全日本セイユウ賞 第11回アラブ大賞典観戦報告

 2001.1.30、荒尾、2150m

はじめに
今を遡ること約11ヶ月、昨年の3月5日、佐賀競馬場、全日本セイユウ賞。大井の全日本アラブ大賞典が'96年に廃止になって途絶えて以来の、アラブ古馬全国交流の大舞台。個人的注目は"北関東の怪物"ホマレスターライツ。しかし結果は福山のアキフジクラウンの、それは見事な完勝。アキフジの勝利は祝福しつつも、それは同時に、3着完敗ホマスタの、捲土重来の時を待つ日々の始まり。視野には、この時既に施行内定が出ていた、翌年荒尾でのセイユウ賞が――
時は経って半年後、10月11日、園田競馬場。当初は西日本交流の予定であった、タマツバキ記念山陽杯。古馬全国交流競走に規模が拡大。すなわち、古馬全国頂点決戦Round2。5歳秋、件のホマスタに時は味方せず、優勝は佐賀セイユウ賞2着、地元園田のワシュウジョージ。王者本命エイランボーイは着外惨敗、その実は競走中故障発生でこれを最後に引退、ケイエスヨシゼンも沈み、兵庫政権交代劇。同時に名古屋ブラウンダンディ、岩手メグミダイオー、金沢イセイチフブキなど、各地の強豪が存在をアピール。
そしてこの度、平成12年度の全日本セイユウ賞アラブ大賞典。前述二度の全国交流が生み出した、各馬の誇りや因縁、その他諸々陣営の想い、そして何より、それを見届け続けるファンの想い、それらが幾重にも織りなされつつ、決戦の時、遂に来たれり――

集いし強豪、その名は・・・
この大一番に駒を進めた出走馬は外枠より、以下の通り。()内は所属地、姓齢、騎手。各馬の負担重量は全て56k、定量。
ミスターカミサマ(福山、牡4、渡辺)、ビソウミラクル(佐賀、牡7、鮫島)、ホマレスターライツ(宇都宮、牡5、鈴木)、メグミダイオー(荒尾、牡6、吉井)、ワシュウジョージ(園田、牡5、小牧太)、ブラウンダンディ(名古屋、牡5、安部)、チーチーキング(高知、牡4、北野)、ペルターブレーブ(上山、牡6、冨樫)、ワシュウテイオウ(荒尾、牡8、牧野)、モナクホクト(益田、牡7、荒美)、フツロサンサン(荒尾、牡8、有馬)、以上11頭。
タマツバキ優勝のワシュウジョージが全国交流連覇を狙ってアウェーへ乗り込み。ホマスタはこのレースの後福山移籍が決定しており、現行の陣営で臨む最後の一戦。ブラウンダンディはタマツバキでは騎手が平松テン乗りで惜しい3着、主戦安部騎手でV奪取を狙う。ペルターは佐賀セイユウ賞を目指しての調教中に故障で断念という経緯があり、今回待望の全国交流の舞台。メグミダイオー、現所属は荒尾も、ココロは岩手、まさに、これを勝つべくこの地に移籍、出遅れ敗退タマツバキのリベンジもかかる。昨秋の全日本アラブグランプリの1、3着のカミサマとチーチー、明け4歳で強豪古馬に挑む――以上、ざっと挙げただけでも、これだけの各馬、晴れ舞台に賭ける想い、思惑が推し量られる。とにもかくにも好メンバー、頂点決戦。

一路荒尾へ
というわけで、この場に立ち会うべく、荒尾へ。西明石からまずは姫路に。ここで、今回九州競馬デビューのまりおちゃんと待ち合わせ、7:40発の、ひかりレールスターに乗車。快適なレールスターの、しかしながら車窓の景色はトンネルだらけの旅を楽しむ。途中通過した福山辺りは大雪の模様。「セイユウ賞、もし今日ここであるとしたら、寒くてイヤやな〜」などと語らう。そして10:08に無事博多駅に到着。
博多からは鹿児島本線の快速荒尾行き、10:47発に乗り換え。その電車を待つホームで、我々の乗車した列車の一本後のレールスターにて、10:37に博多着の、環さんと合流。3人とも小型銀箱持参で、怪しい"銀箱トリオ"状態。
定刻に電車は入線、乗車時にはかなり多かったお客さんも、はじめの停車駅の南福岡でドッと下車し、以降は減る一方。最後には車両はほぼ貸し切り状態。車中環さんと、「ちょうどいい薄曇り、このまま行って欲しいねえ。」などと、気になる空模様など語り合いつつ。そして正午前に終点荒尾に到着。
駅から競馬場まではダラダラ歩いて10分くらい、程なく到着。到着時にちょうど第3レースが発走、入場門外の、コースに面した隙間から、レースの模様が少し見える。最後の直線、目の前を先頭で駆け抜けたのは見慣れた勝負服、太さん。3人揃って「お〜!」状態。
入場前に一つ見物が・・・それは入場門の上に掲げられた、所属騎手の写真パネル、その中の、西村栄喜騎手の、デビュー直後の撮影と思しき、丸刈り写真。この実物を目にして、まりおちゃん、感動!?そして、3紙もある予想紙から、適当に『競友』を選択、購入して(荒尾は入場門外に予想紙販売のブースが存在)、いざ入場。

