているが、頭絡はメンコの下。今日から素顔でレースに臨むとのこと。楠賞2着の後は暫く不出走で、摂津盃の次開催から復帰。以後S1で2戦するも、前々走4着前走3着、好位を何となくしか走れていない。というわけで前述の通り、現状での地力がちょっと怪しい。
3番ユウターエルシー。毛艶は一息。トモの送りが硬く、出ていない。最内を覇気なく周回しており、全く冴えない。5走前から前々走まで4連続2着、前走3着とまずまずだが、4走前の牝馬戦サマークイーン賞以外は全てA1でのこと。ここは格上挑戦となる。
4番マサノライデン。ギュッとコンパクトな馬格だが、胴の実入りは充分、筋肉ブリブリ。摂津盃時よりこれは目立つ。毛艶もなかなか。内内を回っているが、ユウターエルシーと違ってグッと気合いが入ってのもの。歩様はバキバキ。摂津盃2着の後は全てS1で2着5着2着。すっかり上位の常連。しかしキャラは"永遠の穴馬"、追い込み一発。
5番ホクセツジョージ。首をキビキビと動かしてパドックの大外を周回。トモの送りはやや硬いが力強さはある。腹回りはちょっと緩めだがこんなものかと。馬格の雄大さは元来のもの。2番人気を裏切って7着だった摂津盃の後は2戦消化、9月12日のS1で勝利、しかし前々開催の前走は1番人気で7着と、期待と人気の割には戦績が安定しない。
6番ツバサキング。これも外目を歩く。毛艶はソコソコ、腹回りは重い。ルックスだけは常時良く見せてきた馬なので、それからすれば今日はイマイチ。かつてはS1の常連だったがこのところは良積なく、A1出走の方が多い。実に近20戦連続掲示板を外している。前走A1戦7着。
7番マキオフラッシュ。胴長でヒ腹は薄いが馬体は緩め。首差しの細さはスマノヒット産駒らしいところ。キビキビとはしているが、左トモの出がおかしい。5走前のサマークイーン賞3着で前走前開催のS1をソレユケイチマツの3着だが、実際の格はまだA1か。
8番がクールテツオー。例によって二人曳きで、気配は少々煩い。トモの歩みが小刻みなのもいつものこと。馬体重449kは前走比-3kでこの馬としても軽い方だが、馬体の張りと実入りは問題ない。正直言って、外見には3歳時からの成長はあまり現れていないのだが。摂津盃勝利の後は1走、9月25日のS1を1着。相変わらず間隔を充分に取って、大事に使われている。
9番スーパーチャレンジ。いつ見ても目を惹くパドック周回。例によって大外をスタスタと。トモの踏み込みは深い、肩の捌きは硬いか。よく見ると今日は毛艶ソコソコでやや細身であるが、気にはならない。摂津盃大逃走3着の後は3戦5着6着5着、いずれも逃げず何となくの結果。
10番ジョージサンキュウ。馬体重421kの細身で軽い馬だが、今日は胴回りをふっくら見せている。ちょっと覇気に欠けるか。摂津盃6着の後は8着4着。通算43戦2勝3着14回4着9回。
11番はタカライデン。毛艶も馬体張りも文句なし。ガッチリかつ伸びやかなフォルムで、身のこなしもシャキッと。8月の摂津盃時とは雲泥の差、であるどころか、これまで目にしたタカライデンの中でも最高の印象。時折キョロキョロとして、その度に長い前髪がパサッとなる。「キャー!タカライデン真ん中分けー!」と、まりおちゃんニーナちゃん大喜び。摂津盃5着の後は2走、前々走4着、そして前走前々開催10月8日のS1戦にて、一昨年の姫山菊花賞以来、実に約2年ぶりとなる勝ち星を挙げた。

クールテツオー、パドック(43KB)
クールテツオー、パドック
そんなに3歳時と見た目変わってないのだけれども

本馬場入場。ホクセツジョージとマキオフラッシュが入場口から一角方向へ直行。クールテツオーが最後に入場して、1コーナーに直行するもいつものこと。大抵の馬は誘導馬の先導にゴール前10mあたりまで付いていき反転、そして駆け出し待機所へ。スーパーチャレンジは口を割ってガッと。ハッタブライトにミスターサックス、タカライデンあたりは四角方向へ進む。サックスは直線入り口あたりでジタバタするもそのまま三分三厘まで進んで、ここからキャンター。タカライデンは4コーナーで1、2分佇んでから、インを軽く駆ける。

