第26回アラブスプリンターカップ観戦報告

 2001.8.31、笠松、1400m

まずは言い訳。"アラブ現場主義者"を標榜するワシであるが、東海のアラブ観戦の頻度はかなり低く、またその事情にも相当疎い。これは、東海の開催日程が平日中心で、重賞もまたほとんどが平日施行であり、なかなか現場観戦が叶わないという理由に拠る部分が大きい。また、住処の明石から名古屋地方は、さほど遠くもないのであるが、かといってムチャムチャ近いというほどでもなく、これが遙か遠方であれば、覚悟を決めて仕事を休み旅行気分で出掛けるところ、どうも中途半端な距離感覚であり、ますます出掛ける気分が削がれているという次第。実際、感覚的にはむしろ福山の方が近いわけで、このあたり、同じ関西圏とはいえ、京都や滋賀在住の方々と大きく異なるところである。こんなわけで、"東海の好漢"おーたさんに「このアラブ現場主義者(ワシのことね)東海には冷たいからなあ。」と突っ込まれると、返す言葉もないのである。

さて、今回のアラブスプリンターカップ、笠松の金曜日施行のアラブ重賞であるが、観戦に腰を上げた要因は二つある。
まずは青春18きっぷがまだ余っており、この消化ということ。そしてもう一方は、今月17日の笠松観戦(笠松オールカマーの日)での凡ミスに帰因する。この日笠松から帰って財布を改めると、最終レースの的中馬券が。「確かに当たったレースだが、帰りにちゃんと換金したはずやけれど?」と思ったところ、買い目をよくよく見るに、実はメインのオールカマーの馬券を、レース番号を間違えて、最終レースの馬券として購入していたようだ。オールカマーの買い目としてはハズレであるところ、ラッキーにもこれが当たっている。となると、せっかくの当たり馬券、換金せねば勿体ない。しかし笠松に今後60日以内に赴く可能性はほとんどない。「これは一つ、ここでアラブスプリンターカップでも観るか。」ということになったわけ。
とまあ、非常に脆弱な理由ではあるものの、笠松行きを敢行することになった。

青春18きっぷ使用のため、当然在来線にて。長浜行きの新快速で米原まで。ここで乗り換えて関ヶ原を越え、大垣で再度乗り換えて岐阜まで。名鉄の新岐阜駅まで移動し名鉄本線にて笠松までという経路。住処を出るのが遅れたため、競馬場に到着したのは2時過ぎ。

天気は晴れ。前週のアタマに台風が通過し、その数日後来関西の猛暑もようやく脚が鈍って、以後は過ごしやすくなってきたのだが、この日は気温が高い。そして馬場状態は何故か不良。馬場に水が浮いているわけでもないのだが、砂はたっぷりと水分を含んでいるようだ。数少ない経験からの個人的印象としては、笠松の馬場状態はぱっと見と実際の発表との間のギャップがあるような。

場内を何気なしに眺め、見知った人がいるか探すが、今日はそれが誰もいない。東海系と思しき集団は目にとまるも、面通しの経験のある方々ではない。というわけで、このホームページを立ち上げて、観戦記をしたため始めた昨年初頭以降、第一本目のアラブギフ大賞典(イケノエメラルドが勝利したレース)を除いて、二本目の園田新春賞(ワシュウジョージが勝った時)以来継続していた「お知り合いが誰かいる」記録が、ここで途切れることになる。各地の現場に出掛け、またネットでのやり取りによって「アラブの現場のお知り合いの輪」が広がったことで、この間どんなマイナー重賞に出掛けたとしても途切れなかった記録(極私的に過ぎるものだが)が、65重賞ぶりに止まったというわけ。