メインレースまで
入場すると、熊本行きの夜行バスで九州入りし、朝から競馬場に到着していたインターロッキーくんが出迎えてくれた。まりおちゃんは、環さんとロッキーくんを伴って、パドックに太幕を装着に。ワシは、ハナキーくんが作成し、全日本アラブグランプリ時と同様競馬場に送った、お手製新聞『アラビアンエース』を受け取るべく事務局へ。福山での受け渡し時よりは、ことのほかすんなり受け取ることが出来、内心ホッ。パドックに向かうと、第4レース出走の馬たちが去ったところで、3人が太幕を装着中。荒尾のパドックは柵が二重なのだが、内側の柵に装着するべく、パドック内に入れてもらっている。まりおちゃんの太幕より前に、太幕とワシュウジョージ幕が既に張り出されている。これは太騎手が中央競馬に登場の日には、いつも張り出されているもの。その幕のオーナーさんが、はるばる来られている。
さて、スタンドへ、という途中、パドック前で、"東海の好漢"おーたさんと、今日はメグミダイオー応援団のメイ後さんに遭遇。『アラビアンエース』をお渡しすると、「ゴール前にみんな集結してるから、取り敢えず行ってくださいよ。」とのオコトバ。
ということで、ゴール前のスタンドに足を運ぶと、北から東から南から西から、まさに全国アラブ党(?)の皆様、大集合。例により、新聞配りのオッサンと化し、ご挨拶がてら『アラビアンエース』をお配りする。集団の真ん中に座っておられる、面識のない方にもお渡しすると、その方が、地元のネットファンで、"首領"Tienさんや、さまにべっぴんさん共々、今回はまさにホストの"荒尾競馬の決め手"さんであったりして。決め手さんには、ミスドの差し入れなど頂いてしまい、感謝でした。
しかしそれにしても濃い集団。「去年の佐賀(セイユウ賞)の時はもっと人数多かったよな。」と"大御所"Okuさんは仰ったが、佐賀より今日の荒尾の方がスタンドが狭いので、その密度は高い。

さて、この日の天気、概ね薄曇りという、写真撮影が非常に楽な、願ってもない状況。コースに対しスタンドが真西向きであるため、晴天時にコースにカメラを向けると、まともに逆光を食らうので。ただし気温は関西とは全く遜色なく、九州だから温暖というのは、よそ者の先入観に過ぎぬということを思い知らされる。事実、From高知のもりも先生は「寒ぅ」を連発。
馬場状態は稍重の発表。砂が黄色く、粒が粗目なため、一見かなり乾いているよう。しかし「手に取ると実に適度に水分を含んでいて、丁度砂浜の波打ち際と同じ。」とおさるさんが仰った通り、まさに稍重であった。それ故に、なかなかに時計の速い馬場らしい。「それにしても前の止まらん馬場やなあ。」とOkuさんも口にする。

