第16回福姫交流観戦報告
2001.3.21、姫路、1500m 但し重賞ではなく指定(特別)競走
◆今年の福姫交流、その概況
春先の姫路開催名物レース、福姫交流。福山と兵庫所属の3歳補助馬がその実力を競う。これまでは姫路春開催の冒頭に行われ、開催後半の菜の花特別(一昨年までの、補助馬重賞だった時代のフクパーク記念に相当するレース)が、兵庫3歳補助馬路線の終着であったところ、今年はこの両者の日程が入れ替わった。福山では2月25、26日に3歳重賞、キングカップとクイーンカップがあり、従来の日程であればこれと被って福姫には出走不可能であったのだが、そこはさすがに調整したのか、理想的なローテーションで参戦できることとなった。
非補助馬からは能力が一段劣りがちな補助馬であり、補助馬限定競走というのはいかにも補助馬(の馬主)優遇の色合いが強い。また、春以降非補助馬と混じると埋没してしまいサヨウナラ状態であったりして、この福姫交流やかつてのフクパーク記念にしても、後々の展開につながらない場合が多かった。
しかしながら今年は状況はちょっと違う。まずは福山。ダービーから他地区転入馬を締め出し、鎖国政策を展開する模様であるとは、キングカップの観戦記でも触れたが、その鎖国ダービーの有力馬と目されている面々が、実はいずれも補助馬である。つまりはフジナミスペシャル、ユノワンサイドにギャラクシア。殊にフジナミスペシャルはこのところ三場交流にキングカップと、重賞を連取、同時にライバルのユノワンサイドを抑えており、現状では実質福山3歳筆頭。福山ダービーの勝ち馬には楠賞の出走資格が与えられるのが通例なので、福姫に参戦した馬の中から楠賞福山代表が出る確率が非常に高いというわけ。
そして兵庫。1月の三場交流には兵庫代表として、未勝利のとんでもない馬を出して、補助馬のレベルが疑われたが、実は実力上位の2頭のレベルは例年以上かと。すなわちホクセツジョージとボールドヒリュウ。ボールドヒリュウは、兵庫3歳2番手と目されるソレユケイチマツと勝ちつ勝たれつの争いをしており、これと地力は遜色ない状況。そしてホクセツジョージ。デビューは昨年11月下旬と遅かったものの、ここまで無傷の5連勝。この両者、前走が補助馬限定の菜の花特別。直接対決で一騎打ちの状況、先に抜け出し粘るボールドヒリュウにホクセツジョージが三角坂下から並びかけ、馬体を併せて競り落としての勝利。着差は半馬身ながら可愛がった感もあり、これでホクセツが兵庫補助馬断然のNo.1の評価を得る。現在兵庫3歳戦線には、ダントツの筆頭としてクールテツオーが鎮座しているわけだが、その牙城を崩さんとする2番手集団の一角、その有力どころに補助馬の2頭がしっかり食い込めている状況である。
クールテツオーを追いかけたい兵庫有力二騎、これに対する福山最上位勢。ということで、恐らく例年に増してハイレベル。さらに両地区のレベル差の一端がこの一戦に現れるわけであり、つまりはズバリ、
「今年の福姫は面白い!」そして、
「福姫から楠賞が見える」わけ。重賞ではなく指定(兵庫のレース体系には準重賞という概念がないが、敢えて言えばそれに当たる)競走だが、見どころ充分なのである。
◆"ひめけい"へ〜メインレースまで
先に概況を記して長くなってしまったが、こういった状況の今年の福姫交流、観たいということで午後から姫路へ。2時過ぎに到着。場内でちーちゃんまりおちゃんのひめけい現場コンビ、そして、福山現地駐在今日は姫路出張のおさるさん、アラブ応援家3号馬さんと合流。まりちーコンビは残念にもメイン前に帰るとのこと。天気は晴れ。ここ数日で一気に春めき、非常に暖かい。馬場状態は良でタイムはかかっている模様。砂がちゃんと補充されて深めということか。
8レースのC2戦に、カオリビジンの二番仔の4歳牝馬カオリノヒメが出走。これは日浦ちゃんが絡めばお約束ネタなのだが、おさるさんや3号馬さんはノーマークだったようで、ワシがそれを言うと「ほほう!」状態、そしてカオリビジンの現役時代に話題が及ぶ。結局カオリノヒメは直線一旦先頭に抜け出しながらも2着。
