第44回園田金盃観戦報告
2001.10.10、園田、2400m
◆園田金盃について〜長すぎる前置き
園田金盃といえば、12月施行の、距離2300m(コース改修後は2400m)、負担重量は馬齢定量、まさに一年締めくくりの、兵庫最強馬決定戦。馬の能力がはっきり出る、紛れの少ないレースであり、故に毎年少頭数になるものの、その勝ち馬には兵庫県競馬の歴史に名を残す馬がズラリと並ぶ。
と、これはアラブ系重賞であった時代のこと。1999年に兵庫もサラ(2歳馬)を導入し、この世代が3歳を迎えた昨年、園田金盃もサラのレースに変更となった。一応古馬重賞との扱いだが、この時点で兵庫のサラは3歳馬と2歳馬しか存在しないわけで、この年の園田金盃は結局のところ3歳重賞。「いずれはそうなるのもしゃーないかもしれやんけど、いくら何でも(アラブ系からサラ系への変更が)早過ぎるんとちゃうか。」とのファンの声が、ワシの耳にも少なからず聞こえたものである。
これが主催者に届いたかどうかは知らぬが、今年の園田金盃、時期を12月から10月に移し、アラ・サラ混合重賞という形態で施行されることとなった。10月上旬のこの開催は例年組合設立記念シリーズ、開催の目玉とする意図だろう。因みにこれまで組合設立記念シリーズの目玉レースは、全日本アラブクイーンカップと六甲盃であったのだが、クイーンカップは昨年から"全日本"の冠称が外れ、さらに今年は重賞から指定競走に格下げされてアラ・サラ混合レースに変貌、六甲盃は施行時期を年頭に移し、条件も変更の予定。
まあ、「アラブのメッカ」の通り名でこれまで運営してきて、今でも関係者の抱くレベルへの自負と気位は高かろうアラブと、鳴り物入りで導入し、ことある毎に「これがサラのスピード」「さすがサラは違う」と喧伝してきたサラとの混走レースは、兵庫の競馬においてはこれが初めて(厳密にいえば同開催のクイーンカップが初でこれが2回目、重賞では初、戦後の黎明期、豪州産サラが走っていた頃のことは知りません)のことなので、「話題性は充分だわな。」という、主催者の思惑は想像に難くない。
アラブ贔屓な人間の側からすれば、サラの導入のしわ寄せを食って、アラブ重賞数が減った現状において、アラブが出走できる舞台として、園田金盃が戻ってきたことは何より。ましてやサラとの混合戦、アラブの実力を天下に示す絶好機、といったところか。実際、今年のこの園田金盃への、戦前ファンの関心と注目度は相当高かったように、ワシには見受けられた。
が、実はワシ個人は、結構醒めた目でこの日を待っていたというのが正直なところ。「アラ・サラ混合戦とはいえ、実際のハナシ、アラブ主体のレースになるか、サラ主体のレースになるかが不透明。」というのが事前の私見。アラブ側にしても数多くない重賞の舞台ではあるが、実はサラの古馬(といっても4歳世代しか在籍していないが)にとっても、これが3月の播磨賞以来、半年ぶりの地元古馬重賞であり、距離二四であろうとも、各馬こぞって出走してくる可能性も充分考えられる。また、気になるのはアラブのオープン馬の層の薄さ。正真正銘強いオープン馬となると、最上位のほんの一握りで、その他はヒラのオープン馬、そのうちにも、かつてであれば準オープンが関の山という馬が多数。サラ偏重の一方で、アラブ側の脆弱化は確実にある。いくらサラのレベルが高くなかろうと、ドングリの背比べであろうと、上記のようなアラブの陣容では、アラ・サラ全面対決には、あまりにも心許ない。
ということで、発表された出走メンバー。フルゲート12頭中、アラブ3頭にサラ9頭。まあ、つまるところ競走の大勢はサラ重賞、これに一握りの、それに足るアラブが混じる重賞といったところ。
◆メインレースまで
ともあれ、現地観戦するべく園田競馬場へ。競馬観戦に園田に行くのは、実に楠賞以来である。縁遠さがこんなところに露呈した感じ。