※全日本セイユウ賞についてはここからです
そしていよいよセイユウ賞
メインレース前、第8レースのパドック周回が終わったあたりから、相当数の皆さんがセイユウ賞のパドック待ちに。ふささんはこの日初使用のE0S5を携えて。そして8レースの発売が締め切られ、ここでパドックの出走馬掲示盤がセイユウ賞のものに切り替わるのだが、これが大仕事。昨年の九州アラブグランプリの観戦記でも触れたが、荒尾の通常時のフルゲートは10頭、それに合わせて、出走馬掲示盤も10頭分しか欄がない。ところがセイユウ賞は11頭立て。どうするかと思いきや、掲示盤の反転時に、通常の10頭分の掲示盤の下にボードを継ぎ足すというわけ。金具の音も高らかに響くといった塩梅で、無事に作業完了。パドック待ちの皆さんも「お〜!」と、かなり盛り上がる。
こうしてセイユウ賞出走各馬の馬名と馬体重が発表される。掲示盤の馬体重欄には前走比が記入されていないので、皆さん予想紙等を頼りに、各馬のその増減を確認する、のだが・・・一様にザワつく。
まずもってミスターカミサマの460k台(468k)と、ワシュウジョージの430k台(438k)が、個人的にはその数字を見ただけでイヤな感じがしたのだが、それぞれ前走比-10kと-11k。カミサマの460k台は昨夏以来、そしてワシュウジョージは輸送による馬体重の変動が注目点だっただけに、この減り具合は、「やっぱり輸送が・・・」。その他にブラウンダンディが-14kでその変動が最も激しい。
荒尾のパドック、入場口のすぐ裏手が装鞍所。直前まで曳き運動をしているワシュウジョージと、芦毛、すなわちペルターブレーブの姿が隙間からのぞく。入場口横には佇むモナクホクトの姿。

パドック、そして返し馬〜発走まで
8レースも終わった模様、お客さんが続々とパドックを取り囲む。その中、遂に出走各馬が登場。
1番ミスターカミサマ。-10kの馬体重減はその造りには感じられない。しかしながらその歩み、踏み込みが弱くて浅い。ゆったりしているというレベルを通り越して、覇気が感じられない。栗毛の毛艶もイマイチ。正直「う〜ん」と、困ってしまった。しかしながら、地元福山のおさるさんは「今日のカミサマは、私の思い描くアラブの体型の理想型」と後述。
2番ビソウミラクル。九州アラブグランプリ時と同様、浅いブリンカーの付いた赤メンコ着用。毛艶はまずまずだがトモの送りがバッタンバッタンしているような。
3番がホマレスターライツ。前走とちぎアラブ大賞典の時ほどではないが、やや冬毛が出ている。ワシにとって、イデアとしてのホマスタの姿は、景色が映るほどの毛艶、グッと鶴首になって迸る悍性を抑制しつつ、リズムを刻むかのように抜き足差し足でスッチャスッチャと周回、といったものなのだが、それとはかけ離れている。次第に気合いは乗ってきたが、どうも動作が散漫。腹のラインもスッと直線的ではなく、若干ヒ腹が薄くなっているようで、その分腹袋の輪郭が目立つ。これでどうか?広島からはるばるクルマにて一家で来場の大盛りさんは、このホマスタを絶賛。
4番メグミダイオー。いつもながら重厚かつ重心の低い姿。馬体の張りも申し分ない。踏み込みも良い。パドックメンコ着用で気合いを内に秘めてといった感じ。
5番がワシュウジョージ。馬体重-11kがてきめんにその外観に出ている。ヒ腹が完全に上がってしまっていて、心なしかトモのボリュームも失せているよう。おかげでそのトモの送りもぎこちなく見えてしまっている。特に左後肢が流れるようで気に入らない。仕上げて持って来てはいるのだろう、毛艶は良い。一応鶴首気味に気合いは表に出してはいるが、地元園田での周回ほど集中力は感じられない。やはり輸送は・・・
6番ブラウンダンディ。馬体重485kで-14kだが、昨秋まではこれくらいの体重でレースをしていたので、個人的には気にならなかった。パドックの大外を堂々たる周回。馬体の張りも良く、仕上がっていると見た。しかしながらおーたさんは、前走名古屋杯の出来までには至っていないと感じておられたようだ。
7番チーチーキングは馬体重443kの+8k、出走馬中最も馬体重を増やしている。「また輸送で減るのを見越して緩く仕上げて持ってきたのか?」と、もりも先生が口にする。ワシの目からは太め感は感じられず(とはいえ日頃との比較は出来ないが)、なかなか良好に見受けられた。
そして8番がペルターブレーブ。馬体重510kは出走馬中2番目に大きい。実際初めて目にするまりおちゃんも「おっきいいね」との第一印象。気合いがかなり入っている。時折立ち上がろうとするほど。芦毛なので肌艶は何とも言えないが、前・後肢とも、筋肉のボリュームが素晴らしい。環さんは「踏み込み浅くない?」と指摘するが、個人的には好印象。くもぎりまるさんに問うと、ズバリ「今日のペルターはいい!」。ペルター応援団のブルボンさんも、その良好な気合いの入り様を認めておられる。
9番ワシュウテイオウ。黒鹿毛の毛艶は良い。これは案外良好。ワシュウジョージの半兄でシャインマンリーの全兄。事実、スリムでヒ腹とトモが細いフォルムはマンリーと似ているかと。
10番モナクホクト。やや冬毛気味だが全体的な見栄えは悪くはない。格ほどの見劣りはないかと。鞍上荒美騎手と"人馬一体"のパドックメンコ。
11番フツロサンサン。この馬は恐らく元来良く見せるタイプなのだろうが、馬体の仕上がりは絶好に見える。ピカピカの鹿毛の毛艶。馬体重511kは出走馬のうちで最大。踏み込みは若干浅いか。
といった具合で、パドック気配だけなら、ブラウン、ペルター、フツロサンサンあたりが特に目を惹き、準じてメグミ、チーチーか、というところ。
周回にかなりの時間を費やし、ようやく騎乗命令がかかり、全馬停止。この荒尾の、狭くてローカル色たっぷりのパドックに、これだけの数の大物が佇む様は圧巻。
各馬騎手を乗せて本馬場へ。ここでワシ、まずは最後のコンビとなるホマスタ&鈴木騎手に敬意を表し「正さん!」と一声。次いでもう一発、ペルター様の鞍上に向かって「冨樫!」これは応援。それにしてもここで冨樫騎手への声援は多かったのは驚き。