※アラブスプリンターカップについてはここからです
では、アラブスプリンターカップについて。今年の農協牛乳杯(金沢)の観戦記の冒頭にも記したが、全国の古馬混合アラブ重賞のうちで、実はこのレースが最短施行距離。であるならば、短距離色ありありの出走メンバーであればよかろうところ、実際は何のことはない、現在稼働している笠松(及び若干の名古屋からの出張馬)のOP馬が、たまたまこの距離の重賞を戦うといった体裁。このあたり、距離は千六でこのレースより長いが、福山の金杯の方が、登場するメンバーやレースのキャラからして、短距離戦というイメージがずっと強い。加えて、夏場だからか、笠松のトップの馬たち、クラボクモンやマルカシードなどがお目見えせず、メンバー的にも盛り上がりに欠ける。前週の葉月オープンで、相当数の有力馬が揃った名古屋と比較するにつけ、笠松のアラブ事情も今一歩かなあ。

ということで、出走馬は以下の通り。()内は騎手、斤量。
スターディジューキ(福重、52k)、ヤマトダンサー(田邊、53k)、ファルコンボーイ(横山、54k)、コウエイエンジェル(川原、51k)、サウンドタカラ(村井、53k)、ホマレメガミ(次井、51k)、ブレーンワーク(倉地、55k)、トライハートキング(東川、52k)
上記のうち、スターディジューキとブレーンワークは名古屋からの出張馬。
以上8頭でフルゲートに満たないところ、8レースのパドック周回時にホマレメガミ除外とのアナウンスがあり、結局7頭立ての寂しいレースとなってしまった。

このレースは第11競走、この日の最終レース。内馬場のパドックに出走馬が登場する。
1番スターディジューキ。佐賀A級の九州産馬が7月に名古屋移籍。8月3日の名古屋のOP戦が転入緒戦だったが明らかに家賃が高いか、11着最下位でこれが移籍後2走目。キョロキョロと物見しながらの周回。馬体重482kは前走比+12kで佐賀時代よりも20k弱太いが、体型はヒ腹が細い。
2番ヤマトダンサー。前走は7月末のA2戦でこれを勝利しての今回。オープン一線級では初か。逃げ馬。どうも引きずるようなトモの送りが気になる。
3番ファルコンボーイ。かつての新潟筆頭馬が今春笠松へ。能検は4月に通したらしいが緒戦は先月の準重賞ひまわり賞。ここで8着最下位。本来は差し馬だがこの時は二位付け早々に後退という、らしくない競馬だったそうで。馬体はまあまあ。ちょっと仕草が煩い。トモ、特に飛節の動きが硬い。
4番コウエイエンジェル。前開催の笠松オールカマー以来のご対面。このオールカマーでは本命評価に応えられず3着。引き続き馬体の艶や張りは良い。それでもやっぱり前回と同様トモの送りが硬い。
5番サウンドタカラ。オールカマーの日の最終レースのA2戦を勝ってここに。いい感じで気合いが入った周回。馬体のフォルムも悪くない。前走勝ちに導いた主戦川原騎手がコウエイエンジェルに騎乗で、今回は村井騎手、これでどうか。
7番がブレーンワーク。前年のこのレースの勝者であり、古馬重賞3勝と、実績的にはここでは断然。一時期ガタガタっと成績を落としたが、5月末から梅雨時にかけ3連勝と再浮上。夏場に弱いらしく、2ヶ月休んでここに登場。頸を振りつつ入場。同じ夏場の競馬でも、毛艶や馬体の張りは昨年のオールカマー時の方がまし。馬体重508kは適正値だが、見た目ちょっと緩め。良く見せる時は筋骨隆々の鋼のような馬体であり、こんなもんじゃない。これでどうか。気合いは入っているが。
8番トライハートキング。相変わらず黒鹿毛の毛艶は良い。両前脚にバンテージを巻いており、周回中何度か立ち止まりそれを覗き込む仕草。気になるのか。

各馬パドックを出て返し馬に。ファルコンボーイは強めのキャンター。ヤマトダンサーやトライハートキングも強く。ブレーンワークはまる1周ダクで回ってきて、正面スタンド前から次第にピッチを上げてキャンターに。鞍上倉地騎手、その際左トモを気にして振り返っていたが。