午前中で仕事を切り上げて職場を脱出し、1時半頃に競馬場に到着。スタンドに上がって辺りを見渡そうとしたところ、腰掛けていたブリセイくんに早々に発見される。その隣には設立記念シリーズ重賞は3年連続現地観戦の日浦くんが。ということで二人に合流。「他に誰か来てる?」と問うと「いやまだ誰も見つけてませんね。」とのこと。ここでゴール前に目をやると、発見。「あそこに3号馬くんおるやん。」「あ、ホンマや。」時は6レース発走直前。これはアラブ系2歳のオープン特別、兵庫オーナーズカップなので、写真撮影をするのだろう。
その6レースは、ここまで6戦して目下3連勝で、現在兵庫2歳筆頭と目されるシリウスウィンドが中心、そして注目の的。距離千七は出走全馬にとって初体験。これをシリウスウィンド、集団のアタマといった感じのジンワリとした逃げて道中進め、そのまま終いまで押し切るという競馬で勝利。途中三分三厘果敢に競りかけてきた馬がいたが、先にこちらが音を上げており、今回の面々の中ではどうやら抜けているようだ。スタンドの上の方から眺めただけだが、ちょっと雰囲気ある馬には見えた。しかしブリちゃんは「ボクはあまり気に入りませんでしたけどね、パドック。」と。3号馬さんも特段強調するほどのいい馬でもないといった評価のよう。
関西地方は昨夕から雨。気圧の谷が通過した模様。この峠は深夜で、金盃当日は昼過ぎから急速に回復という予報。たしかに午前中のうちに雨はあがってくれた、が、雲は厚いままで、なかなか空が明るくなってくれない。
その雨により、馬場状態は不良。ただ、事前に砂がかなり入っていたからか、コース改修時に走路をかさ上げし路盤を深くして以降はこんなもんなのか、砂がよく水を含み、路面に水が浮くのはごく一部。もっとも砂は相当流れたようだが。時計は概してかなり速い模様。サラ2歳の認定未勝利戦の距離千四で、1分29秒台が出ている(千四戦で1分30秒を切るレースがあるようだと時計は相当速いと判断できよう)。
7レースのパドック時、ここで並んで観ていた大西さんと3号馬くんと合流。一人で歩いていたラティラーちゃんも捕獲。みんなで梨を食いに行くが、あの梨剥きマシーンが見当たらず、断念。因みにこの日のイベントは大泉逸郎の歌謡ショー。午前中は3レース後、午後は7レース後。7レースが終わると、後ろの席に座っていたオッちゃんの集団が「孫やるで孫。」「孫観に行かな。」と席を立つ。誰も「大泉逸郎」と歌手の名前を呼ばないところがいかにも「孫」。
第8レースは注目の一戦。アラブのオープン、ニッカン菊園特別。園田金盃に登場しないアラブのオープン馬がここに出走。距離はアラブのオープンでは数少ない1400m。このレースについてはこちらでどうぞ。
8レースの発走にギリギリ間に合ったまりおちゃんがスタンドのベンチに腰掛けているので合流。この頃ともちゃんも現れる。
8レース後の表彰式、ウィナに吉田アナがやって来て、岩田騎手にインタビュー。テツオー勝利について触れた後に、園田金盃へと話題が及ぶ。「岩田騎手、そしてハッコーディオスにとっては、願ってもない雨、そしてこの馬場では?」「そうですね、頑張ります。」という感じ。このやり取りを聞いて、3号馬さん曰く「あーあんなこと聞かされたらディオスの馬券買いたくなってしまいますよー。」。う〜ん、どうでしょう。
※園田金盃についてはここからです
さて、第10レースがいよいよ園田金盃。出走馬は内枠より以下の12頭。()内は騎手。
タカライデン(赤木)、フリートサイクロン(松平)、ワシュウジョージ(小牧太)、アイエフビクトリー(尾林)、ダイトクヒテン(田中)、ホワイトテンション(三野)、エルファシル(永島)、ダブルフェース(平松)、クリアードラゴン(松浦政)、ハッコーディオス(岩田)、アートサンキュー(小牧毅)、マッキーダグラス(木村)
アラブはご存じ、ワシュウジョージ、ハッコーディオス、タカライデンの3頭。その他9頭はサラ。