ミスターカミサマ&ペルターブレーブ(40KB)
神様&ペルター様、本馬場に登場
全国交流ならではのツーショット、タマラナイ!

誘導馬を先頭に、各馬本馬場へ姿を現す。ワシュウジョージは表彰台あたりまでそそくさと歩みを進めて、いの一番にキャンターへ。モナクホクトやフツロサンサンが入場したばかりで、ゆったり歩んでいるのを半ば蹴散らし気味に駆けていく。このまま4コーナー手前まで流していって、これでウォームアップは終了、スタンド前には戻ってこないいつものやり方。
他馬は比較的しずしずと登場し、三々五々、返し馬に。
ペルターは上山で見かけた時と同様に、パドックメンコは外して馬場に登場。そして早めに直線に流してきて、軽快にキャンター。メグミダイオーはキャンターも豪快。カミサマはダク気味に1周回ってきて、ゴール板手前からキャンターに移行して駆け出す。ビソウミラクルは緩く1周、やや強めにもう1周。ホマスタはササーッとホームストレッチを中程までやって来て、ここでストップ。あとはダクで4コーナー方向へ引き返していく、という、これも何度も目にしたやり方の返し馬。
ワシュウジョージ(38KB)
ワシュウジョージ、返し馬へ
1番人気なのだ
ホマレスターライツ(32KB)
登場ホマレスターライツ
正さんとのラストコンビ

予想をして馬券を買う。単勝はそれでもワシュウジョージが1番人気。2番人気はブラウン、以下、ホマスタ、カミサマ、メグミ、ペルター、ワシュウテイオウの順。連複もやはりワシュウジョージからが人気。ワシュウを外せばどれも概ね15倍以上となる模様。今日は広域場間場外発売で、兵庫でもこのレースを発売しており、それがワシュウ人気にかなり効いているかと。
ワシ、これだけのメンバーのレースは、絞れずに多くの目を買ってしまうのが常なのだが、今回は思い切って絞る。本線はブラウン−ペルター、これをかなり厚く。他にはペルターとブラウンからそれぞれワシュウジョージへ、プラス、ブラウン−メグミ。カミサマとホマスタは、パドック気配から思い切って消す。しかしながら気になるのはワシュウジョージ。はっきり言って今日は信用を置き難い。
「ユーノすけ氏、ワシュウジョージは佐賀(の時)と一緒だな、走るかどうかわからんわ。」と関万さん。「そうだね、積極的に買いたくないけどここ連単ないからな、2着に残られるっていうのがねえ。」と栃さん。このお二方をはじめとする、こうした見方が今日のワシュウジョージに関しては正解だろう。買う、買わぬはノるかソるかの運、そして好み。走れば結果オーライ。しかし地力は侮りがたいだけに難しくもある。因みにこの日は仕事で惜しくも来場が叶わなかった、同志ディープさん、一昨日に栃さんと帯広(!)で行き会って、買い目を託したとのこと。サスガ!想いと馬券勝負の目は、ちゃんと荒尾に来ている訳ね。
レース発走間近。空腹と緊張(観客のワシが緊張せずともよいのだが)で、まりおちゃんでもあるまいに、胃が痛くなってきた。そしていよいよレース発走。yamachanさんは、この日デビューの新兵器、白のサンニッパをゴール板前で構えて待つ。