9レースのB2特別には'98年ジュニアカップ(ミスターオリビエの勝った時)2着のノースガバナーが登場。「この馬モナクダイキチの弟(父はエルソプラノからマルセンガバナー変わっている)ですよ。」と、おさるさんに福山向けのネタを振ったりする。
◆そして福姫交流
さて、メインレースの福姫交流。出走馬は内枠より以下の通り。フルゲート12頭。
マルフジキング(54k、岡田、福山)、ジーマ(54k、渡辺、福山)、ハリマタクヤ(54k、下原)、オギノビクトリー(54k、田中)、ギャラクシア(54k、岡崎、福山)、フセノシャーク(54k、岩田)、カネヤマダイリン(53k、尾林)、フジナミスペシャル(55k、嬉、福山)、ホクセツジョージ(54k、小林)、ホワイトウェーブ(54k、鋤田、福山)、ボールドヒリュウ(54k、赤木)、ユノワンサイド(54k、石井、福山)
パドックに出走馬が登場。今回は出走馬の実力の上下が激しすぎるので、有力馬、注目馬のみに言及。アウェーの福山勢から。
8番フジナミスペシャルは前走と変わらず良好。黒鹿毛の毛艶も良い。馬体重498kは-1kのみの下げ幅で問題なかろう。馬体重や体高の高さほど厚みやボリュームを感じさせない体型は元々かと。ぱっと見の雰囲気だけでも格上と感じさせる。おさるさんに出来を問うと「う〜んでもなあトモの歩様とか堅いような気もするけどなあ・・・」。
フジナミのライバル、12番ユノワンサイドは馬体重471kで何と-16k。『キンキ』紙上では「仕上がり絶好で反撃」とあるも、完全に輸送で減った模様。元来がどっしりした体型だが気にすると確かにケツの張りなど落ちているようにも。毎回二人曳きで気合いを表に出す周回ではあるが、今日はちょっとチャカチャカし過ぎ、散漫か。
牝馬ギャラクシアはなかなか落ち着いていて伸びやかに周回。ややトモの送りが堅いような気もするが、全体的には良好か。地味な鹿毛で、元々あまり冴える毛色ではないのだが。
ジーマは出世は遅れているもののちょっと不気味な存在。カミサマやホマスタを擁する那俄性哲也厩舎所属。二人曳きでちょっと焦れ込みがきつい。
続いて兵庫勢。まずはホクセツジョージ。馬体重-5kの501kだか、数字以上に雄大な馬体。馬体の張りはまあまあ、つまりはもっと良化の余地を感じさせるもの。頸で小さくリズムを刻みながらの周回。歩様も力強い。メンコも手綱も黄色で統一。黄色の馬装、雄大な栗毛の偉丈夫といえば、真っ先に思い浮かぶのはタービュレンスだが、サスガにタービュレンスの方が二枚目。馬券的にはこの馬が断然の一番人気に推されている。
そしてボールドヒリュウ。昨年の楠賞5着ボールドヤングの半弟。父がスマノヒットからオカノヒリュウに変わった。兄と同様森澤厩舎所属。実はワシの注目馬、そして実物とは今回がお初。馬体重が463kで-9kというのがやや不安だが、綺麗で皮膚の薄そうな栗毛の馬体。適度な気合い乗り。均整のとれた体型。父のオカノヒリュウは園田往年の大スターで、500k近い鹿毛の雄大な馬体は、かつて青木娃耶子さんをして「いま一番格好いいと思うのは園田のオカノヒリュウ!」と言わしめたほど。今年の明け3歳が産駒の初年度。父の雄大さにはまだ及ばぬが、プロポーションの良さは血の成せる業か(眉唾)。
各馬本馬場に入場。フジナミスペシャルは脱糞しながらの登場で、何が気に入らぬのか口向きが悪い。ボールドヒリュウはや遅れて、外ラチ沿いに厩務員さんに曳かれて登場。返し馬に移行するとき、これも口向きが一定せず、赤木騎手は両手綱を抑えつけている。この赤木騎手の仕草、ケーズ兄ぃ理論からすれば好ましからざる要因。ホクセツジョージは4コーナーあたりからキャンター、伸びやかに。ユノワンサイドは1周軽く流してキャンターで再度ゴール板前を通過。
ホクセツジョージ、返し馬
断然の1番人気、栗毛の巨体
ということで馬券を買う。ホクセツジョージからが断然人気なので、これを外すと軒並み高配当。ということで今回ワシの馬券の中心はフジナミスペシャル。馬単でホクセツジョージに、これが本線、そして馬連でも。馬連ではボールドヒリュウとの組を厚く。あとは押さえでフジナミ−ワンサイドの馬単裏表や、ボールドヒリュウ絡みを数点。ボールドヒリュウは応援したいが、対ホクセツジョージにおいて劣勢気味なのと、本馬場入場時の仕草が気になり馬券の中心からは外す。