負担重量はアラ・サラに区別なく馬齢定量。3歳のホワイトテンション、エルファシル、ダブルフェース、クリアードラゴンの4頭は55kでその他の8頭は56k。
◆パドック、そして返し馬〜発走まで
パドックに出走各馬が登場する。このレース、ワシがメモをとるのはアラブの3頭だけ。サラのことはホンマわかりませんので(悪意は全くありません、念のため)。よって非常に楽である。ここで山ちゃんが間に合って登場。そしてスーツ姿の大御所Okuさんが現れる。「2歳のオープンあるしテツオも走るでホントは早うに来たかってんけど仕事抜けやれんで今ようやく着いた。」とのこと。
1番タカライデン。馬体重455kは前走比+4kだが最近の彼のそれとしては適正値かと。実に逞しくいい馬体。4歳時(旧表記)の華奢で神経質そうなところはほとんどなくなっている。骨格がガッチリして大人の馬の馬体になった感じ。トモの送りはやや硬く見えなくもないが、仕上げは非常に良さそう。キビキビとやる気も感じられる周回。「タカライデンも見た目はなかなかエエがな。」と山ちゃん。一方まりおちゃんは「タカライデン、イマイチピンと来んかった。」。
そして3番がワシュウジョージ。馬体重は前走から増減のない450k。これもまさにこの馬の適正値。その馬体、張りや艶は文句なし。今年目撃した中で間違いなく一番の出来。いつも通りの二人曳きで気合いの入った鶴首。歩様はトモも前肢もやや硬く、特に肩の動きにそれが目立つが、常時割とこんな感じなので許容範囲か。それにいつもよりは歩幅は大きいような。「ワシュウジョージ、エエ出来やがな。」と山ちゃん。
10番ハッコーディオス。ジンワリとした身のこなし。芦毛馬で元来がコロンとした体型なのでどうしても太目に映るが、それにしても馬体がどうも緩い感じ。馬体重484kは前走比+2kで前々走の摂津盃からは+3k。この、ハッコーディオスの最近の480k台というのは、成長分なのか、それとも緩んでいるのかが微妙。「ハッコーディオスはなかなか絞れた感じになってこないよなあ。」と日浦ちゃん。「何やハッコーディオスはノースタイガーみたいにならんのか?」とOkuさん。
本馬場入場から返し馬。ワシュウジョージは例によって入場口からゴール板辺りまで一直線に登場、そこで反転して駆け出す。そしてそのまま待機所に直行。タカライデンは入場してそのまま4コーナーまで歩を進めて、ここから内ラチ沿いをジンワリとした軽めのキャンターで流す。ハッコーディオスはやや遅れて本馬場に入場。これも例によって入場口から一角方向へ直行。この入場時の所作、ディオスとテツオーは同じ。
予想。ここは連単でも軸はワシュウジョージ。日頃はその実力を認めながらも、"アンチワシュウ"を任じるワシではあるが、今回ばかりは勝ってもらいたいと応援の心情が入る。とはいえ、そんな心情より以前に、ここは能力や経験的にも、ワシュウ確勝のレースだろう、と、本気でそう思う。相手筆頭はタカライデン。この名がここで出るあたり、ワシがアラブな人間であることが滲み出てしまうのであるが。それはそれとして、ワシ、これまでタカライデンって全く信用していない馬で、彼を本線にした馬券となると、昨秋の姫山菊花賞以来買ったことがない。それをここで抜擢のココロは、摂津盃僅差2着の走りでやや見直したということと、長距離戦の場数、そして今日の出来への好感。ディオスは今日の逃げ有利のスピード馬場での走りは楽しみだが、二千超の距離経験の無さと、あまりにピンとこない当日気配から切る。あとはサラ勢から、アイエフビクトリーを抜擢してワシュウのヒモに一点加える。基本的に、サラのことはパドックの見方も各馬の個性や能力差も、ホンマよく判らないので、こんなドングリの背比べのような微妙な力関係を踏まえた予想など、ワシに出来るべくもない。アイエフビクトリーを選択したのはただ「何となく。」。当たってくれれば財布は潤うが、それだけのこと。正直「この馬はどうでもいい」。
