第25回九州アラブ王冠賞観戦報告

 2001.5.6、佐賀、2000m

名古屋から佐賀へ
黄金週間後半のアラブ重賞巡り、三連闘の締めは、佐賀競馬場の九州アラブ王冠賞。前日まで名古屋の実家に滞在していたため、九州へは空路にて。JASの特便割特料金で購入したので、13,000円で名古屋から博多まで移動できる。飛行機ははっきり言って好きではないのだが、この安さと速さ、利用せぬ手はない。というわけで、実父に早朝名古屋空港までクルマで送ってもらい、ここから7時40分発の便に搭乗。あっという間に眼下には関門海峡から北九州の海岸線が。定刻より15分早い、8時40分頃には福岡空港に。それにしても三十路をとうに越して、道楽のため親の手を煩わす、ワシはまさに不肖の息子。
事前の天気予報はあまり芳しくないものだったが、到着した博多の天気は曇り。しかし相当暑く、それに何より湿気がかなり高い。
実に順調に博多入りしたのだが、ここから競馬場への道中がかなりモタつき、競馬場に到着したのは結局11時半頃。

メインレースまで
コインロッカー(使用後コインは戻ります)に荷物を預け、まずは何はともあれといった感じで、ラーメンを食いに食堂へ。替え玉までしっかりこなし、堪能。しかし今回気付いたのだが、ワシ、豚骨スープの匂いは気にならないが(実際のところ、九州で食べるコンサバな豚骨ラーメンのスープは、身構えるほどギトギトプンプンではなく、どちらかというと鳥ガラの白湯スープのそれに近いと思うのだが)、食堂の卓にドンと置かれている、お約束の高菜漬けの臭いは苦手やも。

とにかく暑いので、スタンド内であまり動かず佇んでいると、目の前にヌッと現れる御仁が。そして顔を覗き込んで開口一番、「何でこんなとこにいはりますのん?」と驚きの声をあげられる。これが京都人さん。氏がこの日佐賀に来られるとは確認済みだったので、見つけていただけてワシとしてはラッキー。「も〜まんまと新倉敷駅でのドッキリのリベンジ食ろてまいましたわ(その顛末はこちら)。」と続けられる京都人センセ。「いやそんなセンセ人聞きの悪い、事前に6日は佐賀ってスピハナ掲示板に書き込んでたんですよぉ。」とやり返すワシ。ま、ともあれ京都人さんとはちょっと久々、再会を喜び合って。しかしセンセにとって佐賀は鬼門だそうで、かなりシビアな雰囲気を発散されている。「こちらは"やのぴー"さんです。」と、お連れの方を紹介されるセンセ。センセの日記愛読者のワシ「あ〜河豚接待の方ですね。」と、お初ながら不躾な発言。
ゴール板前のスタンドの観戦席に上がると、九州在住さまにべっぴんさん、昨日は益田観戦だったふささん、お初のエモさんもいらっしゃっている。そしてこの三連闘、ワシと同一日程の同志ディープさん。彼は前日に名古屋から福岡に飛んで、博多泊だったとのこと。
午後になって江戸平多さんが来場。今回はラーメン巡りがメインで競馬がおまけの九州行きだそうで。そして土壇場で、Tienさんが現れる。今年に入ってからの九州でのレースの、膨大な量の写真を見せて下さり、圧倒されるワシ。サスガ"九州の首領"。