そして決戦の時
荒尾二一五の発走地点は2コーナー、ここから1周と3/4。ファンファーレが鳴り、ゲートオープン。
各馬一斉にスタート!っと、前走に引き続き、またもやホマスタが発馬でアオり、場内が騒然とする。3馬身くらいはこれで遅れをとってしまう。が、何とか、すかさず集団の後方に取り付いていく。
それはさておいて、好発からすんなりハナを奪ったのは鮫ちゃん鞍上ビソウミラクル、これに絡んでいく馬もおらず、そのまま単騎逃げに持ち込む。ミラクルの2番手にはメグミダイオーが労せずスッと付け、絶好の単騎2番手マークに。3番手には逃げるかとも思われたワシュウテイオウが単走で。そしてこの後ろが好位集団。ワシュウジョージがそのフロントを取り、これを意識しつつブラウンダンディやモナクホクトがつける。ミスターカミサマはワシュウの直後イン、前からは5、6番手という、思いの外の前付け。
隊列は1周目の正面スタンド前に。先頭ビソウミラクル、逃げ専門の馬ではないのでガンガンとは行かず、「隊列の先頭なだけさ」という感じの緩い逃げ、見た目にもペースはスロー。この直後2番手、がっちりマークでメグミダイオー、離れず3番手にワシュウテイオウ。その2馬身くらい後ろにワシュウジョージが好位勢の先頭位置で。ワシュウジョージの真後ろにブラウンダンディ。ワシュウジョージの直後インがミスターカミサマ、外がモナクホクト。そしてこの好位勢を直前内に見つつ、ペルターブレーブが楽に追走。ここからやや離れて、出遅れたホマレスターライツが、そしてさらに後方にチーチーキング、殿が差し馬フツロサンサン。

1周目(33KB)
1周目正面スタンド前
2番手青帽メグミ、黄帽ワシュウジョージ、外芦毛橙帽ペルター、後方赤帽ホマスタ

各馬1コーナーから2コーナーへ。この中間、ワシュウジョージが意識的に前に寄せ始める。地力勝負、来るなら来い、といった感じに見受けられたのだが・・・
そして向こう流しへ。先頭ミラクルと2番手メグミは緩い流れながらも後方との差はキープして進み、ワシュウジョージは二角手前での見た目ほどには一気に上昇しない。
が、向こう正面も半ばを過ぎると、徐々にレースが動き出した感。ワシュウジョージに連れて、好位勢のペースが上がってくる。ここでペルター鞍上冨樫騎手のアクションが大きくなる、ところが当のペルターの反応はそのアクションの割にはどうも鈍い。少ぉし好位勢との間隔が開く。「ああ足りないのかな?ペルター様・・・」ちょっと心配になるワシ。だが、それも束の間、冨樫に促されて好位の外目に取り付いていく。どうやらスピードが乗ってきて一安心。
この頃先頭は3コーナーを通過。そして三分三厘、ここまで2番手ガッチリだったメグミダイオーが、満を持して前のビソウミラクルを交わして先頭に。その余勢を駆って、スパート気味に一気に4コーナーを回ってくる。
これを承けて、好位勢もスパート。真ん中にワシュウジョージ、インにカミサマ、ジョージの外にブラウン、そしてさらにその外へペルターが来る。ここで思わずワシ「よっしゃ冨樫死ぬ気で持ってこい!」と一声。

最後の直線、好位勢の争い(34KB)
最後の直線、好位勢の争い
好位より抜けるカミサマ、苦戦のジョージ(緑メンコ)とブラウン(赤メンコ)外から競り落とすペルター、大外ホマスタの追い込み