◆レースなり(以下[]中の記述はテレビ中継のVTRを確認しての補足事項です。)
いよいよレース発走。距離2400m。いまや年に2度しか施行しなくなった(もう一つは楠賞)園田最長施行距離。発走地点は4コーナーを出て直線に向いたところ。
ゲートオープン。外10番枠からハッコーディオスが好発を決めてハナへ。そしてグンと内に切れ込んでくる。連れて大外12番、同じ芦毛のマッキーダグラスも前へ。内では2枠フリートサイクロンも前へ。タカライデンは最内枠から無難に発馬。隣のフリートを一旦先に行かせる格好。ワシュウジョージも内からすんなり出て、これはじわりと中団以降へとポジションを下げていく。
ディオスはスタンド前をドンドン加速してインのハナにキッチリ収まる。その外に掛かり気味にマッキーダグラス、次列内にフリートサイクロン、中ホワイトテンション外アートサンキューが続き、タカライデンはフリートの直後。
1コーナーでタカライデンがフリートとマッキーの間を割って2番手に押し上がる[一角手前までの間に、クリアードラゴンの直後から切り替えて、その外に持ち出している。]。若干掛かり気味。そしてハッコーディオスの外へ併せに。そのままの形で向こう流しを走行していく。「おおっ、タカライデン絡んでいってるがな、これでペース落ち着かなくなるで。」と山ちゃん。
このあたりで隊列は縦に長くなってくる。ワシュウジョージは中団よりやや後ろの後方から4番手。首がかなり上下している、端から見るとから微妙なフォーム[テレビ中継での勝利騎手インタビューの太さんのコメントによれば、ハミを上手く外して乗れていたそうな。]。
2度目のホームストレッチ。先頭は引き続きハッコーディオス、その外馬体を重ねて半馬身差でタカライデンがビッタリ[併走の割にはディオスは折り合って、タカライデンも向こう流しに比べれば落ち着いている。]。[ここからやや差があって、次列内にマッキーダグラス、その外にダイトクヒテン、外目にアートサンキューその外ホワイトテンション、この直後馬場真ん中をダブルフェースが追走。ここまでが好位で、]やや開いてこの後ろにワシュウジョージが構え、その外にクリアードラゴン、アイエフビクトリーはワシュウの直後インでワシュウマークか。[そして殿がエルファシル。]。ワシュウジョージの位置から先頭までは相当距離がある。ワシュウジョージの位置は全くマイポジション。サラ相手でも斬れ味に自信満々なのか。しかし個人的にはアイエフビクトリーの動向が気になるところ。目の前を通過する隊列を見送って、「あれアイエフビクトリー、完全にワシュウマークしてません?」と、振り返って後ろの山ちゃんや日浦ちゃんに問うワシ。「そうや、それでエエんやワシュウジョージは。こっから力でねじ伏せるつもりやで、小牧は。」と山ちゃん。
2周目正面、先頭ハッコーディオス&タカライデン
両者まずまず折り合って
2コーナーを回って、2度目の向こう流しに差し掛かったあたり、ホワイトテンションがやや加速。それを直前に見るダブルフェース、ここで鞍上平松が仕掛け加速、レースが動く。これに並ばれたホワイトテンションの三野も追い出し始める。この様子を見たか、ワシュウジョージがぼちぼちといった感じでジワリジワリと前に取り付いてくる。そして向こう流し半ばでは平松の直後に。一方アイエフビクトリーはワシュウの動きに付いてこれず、この時点で既に置いてけぼり。
三角坂前、寄せる三野ホワイトテンション、捲る平松ダブルフェースだが、ちょっと太に手綱をしごかれたワシュウジョージが段違いの行き脚を繰り出して、集団の外をグングン上昇する。