メインの九州アラブ王冠賞の前に、同時開催している荒尾のメイン、梯梧特別(アラブ系A3B1クラス)の場外発売及び放映がレースメニューに組まれている。このレース、何が注目かというと、出走馬の父馬。キタノトウザイ、サチエノヒリユウ、ミヤシロオー、タカサゴスピード、ブルバードライジンと、ここまではいいが、その他はフジノトウザイ、シンコスピード、カツラギイチバン、ダンディバトラー、イチコウランエイと、並のアラブ好きのワシでは「何じゃそりゃ?」という種牡馬が半数を占める。サスガのディープさんすら「知らん馬ばっかりや。これはこれで見物やけれど。」と仰る状態。
取り敢えずここで馬券の腕試し。佐賀の場内モニターに荒尾のパドック周回が映し出されるのだが、その画面から見ても、買いたくないような見た目の馬ばかり。「こんなん現場で見たらもっと酷いやろな。」と、ディープさんらと呆れる。
結果は、軸にしていたあの西村栄喜騎手騎乗の馬が、2番手からやや出入りがあるも2着に入り、本線で買っていた5番人気の馬が1着、ということで馬複約21倍をGet。「やっぱりアラブはいい!」などと調子のいいことをぬかすワシ。
この後、JRAのNHKマイルカップの放映を挟んで(佐賀競馬場は場内の隅にJRAの発売所がある関係上)、ようやくメインレースの時間を迎える。

※九州アラブ王冠賞についてはここからです
さて、その九州アラブ王冠賞。「"アラブ王冠"なのか"アラブ王冠賞"なのか、正式名称はどっち?主催者も混同してるようだけれども。」と、ちょっと話題になったのだが、出馬表や予想紙での表記は"アラブ王冠賞"。
出走馬は以下の通り。フルゲート12頭。()内は騎手。斤量は紅一点スターディジューキが55kで、それ以外は56k。
ロックプリンス(牧野)、ワンダーリンボー(真島)、ミスターナタリー(北村)、キングダイオー(鮫島)、フブキベル(三井)、マッキーチャンプ(井上)、スターディジューキ(権藤)、アトミックボンバー(長田)、ファストテイオー(原口)、アシュラトウショー(吉原)、トチノグレイス(山下)、イメージアラシ(倉富)

九州交流とはいえ、中津があのような状況になってしまい(実は6月までの中津の開催日程では、同日にアラブ系重賞の豊の国盃が予定されており、どのみち中津勢の参戦は?だったであろうが)、佐賀と荒尾の二場交流。しかし荒尾から参戦したのはA2クラスのロックプリンスただ一頭。主だったA1馬は今開催5/4の地元A1球磨川カップに回り、かの地のトップクラスのお目見えはなし。本来ならばこのレース最大の注目馬、メグミダイオーが佐賀大賞典以後軽いアクシデントがあって、出走予定だったここを回避。これが陣営としてもファンの我々としても、最大の誤算か。
一方の佐賀勢も、バリバリの重賞級の馬だと他地区の人間からも認識されるのは、前年のこのレースの覇者トチノグレイスただ1頭という、ちょっと物足りない顔ぶれ。ビソウミラクルまでも出ないという・・・この物足りなさに「あ、何だかんだでヤツを佐賀筆頭として認めてるんだな、ワシ。」と、改めて気付く自分がそこにいるわけだが。

パドックから発走まで
さて、パドック周回が始まる。ここまで晴れたり曇ったりしていた空模様、このあたりで空からなんと雨粒。馬場状態は良。佐賀の馬場は相当砂が深そう。
1番ロックプリンス、荒尾所属。ボッテリとした腹回り。
2番ワンダーリンボー、近3走A1で連続3着。この中では煩い方。
3番ミスターナタリー、昨年の4歳(旧表記)2番手とのこと。差し馬。首でリズムを取っての周回。好感。
4番キングダイオー、3番と同様現4歳。兵庫未勝利から佐賀転入で地力を付け、A3まで出世してここに。距離延長は歓迎らしい。鶴首になっての周回、リップチェーンを噛まされている。気性勝ちの馬なのか?トモの踏み込みが甘いか。
5番フブキベルはかつての笠松アラブダービー馬、8歳ベテラン。思いの外スッキリ。
6番マッキーチャンプは活気あり。7番牝馬スターディジューキはやや腹が細い体型。8番アトミックボンバーはボッテリした体型。
9番ファストテイオー、3歳(旧表記)重賞"はがくれ賞"馬で、昨年春の益田まほろば賞2着した馬。キングダイオー同様現在A3クラス。割と余裕で周回か。
10番アシュラトウショー、栗毛の艶は良い。タテガミの白いワタリが目を惹く。
11番がトチノグレイス。岩手OBで前述の通り前年の勝者、トチノミネフジ産駒、差し馬。二人曳きだが割と静かな気合乗りで、思ったより大人しい。この馬の毛色、栗毛とのことだが結構くすんでおり栃栗毛に近いような。西久保厩舎お約束の、白地に目の周りが赤いSevenPointedStarメンコの上に、オバハンのスカート生地のようなダッサイ柄の水色メンコを被せられている。
12番イメージアラシ。8歳。歳の割には目にする時はいつも艶が良い。ただ元来の体型とはいえややヒ腹が薄いか。