いよいよ最後の直線。先頭のメグミダイオー、早め抜け出しのリードを死守せんと、ゴール目指して一目散。逃げる逃げる。「捕まるものか!」といわんばかりの力走。
その後ろは好位勢がワサッと内外広がって、まさに意地の叩き合い。これを内からいち早くカミサマが抜け出す。大本命ワシュウジョージの脚が明らかに鈍い。外からブラウンの巨体にタイトに併せられて苦戦、伸びない。ブラウンのさらに外、馬体を併せたペルターブレーブ、馬体をグンと沈めて首を伸ばす追い込みモード全開で、隣のブラウンを競り落とし、さらに前へ。そしてそして馬場の大外、ホマスタが一気に出現、凄い脚で追い込んでくる。
しかしながら最後はメグミダイオー、結果として1/2馬身差までは詰め寄られたものの、粘り込んでの盤石V。2着はミスターカミサマがかなりメグミを追い詰めての入線。3着はペルターブレーブ、これも前から1/2馬身差。4着にはホマレスターライツが突っ込んだ。これも1/2馬身差。5着はホマスタにも抜かれてブラウンダンディ、クビ差。ワシュウジョージは結局6着敗退、ブラウンとはクビ差。
以下、7着逃げたビソウミラクルがインベタで。8着三分三厘までは好位を死守したモナクホクト、9着完全不発のチーチーキング、10着何となく走ったか?のワシュウテイオウ、最下位はフツロサンサン殿ママ、止むなし。
メグミダイオー、ゴール前(36KB)
メグミダイオー、ゴール直前
アラブ古馬最強のゴールへ
メグミダイオー、ウィニングラン(35KB)
メグミダイオー、ウィニングラン
メグミって口元のヒゲが長い・・・

あまりに見事なメグミのレース振りに感心していると、その勝者が単騎、スタンド前にウィニングランで戻ってくる。途中ファンの声援に応えて、鞍上吉井騎手、鞭をスタンドに強引に投げ入れる。地元のお客さん、そしてメグミファンのお客さんから暖かい声援が送られる。お客さんの入りが大したことがないので、その規模はこじんまりしたものだが、なかなかにいい風景、サスガ全国交流、といったところである。

ここで総括など(長いな・・・)
勝者のメグミダイオー、己の長所を最大限に生かした、完璧なレースだったのでは。競合する相手がいない2番手付け、道中スローから早め抜け出し押し切りと、事が巧く運んだ感もあるが、ズバリ完勝。強い。それにしてもこの馬、大一番に強いな。前回のタマツバキでの不完全燃焼の鬱憤は晴れただろうか。「いやあ、いいレースだったねえ。メグミダイオーはさ、若い頃からずっと買っててね。前に行くんだけれど、たいがいライジングトウザイに後ろからやられてて、相性良くなかったんだけれども、ここで勝ってくれて、馬券も取れたし、彼とは完全に和解って感じだよ。」と、栃さんが嬉しそうに語ってくれる。メイ後さんの喜ぶ姿も印象的。
2着のミスターカミサマ、後方待機ではなく好位前方からの差しで一定の結果を出したということで、また新たな能力とセンスを見せつけられた感。終始最内の位置取りで、勝負所で外から他馬が殺到という局面でも、全く怯まない、馬群に強いところも素晴らしい。2着入線で、思わずおさるさんに握手を求めてしまったが、勝ちに行っていたわけで、これは失礼なことをしてしまった。レース後Okuさんが取った、鞍上渡辺騎手のコメントによると、来月佐賀(西日本アラブ大賞典)での巻き返しに意欲満々だとのこと。明け4歳とはいえ、サスガ大賞典馬。しかし個人的には、この馬のパドック気配、ますます分からなくなってきた。お初の銀杯時を除いて、「これはイケる!」と一も二もなく判断できた試しがない。
ペルター様は3着。途中ちょっとドキドキしたが、豪脚は披露してくれたし、横のブラウン、ワシュウジョージとの競り合いには勝て、馬体が合った相手には負けない、という特長の一端は充分見ることができたかと。何より、上山のレベル云々以前に、この馬自身が、全国の強豪に混じっても勝ち負け出来るということが証明された嬉しさがある。という感想の一方で、「いや〜来たねえペルター、もう少し走ったら届いたかもしれないねえ」という栃さんのオコトバの旨と同様、「あそこまで走れるんだったら、せっかくだから勝って欲しかった!」という惜しい気持ちもいっぱい。次回の全国交流、楽しみにしつつ・・・
ホマスタは4着。あの出遅れが・・・入線直後、宇田山さんが「ホマスタよく4着に追い込んできたな」と、確か漏らされていたが、最後の脚は凄いものだった。「出遅れなければ」は、答えの出ない問い。これで"宇都宮のホマスタ"は終演。以後は新天地福山で。「しかしなああの出遅れが癖になってるとすると、福山じゃあ致命的だぞぉ」という、おさるさんの危惧、これも重い。
5着のブラウンダンディ。てっきりワシュウジョージの前々で競馬をして、早め抜け出し圧倒という競馬をすると踏んでいたのだが、結果はワシュウジョージを見ての競馬。まあこのあたりは当事者のレース判断が全てなので、外野が四の五の言う領域のことではないが・・・それにしても不完全燃焼の感が強い。おーたさんは「一応ワシュウジョージマークで進めていたみたいだけれど、道中抑えて仕掛け所で後手踏んでって感じで、とにかく後手後手に回ってしまったみたいです。」と振り返ってくださったが、ワシも一応本命にした手前、ちょっと悔しい。
ワシュウジョージは輸送不安がてきめんに出たとしか言いようのない6着敗退。掲示板を外したのもともかく、定量戦で、後ろの馬にズパズパ抜かれたのは初めてのことかと、まさに屈辱的敗戦だろう。勝負所からほとんど伸びていないのでないか。これほど地元での走りと出張先でのそれとの落差が激しいと、最強馬としてはキツい。「ワシュウジョージは園田以外じゃ走らせちゃ駄目だな。」と、関万さんが漏らしたが、全く・・・余談だが、道中の位置取りに関して、大一番でワシュウが前々の競馬をする時は、どうも結果がよろしくないような。きっと太さんが馬の状態を把握して、リスクを少なくしてソコソコ結果をまとめようと判断するのじゃなかろうか。こう思ったところで、レース前にそれを察知しなければ馬券には無意味だが・・・
ビソウミラクルが逃げて、ワシュウテイオウが逃げずとは。ミラクルは交わされた後も、ムチャムチャ沈没はしない7着というあたり、まあ佐賀の有力馬の一角には位置しているということか。
8着モナクホクトはレースにはよく絡んだと思う。「4コーナーまで夢を見た」というふささんのコメントが効いている。
チーチーキングの不発ブービーは意外。もりも先生、レース後相当めげておられた。今回は主戦倉兼騎手から、高知リーディングの北野騎手に乗り替わりで参陣。乗り替わりの理由は「"鶴"の一声(ネ!)」だそうだが。「パドックで真弘(北野)乗せたとき暴れたり、返し馬もいつもの感じじゃなかったり・・・やっぱりチーチー、倉兼の馬だなあ・・・」ともりも先生がレース後無念そうに振り返ってくださった。
殿フツロサンサンは、まあ差しプロパーだけに、相手が強すぎると後方ママになってしまうのは致し方ないか。現荒尾所属だが昨年途中までは中津の王者。振り返れば昨年の佐賀セイユウ賞はノミネートされながらも回避だったわけで、中津の薫り(おまけに鞍上有馬)を全国交流に漂わすことが出来、意義はあったか(謎)。