「うへ〜!間に合ったぞ。」と、ここでOku師匠が登場。前日ローゼンホーマ記念を観戦の後、四国に渡り、うどん巡礼。とって返しての福姫観戦とのこと。タフです!「駐車場代千円取られてもうた。」「小林(ホクセツ騎乗)って誰?」「クインラマが9連勝した時の騎手、10連勝目の姫山で太に乗り替わられたけど。」「その程度のレベルの騎手か、若いん?」「いや充分中堅」などと語らう。
レース発走、距離1500m。スタートは4コーナー。ゲート入りにかなり時間がかかり(後でビデオで確認すると、この張本人がホクセツジョージ)ようやくのことでレーススタート。
内からポンと飛び出したのが岡崎ギャラクシア、気合いをつけられハナへ。嬉フジナミスペシャルも好発で難なく前へ。赤木ボールドヒリュウの出が良い。内のフジナミスペシャルに馬体を併せていく。大外石井ユノワンサイドも出はまずまず。しかし隣のボールドの出が鋭く、これと競って先行するのは避けた模様。一旦下げてフジナミ−ボールドの直後に回り込む。ホクセツジョージは戦前の見立て通りあまり出は良くなく、じっくり中団からの模様。
という感じで最初の正面スタンド前、先頭内ギャラクシア、差がなく外2番手フジナミスペシャル折り合って、この外ビッチリ併走ボールドヒリュウは口を開けて掛かり気味。赤木は控えたいようだが馬が行きたがっている模様。この直後内に渡辺ジーマと外ユノワンサイド。このあたりまでが先団で、ホクセツジョージはこれを前に見る中団に位置取る。
1周目、正面スタンド前
2番手内フジナミスペシャル、外にボールドヒリュウ
1、2コーナーから向こう流しへ。ギャラクシアが一旦単騎逃げになりフジナミも単騎2番手、ボールドはやや折り合ったかフジナミとの併走から一度下げる。ホクセツジョージは外のホワイトウェーブ共々張り気味に一角コーナリング。ホクセツのインに岩田フセノシャークが併せ、ホクセツはちょっと窮屈なポジションか。
向こう流しも半ばを過ぎて三角坂下、フジナミスペシャルが先頭に、外から連れてボールドヒリュウ。ギャラクシアはインで後退気味。そしてこの時中団からは、押されてホクセツジョージが進出開始、当面の目標は直前のユノワンサイドといったところ。
そして三分三厘から4コーナー。先頭フジナミ、嬉の右鞭が入る。外に併せたボールド、手応え充分。さらにその外直後にユノワンサイドが、さらにその直後外に、ようやくホクセツジョージが現れる。勝負は最後の直線へ。
抜け出したのはフジナミスペシャルとボールドヒリュウ。馬体を併せての一騎打ちに。後続から他馬は迫らず、残り100mまでは接戦、両者首と胴を伸ばしての競り合い。ここからボールドヒリュウがジリッとクビから半馬身前に出る。しかしフジナミも再度差し返し気味に差を詰める。結局ボールドヒリュウがクビ差フジナミを下しての優勝。勝ちタイム1分38秒6は同日同距離のB2戦2鞍よりも1秒半以上速く、馬場を考えれば水準以上の好タイムか。
ゴール前、接戦を制したのはボールドヒリュウ
羽ばたけ!三代目飛龍
以下、3着はユノワンサイド、フジナミから遅れること3馬身半。ホクセツジョージはこれから3馬身遅れた4着。前のワンサイドに接近したのも4コーナーまでで、最後の直線は他馬以上には伸びていない、全くの不発。5着はジーマが最後内のギャラクシアをアタマ差差して、これがホクセツとはクビ差。6着ギャラクシア。
注目馬が勝って、ちょっと嬉しいワシ、対照的に、福山の期待を一身に背負った馬が負けて凹むおさるさん。「嬉騎手結局最後競り負けるもんなあ・・・何だかなあ・・・これでまた楠賞は福山5着の指定席確定かなあ・・・ユノワンサイドはやっぱりフジナミに先着できないし・・・」
下馬所に各馬が引き揚げてくる。それをOku師と一緒に撮影。「勝った馬って牝馬か?」と師匠。「いやいや牡馬。」「ふーん、まあ距離伸びて期待持てそうやな。」確かに馬体に幅がなく、スリムな印象ではある。
表彰式に向かう時、森澤調教師が噛みしめるように微笑みつつ「ここで勝てるとは儲けもの、してやったり」とばかりに手を叩いたのが印象的。「おめでとうございます。期待してます。」と声を掛けると、苦笑い気味に応えられたのも森澤調教師らしい?