本馬場入場から返し馬に。佐賀の返し馬(中津もそうだった記憶あり)で気になるのは、馬がスタンド前を結構好き勝手に走るという点。行ったり来たりしたり、ダッシュのリハーサルみたいなことまでやったり。ロックプリンスやファストテイオーは2周キャンター。トチノグレイスも2周、ただしこちらはじっくりと。

予想。これはもうトチノグレイスのアタマは動かし難い。考えるのは相手だけ。ここは素直に人気通りキングダイオー、ミスターナタリー、ワンダーリンボーへ。「アラブ現場主義者としてはパドックでどの馬が良く見えました?」と、ここはファストテイオー抜擢のふささんが、ディープさんとワシに問われる。我々の見解、何故か一致で「イメージアラシ!ただし駄目だと思いますけど。」。「歳も歳やし二千じゃまだ短い」というのがディープさんのこの馬の評価。ワシ、それには納得なのだが、実はイメージアラシ、結構好きなので、スケベ馬券で枠単8−8(グレイスとイメージは8枠同枠)ちゃっかり買う。「ホンマですか!?」とウけるディープさん。「佐賀は鬼門」の京都人さんの笑顔は果たしてここで見られるか?

レースなり
ということでレース発走。距離二千。スタート地点は二角のポケット。ここから1周と3/4強。
ゲートが開いてまずは飛び出したのが7番スターディジューキ。連れて6番マッキーチャンプ、スター(馬名の切りどころわからん)の外へ。外ワンダーリンボー内ロックプリンスが続き、トチノグレイス、ミスターナタリーは中団。
隊列は1周目の正面スタンド前へ。先頭スター、約1馬身差の外に2番手マッキー。これを見て内ロックプリンス中ワンダーリンボー外ファストテイオーの併走。その後ろインに鮫ちゃんキングダイオーで、その後ろ中団の内ミスターナタリー外トチノグレイス。フブキベルは発馬イマイチから中団後方で、例によってイメージアラシが殿追走。

1周目直線(41KB)
1周目の直線
先頭内スターディジューキ2番手外マッキー、好位外橙帽がファストテイオー

1コーナーから2コーナー、このあたりで2番手マッキーがちょっと上昇気味のような。そしてレースが動くのが二角を回って向こう流しに入ったところ、内を突いてキングダイオー、鮫ちゃん奇襲気味にスパートで一気に先頭へ。前日土古の8レース立夏特別で、グロリアスメロディがインから仕掛けたシーンがダブる。これに呼応してミスターナタリーも上昇。そして向こう流し一杯を使って、外からトチノグレイスが押し上がってくる。三角あたりでは既にこの3頭の勝負に、そして最後の直線へ。

最後の直線(34KB)
最後の直線半ば、3頭の勝負
先頭粘る中キングダイオー、内にミスターナタリー外トチノグレイス

先頭は馬場五分どころキングダイオー、差がなく内でミスターナタリー、外にトチノグレイス。必死に粘り込まんとするキングダイオーに、インのミスターナタリーはやや劣勢。そしてやはり最後はトチノグレイス、一気にケリはつけられぬものの、ジワリジワリと差を詰めて、残り20mあたりできっちりキングダイオーを差し切ってのゴール。着差1/2馬身。2着キングダイオーで3着ミスターナタリー、この間も1/2馬身差。