レース終わって、そして感激の出来事
最終レースを前に、表彰台では表彰式が執り行われる。さすが全国交流、式が長い。表彰式はともかく、最後に見たいのは口取り撮影。しつこく待つが、これはTienさんやOkuさんが常々不満として口にするように、荒尾では馬を絶対お客さんの前には出さず、裏手で済ませてしまうのが常。はっきり言って望み薄なのだが・・・関係者エリアに入っていたOkuさんが、取り敢えず「最終レース後にやるってよ。」と伝えてくれたので、その言葉を頼りに、皆さんそれまで待つ。環さんは帰りの電車の時間が迫っているので、残念ながら先に競馬場を後にされる。そして最終レースも終わり、場内には濃いファンだけが残ることに。
誰が誰に何を聞いたか全くもって不明なのだが、「見せるから表彰台への通路で待ってて。」ということになり、嘘かまことか、一同ロッキーちゃんを先頭に、ゴール前の馬場の外ラチに並行した、関係者エリアと表彰台を結ぶ通路に入っていく。ここで待っていると、メグミの馬主さんと思しきお方がやって来て、「馬場に出して皆さんに見ていただけるよう話してきます。」と言い残して一旦立ち去られる。待つこと暫し、ホントにメグミダイオー以下、関係者御一行様が、馬場に登場。そして口取り撮影。
それが一段落したとき、馬主さんが我々に声を掛ける。曰く、「それじゃあ馬をあまり驚かせないように・・・」うんうん写真に収めろってことね、と了解して聞いていたところ、「こちらにいらして綱持って口取りに参加してください。」何と!皆さんはじめは一様にびっくりしつつも、続々と馬場に入り、綱を持たせてもらって口取りに参加。凄い光景となる。「皆さんに応援していただきまして、こんな大きなレースに勝つことが出来ました。」と、感謝しなければならぬのはこちらの方であるのだが、丁寧に御礼の言葉を仰られる馬主さん、素晴らしかったですよ。この光景を後ろで見ていたOkuさん「なかなかやるやないか、荒尾さん」と一言。ふるってました。
感動の体験を終え、皆さん退場。スタンド内は明かりも落ち、暗くなっている。おまけにちょうど警備員さんが任務終了の点呼などしていたりする。感謝ついでに(?)競馬場の方の許可を頂き、お役御免になった、場内に張り出されているセイユウ賞のポスターを外して土産にするのであった。

