第32回ヤングチャンピオン観戦報告

 2001.11.18、福山、1600m

今回の観戦記は、福山の2歳重賞ヤングチャンピオン。昨年までは12月の前半に施行されていたのだが、2歳の全国交流重賞、全日本2歳優駿が新設されるにあたり、従来までの施行時期をこれに譲り、自身の施行時期は3週繰り上がった。そして、これまでの福山2歳チャンプ決定戦から、全日本2歳優駿に向けての、地元勢の前哨戦にしてトライアルレースへと、その意義と位置づけが変化した。このレースの上位入線馬(招待馬の頭数によるが恐らく4、5頭)が地元代表として選出されるとのこと。
実のところ、これまでワシ、2歳戦ってあまり興味があまりなく、また苦手でありまして。しかし今回は、2歳の全国交流競走を控えて、その予習としての意味合いから、加えて、今年はここまで、それなりに福山の2歳馬はチェックしているので、彼らへの関心はなくもないわけで、現場観戦に腰を上げた次第。

住処を出たのは昼前。相生−岡山間を新幹線ですっ飛ばして、その他の区間は在来線にて。競馬場には2時半過ぎに到着。
天気は晴れ。馬場状態は良。場内でふささんとお会いする。今日は福山でいつも御一緒する、他の皆さんは欠場のようだ。

メインレースのヤングチャンピオン。因みに前開催には、このレースへの前哨戦という意味合いを込めてか、2歳の上位3組戦が、距離千六で、かつレースタイトル付きで行われた。1組戦がニューヒーロー特別、勝ったのはドリーミングの全妹アヤヒカリ、好位からの差し切り。2着がホワイトキャンプで3着先行ダイニアキフジ。2組戦がビクトリー特別。1着はマルサ、2番手から抜け出しての勝利。3組戦がエクセレント特別。1着ユキノホマレは後方よりの差し切り勝ち。

ということで、上記3レースの結果も踏まえて、決定した出走馬は内枠より以下の10頭。()内は騎手。
サンコーアイボ(久保河内)、ヒットランナー(山田)、ダイニアキフジ(鋤田)、ルパンユイナ(片桐)、イケノアカデミー(吉延)、ピアドティジェイ(嬉)、ホワイトキャンプ(岡崎)、ユキノホマレ(佐原)、マルサ(野田)、レディースアポロ(岡田)
負担重量は馬齢定量。牝馬のルパンユイナとイケノアカデミー、ピアドティジェイ、レディースアポロは53kで、他馬は54k。

前走がニューヒーロー特別の8頭に、ビクトリー特別とエクセレント特別それぞれの勝者、マルサとユキノホマレが加わるというラインナップ。ただ、肝心のニューヒーロー特別1着馬、アヤヒカリの姿がないのは何とも残念。
ヒットランナーの鞍上は、当初黒川騎手であったのだが、この日第1レースで1着入線後に落馬しておまけに蹴られたそうで、以降のレースは乗り替わり。ということで山田騎手は代打。先週の福山菊花賞では、岡田騎手落馬の代打で見事重賞勝ちを収めた黒川クン、その翌週に自身が落馬リタイヤとは、「因果は皿の縁」と言おうか、何とも。

さてパドック。11月も半ばを過ぎ、この時間になると太陽が西に傾いて、パドック側はスタンドの影にすっぽりと覆われる。
1番サンコーアイボ。二人曳きで首をグイと下げて気合い乗りを見せている。毛艶はなかなか良好。
2番ヒットランナー。腹周りの重く映る体型。ちょっと印象薄い。
3番ダイニアキフジ。アキフジクラウンの全弟。気性の激しさの現れか、時折小走りになる。馬体重489k、大柄で背も高い、なかなかに見栄えがする。毛艶はまあまあ。
4番ルパンユイナ。マツノホープ、モナクマリンの半妹。気合いは入っている。というよりもむしろイライラしているよう。兄たちと同様明るい栗毛の皮膚は薄そうで、毛艶は良い。
5番イケノアカデミー。牝馬ながら馬体重481kと、なかなかの馬格で、ボリューム感溢れるいい馬体。毛艶はまあまあ。
6番ピアドティジェイ。ピアドオスカーの半妹。時折小走りになる。ちょっと貧相に映る。特に後半身が乏しいか。
7番ホワイトキャンプ。アラブ王冠馬マジックフエルドの全弟。たまにガッとなるのを二人曳きでなだめられての周回。馬体重465kは前走比+11k。元来がコロンとした体型ではあるが、それでもちょっと太いか。
8番ユキノホマレ。比較的大人しく周回。毛艶はまあまあ。馬体重500kの大型馬、体高がある。
9番マルサ。毛艶はまあ良い。実物を目撃した時は、ヒ腹が細いかなあと思ったが、写真で見直すと、肩、胴、トモと、いい感じで筋肉がついている。
10番レディースアポロ。二人曳きで鶴首気味の周回。
なお、ダイニアキフジ、ピアドティジェイ、ホワイトキャンプについては、鞆の浦賞観戦報告中に、彼らの前々走についてちょっと記してあるので、併せてそちらも参照下さい。