最後の直線(40KB)
外から決めたトチノグレイス
キッチリ差し切ってV

6馬身離れた4着は、後方から追い込んだアシュラトウショーだったようだが、これ以下の着順は現場では眼中になし。5着も後方からのフブキベル。6着は道中3、4番手の好位だったものの、結果として終い差し馬勢に食われたファストテイオー。ワシのスケベ心を一身に背負ったイメージアラシは最低人気で殿からの追い込みで7着だったとのこと。

レース後スタンド前の表彰台で表彰式が。お姉さんから勝利騎手インタビューを受ける山下貴光jk。その内容、大意は以下の通り。
−連覇へのプレッシャーは?
「それは特になかったが、力は上位なので、必ず勝たねばと思っていた」
−作戦は?
「出来るだけ前に付けようと」
−ゴール前、勝利の手応えは?
「ゴール地点まで(勝ったか)わからなかった」

最終レースの返し馬の後、勝ち馬が地元馬で、雨天ではないからか、馬場にレイを纏ったトチノグレイスが現れ、ゴール板前あたりで記念撮影。この時、パドック周回同様、またもや水色オバハン柄メンコを被せられていたトチノグレイスであった。

戦後の私見
トチノグレイスは勝ってレベル的にも格好がついて何より。いい差し競馬だったと思う。彼の個性が発揮されたのでは?
2着のキングダイオーのスパートは大胆だったな。リーディングjkなればこそ、リスクがあれども許される乗り方って感じか。しかしこの馬の脚力は見どころありそう。これでA3から更に躍進できよう。3着のミスターナタリー共々、こうした4歳の若い馬がオープントップクラスに上がってきてくれることは、古馬戦線の活性化という面からも好ましい。(何だかディープさんのような見解だな)。
アシュラトウショー、フブキベル、イメージアラシといったあたりが最後差して着順を上げ、先行したワンダーリンボーやロックプリンスがこれらに負け、ブービーとベベが逃げたマッキーチャンプ、スターディジューキということは、前半かなり息の入らぬ、先に行った馬には苦しいレースだったということか。それからすれば、上位3頭以外で好位から一番持ち堪えたのが、6着のファストテイオー。この馬も4歳なので、まだまだ期待が持てるのかな?

馬券的には的中するも、本命サイド決着なのでちょっと取り損。京都人さんは的中でちょっとホッ!か?

帰路、そしておわりに
最終レースはサラなので別に・・・のところ、ディープさんが、「これ最終発走直前の16:44にバス停に来る路線バス乗ると、時間的に今後の段取りベストですよ。」と教えて下さるので、彼に同行して、お先に競馬場を失礼することに。
国道に出ると、ドンピシャのタイミングでバスが到着。渋滞に遭わず順調に鳥栖駅着で、17:12発の快速に間に合う。これが17:41博多着。ディープさんは18:35発ののぞみ、ワシは18:58発のレールスターで帰路なので、発車まで時間を稼ぐことに成功。ここで駅前地下のラーメン屋、一蘭に直行。幸い行列はなく、九州滞在の〆をラーメンで飾ることが出来た次第。あとは車中で食う弁当を買って、ディープさんとはお別れ。アラブ重賞三連闘、お疲れまでした。この後ワシは職場への土産、「佐賀といえば"佐賀錦"(byまりおっち)」を買い付け、レールスターに乗車。
連休最終日のこの時間、列車は超満員。指定席までお客さんが溢れる。これはまさに、レールスターの、8両編成であることの最大の泣き所。ここでフレキシブルに16両立てにできないところが痛い。

ともあれ無事に住処に帰着。これにてGW後半、アラブ重賞三連闘の終わりでございやす。しかしこの間、兵庫大賞典を加えた4重賞、全て差し馬決着なんだよな。こんなこともあるもんだ。

2001.5.25 記

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