予想。クールテツオーの状態に不安がないとあっては、この軸は不動かと。ミスターサックスが春の実績と鞍上太さんもあってか2番人気に推されているようだが、パドック気配からしてワシは信用しない、軽く申し訳程度に。大きく狙ったのがマサノライデン。出来も申し分なく、摂津盃の再現を期待して。タカライデンは、本来ならば大きく相手にしたくない馬ではあるが、気配絶好であったので、それなりに狙う。山根さんはこれが気になるよう。「おいこの馬この仕上がりと(テツオーとの)ハンデ差でどうにかならなんだら、この先(重賞で勝ち負けなんて)ないでぇ。」と。まりおちゃんは懲りずに、毎度お馴染みスーパーチャレンジ馬券。一昨年のこのレースで、直線で轟沈した負けっぷりが強烈なので、ワシはこれはさすがに買えない。

レースなり
いよいよレース。距離2000m、スタート地点は2コーナーを回って向こう流しを少し進んだところ。
ゲートが開く。鋭発はスーパーチャレンジ、鞍上尾林に押されて今日は果敢にハナを奪取。内からユーターエルシーの二の脚もいい。バック半ばではチャレンジとフロントを競うほどだったが、やがて2番手に。ミスターサックス、テンは並だったが二の脚良くすんなり前へ、絶好の2番手集団のフロント。クールテツオーは好発も、内のサックスの出を窺ってかすんなりその直後に下げる。テツオーのインにはマサノライデンが早々にへばり付く。問題は大外タカライデン、痛恨の後手踏み、出負けに見えたのだがその実は2完歩目で挫けている。しかしながらバック一杯を使って、三角までに何とかテツオーの直後までリカバーする。
正面スタンド前、先頭引き続きスーパーチャレンジ、後続に先んじること2、3馬身。2番手にはミスターサックス、折り合いも問題ない。直後内にユウターエルシーが3番手。サックスを2、3馬身前に見て、外クールテツオー内マサノライデンが並んで追走。テツオーは岩田jkに制御されて好位からの競馬。マサノライデンの方が掛かっている。この2頭の直後外目にタカライデンが。若干口を割り気味だが、時にムチャムチャブッ掛かるこの馬としては、赤木jkの長手綱によく宥められていようか。タカライデンの直後内にホクセツジョージ、これはスタート来変わらずの位置取り。直後内にツバサキング、さらに最内にハッタブライト。ホクセツの真後ろに好発から控えたジョージサンキュウがいて、最後方はマキオフラッシュ。

1周目(29KB)
1周目の正面スタンド前
先頭スーパーチャレンジ2番手にガッチリとサックス

1、2コーナー中間、このあたり、後続のペースが落ち着いた間隙を衝いて、尾林さん、スーパーチャレンジを一気に逃がす。バック入り口までに、スーッと6馬身くらいは後続を引き離す。
しかし2番手サックスは余裕綽々。向こう正面半ば前あたりからジワリと加速して、再度差を詰め、楽々チャレンジの直後まで。サックスの直後外ではクールテツオーが追走、3馬身差圏内で続く。そのインには相変わらずマサノライデンが執拗に併せる。テツオーの直後外にはタカライデン。ユウターエルシーはインで後退。
バック半ば過ぎから3コーナー。ミスターサックスが、実に楽な手応えでスーパーチャレンジを捉えにかかる。一方これを追うテツオーは、岩田jkの手綱が動きっぱなし。斤量59kが効いているのか、スパッと上昇しない、どうにかこうにかの走りに見える。同様にマサノライデン&松浦政サマも必死。
三分三厘、ミスターサックスが先頭を奪う。交わされたスーパーチャレンジも、インで沈没せず健闘。サックスの外に、クールテツオーが、やっとこさっとこといった体で併せてくる。マサノライデンは内で遅れた。そして外からタカライデンが続く。
最後の直線、先頭はサックス、コーナリングの妙でチャレンジが食い下がる。サックスの外へテツオー、直線を向いた時点でその差は1馬身強。見た目にはサックスの手応えが絶好、テツオーはこれでどうだ?という脚。そして両者、やがて鞍上の鞭が入る。外からタカライデンも接近、いつになくその脚に斬れがある、どこまで迫れるか。
と、圧巻はここからのテツオー。何だかんだでサックスに並ぶと、ストライドのピッチが一気に上がって加速。押し切らんとするサックスと暫し競り合い、残り50で交わし去る。終いは完全に抜け出して、1馬身半差をつけてのVゴール。岩田騎手、ゴール通過後、左手を挙げて人差し指を突き立ててスタンドにアピール。

クールテツオー(44KB)
残り30、テッちゃんがサックスを差し切る
サックスの素顔はドバッと大流星

2着にはミスターサックスがそのまま入線。タカライデンは直線半ばで内に入れて迫ったが、結局2馬身差の3着。ジョージサンキュウが最後大外を強襲して4着、直線伸びなかった5着マサノライデンや6着スーパーチャレンジを蹴落とした。先行バテのユウターエルシーが7着、最後ちょっとだけ押し上げたマキオフラッシュが8着で、ホクセツジョージは終始中団で何も出来ずの9着。ツバサキングとハッタブライトは後方ママでブービーと最下位。