予想。実績からしても堅実差しの脚質からも、中心はホワイトキャンプで大丈夫だろう。相手は素質重視でダイニアキフジとルパンユイナを。ダイニアキフジは気性に帰因するゲート難があり、ちょっと信頼しきれないので、ルパンユイナの方を厚く。『福山エース』紙上でも「ダイニアキフジは外枠が引けなかったのは痛い。」と指摘。

いよいよ発走。レースの施行距離は1600m。向こう正面中程からスタートして1周半。
ゲートオープン。発馬が心配されたダイニアキフジだが、ちょっとアオリ気味になったところでゲートが開いた体裁、結果オーライになってこれは好発。ピアドティジェイがハナを奪い、内でダイニアキフジがこれに続く。ホワイトキャンプは後方から。ルパンユイナの出足はいま一つで、これも後方からの競馬になる。
はじめの3、4コーナーで、イケノアカデミーが上昇して2番手に。積極的に行くかとも思われたマルサは、この馬にしては控え気味に先団の外。
そして正面スタンド前。ペースは見るからにスロー。先頭内にピアドティジェイ、1馬身弱下がった外に2番手イケノアカデミー。3番手インベタでダイニアキフジが控え、マルサはこの外。以上4頭が先行気味で、ここから4馬身くらい開いて以下好位勢。ヒットランナーとレディースアポロが併走し、その後ろインにサンコーアイボ。ホワイトキャンプはこの外、前から7、8頭目。2馬身ほど下がってルパンユイナはケツ2。殿はユキノホマレ。
1周目、先団(44KB)
1周目の正面スタンド前、先団
先頭ピアドティジェイ、2番手イケノアカデミー
1周目、中団以降(45KB)
1周目の正面スタンド前、中団以降
ホワイトキャンプは7番手くらい、その後ろ、流星の栗毛がルパンユイナ

勝負が動くのは向こう正面から三角手前。中団からホワイトキャンプが進出開始。鞍上岡崎さんのアクションが大きくなり、じわりじわりと上昇。3コーナーを前に、ピアドティジェイはお疲れさん。代わって先頭に立つのはダイニアキフジ。2番手キープでこれを追うイケノアカデミー。しかし三分三厘、外から遂にホワイトキャンプが迫る。これを追ってさらにその外にルパンユイナ。マルサは3番手あたり維持のままから上昇するでもなく、逆に脚が鈍ってしまう。
4コーナーを先頭で回ったのはダイニアキフジ。次いでイケノアカデミーが通過するも、ホワイトキャンプが外から抜き去ってこれが2番手。そして最後の直線に。鞍上鋤田の剛腕に叱咤され、内で必死に粘り込まんとするダイニアキフジ。離れた外、馬場五分どころを差し込むホワイトキャンプ。その差がジリジリと縮まって、残り100m程で追いつくホワイトキャンプ。結局残り30mあたりでホワイトキャンプが前に出て勝負あり。最後は1馬身差をつけての重賞Vゴール。会心の勝利だったのか、ゴール板通過後、岡崎さんの左腕がサッと真横に上がった。
2着ダイニアキフジ。ルパンユイナが直線大外を追い込んで2馬身半差の3着。4着は道中ホワイトキャンプに連れて上昇したらしいレディースアポロ。5着は四角2番手で通過も終いは抜かれたイケノアカデミー。