せっかくの表彰式なのだが、我々以外に見る客もなく、寂しい限り。
ということで、勝ったのはボールドヒリュウ。個人的には、「この馬、○×(恥ずかしいので伏せ字)勝つと思ってますんで」と現場で口にするほどの期待馬でありまして・・・ちょっとまだまだ折り合いに苦心するところもあるようだが、先行好位抜け出しの脚質を着実に会得中といったところ。行きたいときに行ける素軽さが最大の武器か。これから先、クールテッちゃんの牙城にどれだけ迫れるか?スマノダイドウから、サチエノヒリユウ、オカノヒリュウと続く、園田縁(ゆかり)のご当地血統。そしてこのボールドで、ズバリ"三代目飛龍"!こういう面からも期待が大きい次第。
2着のフジナミスペシャルは惜しい負けではあると思うが、「やはり負けは負け」というところか。残念ながら福山の既存勢力は、クールテツオーを差し置いて楠賞をブッコ抜けるレベルにはまだ至らないということが明らかになってしまった感。「まあそれもある程度予想されたことだが」という声もあったりして、それから考えれば健闘とも思われる。最後に負けはしたが、一騎打ち叩き合いの厳しいレースを経験できたことは、今後のプラスになろうかと。取り敢えずは無事に福山ダービーを。地力アップにまだまだ時間はある。
ユノワンサイドはやっぱりフジナミに勝てない3着。輸送に伴う馬体重減も影響したか。妙にレース運びに自在性があるのだが、その分見た目ほどのパワーがないのだなあ。やはり勝ち方を忘れているということか?「煮え切らぬ馬」との評価が確立されてきたような。
ホクセツジョージは全く期待はずれ。ゲートが悪いのはいつものこととして、向こう流しではそれなりに上昇していたのが、終い全く伸びていない。後ろから行く馬が不発だと情けない結果になるという、まさにそれ。敗因がどこにあるのかは不明なのが、フクパークを盛り上げるためにも、巻き返してもらわねば困る1頭。逆にここで負けて、フクパークでは馬券的に美味しくなったやも。まあ今回は、菜の花特別の勝利が見込まれ過ぎて、「ボールドヒリュウとの勝負付けは終わった」という雰囲気が強すぎはしたが、それほど簡単なもんじゃないということか。
5着のジーマは格に比しては充分走ったなあという感想。道中先団のいいところを死守して、最後止まったギャラクシアに先着。この馬が掲示板確保したのを見て「こういう馬が福山ダービーで案外ポンと来るねんで」とはOku師。
ホクセツジョージが断然人気だったため、ボールド→フジナミの馬単で、39.9倍、この馬連でも18.6倍。単勝3番人気と2番人気の組み合わせで、である。ワシも的中で、ゴッチャンでっす。
最終レースが終わり、競馬終了。Okuさんは付近の渋滞が解消してから帰路に、とのこと。おさるさんと3号馬さんとワシはファンバスで姫路駅前まで。ちょっと茶をシバいてお別れ。
ということで、なかなかに意義ある福姫交流だったかな。つまりは、
「福姫から楠賞が、ちょっと見えた?」
2001.3.25 記
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