反省、そして今後を想いつつ、おしまい
テッちゃん、お見事!リアルタイムの印象としては、道中とにかく行きっぷりが悪くて、最後の直線サックスに並んだだけでも「よくここまで来たな。」という感じ。サックスの方が最後まで余裕があるように見え、叩き合いでも負けていないように映ったのだが、あれよあれよという間に勝負は大逆転。「テツオーそこから伸びるのかぁ!」と、ちょっと感心してしまう末脚だった。
しかしレース後の岩田騎手のコメントによると、見た目に反し、「若干反応は悪かった」ものの、「向こう流し後半からゆっくり仕掛け」「三角過ぎでは一息入れて」「直線の末脚に賭けた」のだそうだ。その分「最後の伸びは素晴らしかった。」とのこと。「この馬の勝負根性には頭が下がる。」と付言していた。振り返れば、今年の兵庫の古馬重賞、新春賞、兵庫大賞典、摂津盃、そしてこの白鷺賞、皆勤なのはテツオーただ1頭。59k背負っていてもこれだけの自在性と最後の伸び、今や兵庫の堂々たる看板ホースだ。「4,5k以上ハンデ差あって、他の馬が全く勝負になってないやんか、こんなん強過ぎるで。どうしようもない。」と山根さんも脱帽。
ミスターサックスは惜しい2着。ではあるものの、初秋の停滞を脱して、春シーズンの力強さを取り戻したと充分見なしうるのではないか。おまけにあの緩んだ馬体であるからして。これだけ走れれば、全日本アラブグランプリにおいても、充分格好がつくと思う。それでも戦後太さんは「直線は本来の伸びではなかった。」とコメントしているようで、太さんの見込んだ能力値はまだまだもっと高いみたい。ただこの馬、大跳びだけに、終い接戦になった時のもうひと加速は苦手だろうな。今日もそのあたりの差でテツオーに屈したし、楠賞でチョウヨームサシに差し切られた場面も同様。
タカライデンはスタート直後の躓きが全て。良好な仕上がり、テツオーとのハンデ4k差、打倒テツオーの絶好機もこれでおじゃん。折り合いも割と良く、終いの差し脚もあっただけに、惜しい。尤も、全てが巧く運んで終いも斬れるほど、都合のいい馬じゃないとも思われたりして。山根さん、ガックリ。「まあ結局こういう勝たれへん馬やわな。肩入れしたワシが・・・」と。この後「反省と言いつつ、それは後悔に過ぎず云々」と続くのだが。
ジョージサンキュウ、飛んできた。ニーナちゃん一人が微妙な喜び。これで通算44戦2勝3着14回4着10回!くどいけど。まさに"入着拾いの亡者"。
マサノライデンは追い込み一発どころか、道中テツオー徹底マークの好位付け。結果最後の直線では末を無くしてしまった。この馬に距離二千はちょっと長かったかも。イムラッド産駒でもあるし。ただ、負けて失うものなどないからいいか。
スーパーチャレンジ、ホンマに大舞台だとやってくれる。道中後続を突き放した場面はちょっと沸いた。終いも割と粘っている。今回もまりおちゃんに束の間の夢を見させたな。
ホクセツジョージは全く見せ場なし。この、風格と期待、人気の割には情けなく、現地観戦したレースで好走した試しがないということもあって、ワシの評価はちっとも上がらない。

1着テツオー2着サックスは大本命サイドでの決着。枠複250円馬複220円馬単320円の低額配当、おかげでワシの馬券はトリガミの結果に。せめてタカライデンが2着ならばなあ・・・

勝者のテツオー、次走は園田金盃の予定とのこと。彼にとって距離2400mは長く、得手とは言い難かろうが、アラブの意気地、見せて欲しい。そりゃ本音は「サンバコ〜ル、再びサラを屠る。」を待望なのだけれども、動向の知れぬ者の幻影にすがるよりは、今を戦い続ける者、その確かな存在に期待する方が精神衛生上よかろうし。
そしてミスターサックスは全日本アラブグランプリへ。チョウヨームサシも出走予定であるからして、これは全国タイトル奪取のチャンスのみならず、リベンジの舞台でもある。さて、どう走る?

というわけで、冒頭に掲げた「次の大舞台の前哨戦」というテーマにおいては、充分意義のある白鷺賞だったろう。これに本番の結果が伴えば、完璧なんだけれども。「タカライデン、金盃激走!」でも許すからさ。さてさて・・・

タカライデン(28KB)
前髪はらりんタカライデン
そんなところで目立つ前に、ちゃんと結果出せよな


2002.11.5 記

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