そして三分三厘、先頭内ハッコーディオス2番手その外タカライデン、双方鞍上の手綱が動くところへ、外からホワイトテンションが取り付いて2頭を交わす。三野に叱咤されつつ抜け出しを図るホワイトテンション。しかし程なくその外めがけて、痺れるような行きっぷりでワシュウジョージが襲来。必死に抵抗するホワイトテンションを横目に、鞍上太さんの手綱はガッチリと、まさに絵に描いたような「持ったまま」の構図でこれを置き去りにして、先頭に立って4コーナーを回ってくる。吉田アナの実況もトーンが上がり、それを目の当たりにしたワシらお客さんも驚嘆と呆れ返りの歓声。「何やあれ!持ったままでブッチ切っとるやないか!」「サラがまるで相手になっとらんやないけ!」などなどと・・・
最後の直線、追いすがる相手がサラだけに、太さんも若干警戒したのか、直線半ばでは鞭を繰り出しワシュウを追い立てる。それに応えてさらに伸びるワシュウジョージ。現場のゴール前から見たところ、ホワイトテンションが差を詰めた感じがしたのだが、実際は終いまで着差を縮めさせることなく、最後は3馬身差をつけて完勝のVゴール。鞍上太さん、ゴール板通過後10mくらいで、ちょっと遅めのVサイン。2着はホワイトテンションがバテずに走り切って。
ワシュウジョージ、Vゴール
この直後、太さんのピースサインが出る
さて、ワシュウに交わされた後のアラブ2頭。タカライデンは三分三厘でホワイトテンションに外から被せられたところで、内のディオスとの間でちょっと窮屈になって一時後退。しかしそこからよく盛り返して、バテずに再度前を追う。ハッコーディオスは三角以降は未踏の距離領域。やはりバテたか仕上がりいま一歩からか、以降伸びを欠きここまで。直線タカライデンは外に持ち出し、ディオスを斬って前の2頭を追う。前とは差があり届かぬものの、3着死守だ!というところ、外から来たダブルフェースに、まさにゴール板前ハナ差交わされて悔しい4着。ハッコーディオスは結局6着。
ワシュウジョージの走破タイムは2分37秒1。これは従来のレコード、今年の楠賞時の2分38秒9を上回る新レコード。この馬場で、ワシュウジョージが少々骨のある競馬をしたならば、当然と言えば当然のレコードタイム。
勝者ワシュウジョージがただ1頭、レース後コースを1周して、正面スタンド前にウィニングランにやって来る。スタンドの半ばにさしかかったあたり、太さんがワシュウの首筋をポンポンと叩いたところ、場内から相当の音量の拍手が自然発生する。拍手を浴びるに充分値する、堂々たる兵庫筆頭馬の走りだったと思う。それにしても、地方競馬各場の大一番で時折自然発生する、勝者への拍手というのは、いい。
やがて口取り撮影のため、旧ウィナの太さんを乗せたワシュウジョージと関係者の御一行が登場する。そして記念撮影。最後は、これは曾和厩舎の最近のお約束となっているという、回れ右でお客さん側を向いてくれて、ファンにポーズのサービス。
ワシュウジョージ、口取り
お客さんの方を向いてポーズ
◆振り返る
ワシュウジョージはまさに完勝。「サラに勝ったとはいえ、レベル的に大したことない兵庫のサラ(実際今回戦ったサラの面々はJRAの500万下条件で勝負にならない程度だが)相手だからどうってことない。」という見方も出来なくもないのだが、それを持ち出すと、この勝利の値打ちなど戦前から決まっていたことになるわけで、これについてはここでは特に触れない。が、「勝ってもこんなもん、負けりゃそれまで。」というところを、勝つと負けるとでは大違い、キッチリ勝ったという事実は非常に大きいだろう。まあ、レース後現場では大いに盛り上がり、ワシ自身も非常に嬉しかったとは、正直に記しておきましょう。
ただ、このレースに関しては、ワシ個人としては、「ワシュウジョージがサラに勝った」という点はともかくとして、ワシュウのその勝ち方、レースぶりをより高く評価したい。道中は中団で折り合って楽に追走。「サラの瞬発力、何するものかは!」とばかりに勝負どころでスッとスムーズに上昇して、馬なりのままの四角先頭、あとは突き放すだけ。ワシュウジョージの持ち味がよく出た走りだったと思うし、これまでの彼のレースの中でも、最も強さを感じさせられたものだったと思う。「道中控えてすんなり上昇してキッチリ差し切るという、いかにも小牧らしい、可愛くない競馬やけれどもな。」と山ちゃんが評したが、確かにこの馬、好位差し得意の太さんによくマッチした馬だと思う。