帰路
帰路は自然と解散に。ワシは17:22の電車で大牟田まで、ここから17:30停車の特急つばめの自由席、そのデッキにおさまり一路博多へ。博多駅でOkuさんやふささんらとはお別れ。ワシとまりおちゃんは、福山まで帰るおさるさんと一緒に18:58発のレールスターに乗車。3人で自由席の3列シートを無事確保。おさるさん、風邪をこじらしておられて、キツそうであるにもかかわらず、今日はお疲れ様でした。おさるさんは福山で下車、残った二人は姫路まで。初の九州遠征、ちょっと疲れたか?まりおっち。しかしよくよく考えると、貴女もアラブを追っかけて(まあ西村栄喜を追っかけて、ってのもあるが)、九州まで行っちゃうのだから、凄いよな、人生ちょっと変わってきたんとちゃう?(笑)
姫路駅でまりおちゃんとはお別れ。ワシは新快速で西明石まで。帰宅は10時頃。荒尾日帰り、余裕だな。レールスターは偉い。

おわりに
古馬の全国交流、アラブ党にはやっぱりたまらない。来年度も、恐らくどこぞの競馬場で、タマツバキ記念が古馬全国交流として施行されるだろう。今回のメンバーも含め、全国の強豪、スター達がまたまた集結して、激闘を繰り広げてくれることだろう。その日その場そのレースに立ち会うことを楽しみにしつつ・・・

――そしてアラブ現場主義は続く・・・(大丈夫か?)


追記:最後に全国行脚系の先輩、栃さんがスピハナ掲示板に寄せて下さった、東日本に縁のある出走馬を中心とした、セイユウ賞の総括書き込みを転載させていただきます。名文です。噛みしめつつ・・・
東日本トリオがみんな掲示板に載ったというのはある意味驚きで、ある意味当然かなってそんな思いのしたレースでした。

移籍という英断を下してこのタイトルを獲りにきたメグミダイオー。
一ヶ月前入厩をして雪国のハンデと去年の雪辱をしにきたペルター。
栃木代表として最後の意地を見せにきたホマレスターライツ。
それぞれが十分にらしさをみせてくれてその中、大英断を下した岩手出身のニクイ奴が、かつての東の王国の誇りを存分に見せてくれたのでした。思い起こせば北日本アラブの時から常にワタシと相性が悪く嫌いな存在でしたが、ライジングが脱落したあとは岩手の王者として素晴らしい戦歴を誇ってきたわけで、サラに挑戦するに至って素直にこの岩手の雄を応援できるようになったものです。それだけに感慨も一塩。今後は九州の雄としてやっていく事になるやもしれませんが、ここに至る経緯を忘れることはないでしょう。これからの更なる活躍を期待したいです。

未来があるのはカミサマでしょうねえ。地元の大賞典も勝ちきった4歳チャンプの実力を存分に見せてくれました。他地区から怒涛のように移籍馬が押し寄せてきても、ここはどこのシマか^^多いに見せつけてくれることだと思います。そして同期のあのライバルとの対決も楽しみです。新たなメッカへは足繁く通う必要に迫られますね。

そして東の孤高の砦となった上山からついに全国区でベールを脱いだペルター様^^。一瞬やったかと思わせる脚で外からきましたねえ。いつもならきっちり届かせるその豪脚の片鱗を見せてくれました。上山の上位勢がハイレベルという事の証明にもなった訳で彼の遠征の意味は本当に大きかったと思います。

ホマレスターライツ・・・。彼には多言は無用かと思います。4歳の時に見せてくれたカリスマ的な印象は薄れたかもしれませんが、その輝きはまだ失われていないというレースぶりを常に見せてくれています。出遅れ癖さえ直ってくれれば・・・。彼の地での活躍をイーシーと共に願わずにはいられません。

いろいろな意味で印象に残るいいレースでした。今度はどこでまた全日本戦が見れるでしょうか。西日本勢の巻き返しも必至かとも思われますが、イセイチのけれんみのない逃げもその中で見てみたい気がしています。また会いましょう。>ALL

2001.2.6 記

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