予想。格からすればブレーンワークには逆らいようがないのだが、あまり感心する気配ではないので、ここはもう一丁、コウエイエンジェルから。これをアタマに相手は逃げ残りを期待のヤマトダンサー、そしてやはりブレーンワーク。保険でブレーン→コウエイの裏目。以上連単3点で。

レース発走。笠松1400mのスタート地点は4コーナーのポケット。
1枠スターディジューキ、大外トライハートキングがハナを窺い、ヤマトダンサーも前へ。結果スタンド前では先頭スター、差がない外にトラハ、これを2馬身ほど前に見て3番手ヤマトという順番に。ここからやや開いて、内ファルコンボーイ外ブレーンワークが併走。すこし開いてサウンドタカラ、さらに遅れた殿にコウエイエンジェルという隊列で1、2コーナーへ。

1周目、先団(33KB)
1周目の正面スタンド前、先行集団
先頭スターディジューキ2番手トライハートキング3番手ヤマトダンサー

三角までは先行3頭縦列でこのままの順。二角あたりで中団内ファルコン外ブレーンの併走の間にサウンドが割って入り3頭並んで。三分三厘、ヤマトダンサーが加速、前の2頭を捉えにかかる。そして外からブレーンワークが接近。そのさらに外に最後方からコウエイが追いつき、四角そして直線へ。
直線入り口、一旦はヤマトダンサーが先頭に立つも、直線半ば、馬場五、六分どころ、ブレーンワークが内のヤマトを交わして先頭へ。コウエイエンジェルがブレーンの外から追いすがるも、ブレーンワーク、3/4馬身しのぎ切って当レース連覇のV。鞍上倉地騎手、G前通過後10mあたりで、お約束?のガッツポーズ。ただし今回は一本指(フィーバー!とも言う)ではない。

ブレーンワーク、ゴール(45KB)
ブレーンワーク、ゴールへ
コウエイエンジェルを振りきる。逆光キツい・・・

2着コウエイエンジェル、3着ヤマトダンサー、4着スターディジューキ、5着トライハートキング。実力馬2頭が差し切り1、2着、3〜5着は先行馬という結果。それほどのスピード感も感じられず、やっぱりスプリント戦というにはどうか?というレース。

ブレーンワーク、勝てて何より。地力からして、いくら本調子ではなくともここに入って格好がつかねば、「名古屋筆頭奪取の悲願」などと言ってられないわけで。それでもこの馬、ポカが多いというか意外なところでコロッと負けるキャラであるからして、今日はやれやれというところ。
コウエイエンジェルは2着にはきたものの、前走のオールカマーといい、どうも勝負所からの仕掛けが遅いというか後手踏みというか。戦績的にも短いところが苦手でもなかろうに。まだまだ発展途上ということか。

このレース、優勝レイこそないものの、レース後勝ち馬が表彰台そばまで曳かれてきて、記念撮影をしてくれる(追記:3号馬さんの御指摘によれば、SPII以下の重賞においては、笠松ではスタンド前で口取り撮影をしてくれないのが通例、加えて最終レースが重賞の場合は表彰式もやらないそうで。ということは今回は異例?)。その様子を写真に収め、表彰式を目撃して払い戻しに向かうと、既に場内は打ち出し、窓口もまさに閉鎖直前。慌てて換金し、カメラの片づけも後回しに、そそくさと競馬場を退散。

ブレーンワーク(35KB)
記念撮影のブレーンワーク
顔面についた泥が不良馬場を差し込んだことを物語る

帰路も名鉄からJRの在来線にて。夏休み最終日、バカンス最後の浮かれ気分が名残惜しそうに漂う夕刻の車中旅であった。「サラリーマンに8月31日も何も関係あるかいや。浮かれてるのは仕事サ○って競馬行ってるお前だよ!」なんて突っ込みが聞こえてきそうだ。どうもスイマセン。

2001.9.10 記  
2001.9.13 追記

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