それにしても今回のワシュウの、四角の走りは秀逸。広い競馬場と異なる小回りの園田のレースにおいて、4コーナーは勝負も佳境、追いどころ、加えて舞台は重賞、これを持ったままで加速して回てくる、その凄味、加えてそこから直線さらに伸びるその末脚、これにはホンマ鳥肌立った。
「完全に充実期に入ってますよね。」と日浦くん。「しかし最近のワシュウジョージはずっと調子エエままやろ。全然波があらへんもん。おかしいでこの馬ホンマ。」と、山ちゃんも最大級の賛辞。6月のセイユウ記念までは、一走毎に勝ち負けを半年以上繰り返し、"カスタネット・ホース"の呼び名が付いたくらいだったのだが、セイユウ記念からこれで4連勝。そのうちの前々走と前走はハンデ62kの重斤。どうやら少なくとも兵庫には、今の彼を止められる馬はいそうにない。
ホワイトテンションは早め先頭、ロングスパートでバテずに終いまでという、いかにも長丁場合いそうな走りに思われた2着。元来が斬れのない脚質だそうで、ワシュウに来られて一気に交わされるのはまあしょうがないというところのようで。つまりは「サラだから」の2着というのではなく、この馬の資質に拠る2着と言えるのでは。
それにしても非常に惜しいのはタカライデンのハナ差4着。差し込んだダブルフェースに対し、ゴール寸前までは前にいたのだから。道中掛かり気味になるのはこの馬が時折見せるところで、特に今回は2400mの長距離戦であり尚のこと。三分三厘ホワイトテンション以下に交わされてしまった後も、ズルズルとは後退せずよく踏み止まっているのもこの馬らしい。そしてハナ差で着順を落とすところも彼らしい。「勝ち切られへんけどそれほど負けやん馬やねんな、相変わらず。」とはOku師匠。
ハッコーディオスはやはり仕上がりイマイチだったのか、それとも未知の距離は難しかったのか、血統的にも長いところは向かないのか、掲示板には載れなかった。走破距離が二千を越えたあたり、三分三厘で伸びなくなった。「3歳時(旧表記)の、底知れぬ可能性を感じさせた頃の輝きは、取り戻せないのかなあ。」とふと思う。
とまあ、上々の結果は残せなかったタカライデンとハッコーディオスであるが、2頭の逃げ、特にディオスに絡んで行ったタカライデンの走りが、このレースを締まりあるものにしたことは見なせよう。「去年の金盃みたいにドスローで最後の800m(2周目二角以降)だけヨーイドンのつまらん競馬になりかねんところを、道中それなりの緊張感で一応レースとして格好ついたもんな。」とOku師匠も言及。
◆おわりに
最終レースも終わって競馬場を後に。園田駅まで歩いて。ここでOku師匠は帰路。皆さんは駅前のがんこで飲み会。ワシは7時半に先約があったので途中で宴席を辞去。
何はともあれ、アラブな人間のワシとしては、嬉しい結果となったことは確か。ワシュウジョージの実力、そしてさらに、ワシュウと激闘を繰り広げた他地区のアラブのスター達の実力、魅力が、サラに対し全く劣るものではないことが知らしめられ、意義あるものだったと思う。
ということで、今日はワシュウの勝利と強さに、祝福と賛辞を心より捧げておきましょう。そして今後のお楽しみは、その強いワシュウと、全国のアラブの強豪との激突の機会。いつのことになるかは判らぬが、可能であればワシュウの能力がピークであるうちに。
最後は"アンチワシュウ"のワシらしく、こんなコトバにて。
「ワシュウの強さと評価が上がれば上がるほど、その倒し甲斐も上がるのだよ。さあ、容赦なくワシュウジョージを越えていけ、愛しのアラブの強豪たち。いま、そのヨロコビが、アラブの世界の中に、間違いなく、ある――」
2001.10.23 記
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