ホワイトキャンプ(45KB)
ホワイトキャンプ、差し切りV
内で粘るダイニアキフジを交わす

勝者のホワイトキャンプ。相当ズブいらしいが、2歳早々から後ろからの競馬でコンスタントな成績を収めている、生粋の差し馬。その個性を存分に発揮しての勝利。前半はゆったり構えて、向こう正面から確実に押し上げ、直線しっかり差し切る。抜群に斬れるとか、破壊力があるという印象はないものの、バテずに終いまでジワジワと伸びる、まさに"長くいい脚"を使うことが出来る。まあ逆に言えば、テンの行き脚がないということなのだが。イムラッド産駒は早熟・短距離得意の傾向が非常に強いので、今後どうなるかは心配ではあるが、とりあえず全日本2歳優駿、地元の筆頭として恥ずかしくない競馬を希望。余談だが、後日「ペルターブレーブになるか、ランダムオークになるか、はたまたマイクリスになるか?」(いずれもイムラッド産駒の差し馬)とディープさんに言うと、妙にウケて下さった。
ダイニアキフジはまともにゲートを出ての2着。今日は正攻法の先行競馬。最後までしっかりした足どりであった。この馬、気性難が解消したら相当なものだと思う。父ホーエイヒロボーイに母父アリラバットという血統からも、本格的な成長はまだまだこれから。兄アキフジクラウンの例を持ち出すまでもなく、距離適性も長距離において高そう。来年の今頃は、ひょっとしたら大仕事をしているかも。とはいえ、この気性が容易く改善されるかも疑問であるが。
ルパンユイナは先行競馬を志向しているであろう割には、これで2走連続後方からの競馬。ゲートが巧くないのか。目撃するのは今日が初だったが、なかなかの素質だとは思った。ルックスはマツノホープにかなり似ている。
その他では、ちょっと注目のマルサだったが、何となくの先団から伸びずの8着敗退。「逃げてこそ」の馬だと思うのだが。ピアドティジェイは9着。やっぱり超早熟か。

ホワイトキャンプ、口取りへ(45KB)
口取り撮影に向かうホワイトキャンプ
若駒の勝利への喜びが滲み出た皆さんの笑顔

表彰式を終えて、通路を戻ってくる岡崎さんに声を掛ける。「おめでとうございます!強いですね。」。岡崎さん、いつものニヒルなポーカーフェイスをちょっと崩して、嬉しそうに「ありがとうございます。」と応えて下さる。そこで続けてワシ、「次の全日本、イケる(=勝てる)んじゃないですか?」と訊くと、「いや〜どうですかね。でも頑張りますよ。」と、謙遜と手応えの両方を感じさせるお答え。頼りにしておりますよ、岡崎センセ〜。

最終レースのB1戦、ひいらぎ特別には、ふささんの愛馬ノアが登場。しかしこのレース、ノアと同厩(外山厩舎)の馬が4頭も登場。結局ノアは2番手ママで、同厩でハナを切ったハマノジョージがそのまま逃げ切り勝ち。なおこのレース、上山のオープン馬だったヒカミハヤブサが福山転入緒戦。「ドリーミングに続け」というところだが、馬体も重々しく、毛艶も冴えない見た目。結局後方追走のまま7着でレースを終える。

ということでこの日の競馬も終了。場内でふささんとはお別れして帰路に。鈍行乗り継ぎで無事帰着。
以下は後日談。翌週の全日本アラブグランプリ時、『福山エース』紙上に、全日本2歳優駿の出走馬が掲載される。この時点で招待馬が4頭。ということで地元勢は、ヤングチャンピオンの1〜6着馬。この"やっつけ"的な地元馬選考に対して、FUKUさんやディープさんの突っ込みが炸裂。曰く、「おいおいホンマにこれでいいのかよ?そりゃ単純明快だけれどもさ、これまでに稼いできた賞金とか勝ち星とか実績とかは全く考慮されないってことだろ。」「当然のことながらヤングチャンピオン不出走のアヤヒカリはアウトやしなあ。」「TVのバラエティ番組とかでやってる、最終問題だけ得点高くてさあ、それで勝ち負け決まっちゃう、インチキクイズみたいやんか。」。
まあ、地元福山勢の面々には、ここは発奮いただいて「インチキなんて言わさんけ!」というくらいの好走を希望しておきましょう。「え〜?!主役はレビンマサでええやん。」まあここのところはそう言わず・・・

2001.12.1 記

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