2003年度、瀬戸内賞観戦報告
2003.6.8、福山、1600m
◆はじめに、そして出走メンバーについて〜思うところ交えつつ
中央補助馬の晴れ舞台、瀬戸内賞。
3歳中央補助馬交流としての瀬戸内賞(ローゼンさんによれば、大昔には同名の条件特別が存在したらしい)は、'97年、非重賞の特別競走としてスタート。この初回はニホンカイユーノスが、翌年はチュウオーロッサが勝利。そして3度目の'99年より、重賞に格上げされている。
1着賞金は、特別競走時代の2年が300万円、重賞となって以降は500万円、これにかなりの額のJRA所有者賞が加わる。
当初は福山、高知、益田、兵庫の4地区交流だったところ、'01年からは全国交流へと拡大されている。
今年の出走馬は、内枠より以下のフルゲート10頭。()内は騎手、性、斤量。全て牡馬にしてハンデ54kの馬齢定量戦。
ビートザウイング(岡崎、牡、54k)、ユタカレオグリン(野田、牡、54k)、ユノエージェント(嬉、牡、54k)、モナクラムセス(岡田、牡、54k)、ムツミセンター(對ィ、牡、54k)、フジナミスパート(周藤、牡、54k)、コスモユーメー(倉兼、牡、54k、高知)、マリンジョージ(池田、牡、54k)、ムサシボウタッチ(石井、牡、54k)、ドウモナラン(片桐、牡、54k)
参加地区のバリエーションは、既存4地区に金沢と荒尾が加わった'01年が結局ピークで、今回他地区からの参戦は、高知のコスモユーメー唯1頭となってしまった。昨夏の益田廃止、兵庫のアラブ競馬縮小という背景があるにせよ、これはあまりに寂しい。九州荒尾にも少なからず中央補助馬は在籍し、その筆頭たる、重賞門松賞馬メグミヒリュウには是非出走して欲しかったのだが、最近不振のようで、結局地元大一番荒尾記念にも姿を見せなかった。残念。
1着賞金500万円は維持されて変わらず。地方競馬の各地区が軒並み賞金を減額し、アラブ競走とあれば尚更の昨今において、これは相当高額。殊に園田の楠賞が、馬鹿みたいに賞金下げたおかげで、この2レースの本賞金、同額となってしまった。
「ま、こっち(瀬戸内賞)は中央補助馬の全国交流で、あっち(楠賞)は非中央補助馬の全国交流。それだけのことやろ。楠賞勝ったからって種馬になれるわけでもないし、権威もクソもない。」と、"同志"ディープさんがクールに語る。事実はそうなのだけれど、個人的には何とも承服し難いところだ。瀬戸内賞の格にケチつけているのでは決してない。楠賞のそれを大暴落させてしゃあしゃあとしている当事者が憎たらしいのだ。
この賞金事情のもと、中央補助馬にして福山ダービー馬の、つまり両レースに出走資格を持つ、福山3歳筆頭ユノエージェントが、楠賞に行かずここに参戦。「地元のマイル戦と、遠征競馬の長丁場、賞金同じだったらどっち走った方が確実で安全か。」その答えは明らか、この選択は責められまい。
ただ本音としては、楠賞に出ないのは非常に残念で勿体ない。近年の福山ダービー馬中でも、レースぶりや気性の安定度と地力は、「期待値」という下駄履かせずともトップ、最も勝ち負けに近い馬だと思われただけに。これほどの大物に振られた楠賞、その主催者、駄目駄目だ。記すのもじゃあくさいが(毒毒)。
◆当日の概況
現地には1時前に着。事前の週間予報では雨と告げていたが、それは大外れで、先週後半からずっと好天、この日も晴れ。湿度は少なくカラッとしており、風はソコソコある。が、とにかく気温が高くて暑い。日差しも強く、午後はまともに日向となるスタンド前で過ごしていると、どんどんヘバッてくる。みるみる日焼けするのが自分でも判る。こうなると帽子持ってこなかったことが大失敗。さまにべっぴんさんも珍しくキャップ被ってらした(さまにさんがここにいること自体ちょっと珍しいけれど)。
馬場状態は良。最近の砂入れは先週開催の前で、直前にはそれがなかったそうだが、深さは維持されている感じ。極端な逃げや差しが決まらぬようで、また、人気どころが平気で連対落ちする、傾向を非常に掴みにくい馬場のようだ。そういった馬券オヤヂの愚痴も耳に入ったし、現に前半戦は、連勝式の配当、軒並み四桁。
この日はメインレースの瀬戸内賞以外にも、楽しみなレースが多い。が、それについて以下に記し続けると、分量食い過ぎて、瀬戸内賞の観戦記としては体裁が不格好になること必至。よってこれらについては別ページにて。書き手の都合(美意識と呼んでくれ!?)故のことで申し訳ないですけれど。こちらです。
◆パドックから発走まで
というわけで、話題はメインレース、瀬戸内賞のパドックタイムへとワープ。
1番ビートザウイング。一応福山ダービー2着馬にしてキングカップ3着馬。前開催は休んだのでダービー以来の実戦。胴長背高でスリムな体型。特に後半身はかなり細い。加えて顔がやたらに細長い。毛艶はなかなかで皮膚も薄そう。
2番ユタカレオグリン。通算17戦1勝2着5回3着5回と一見堅実だが、2歳秋からずっとこんな感じで突き抜けない馬。前走前開催の3歳1組戦7着。馬体重427kの値通り小柄、背も低い。フォルムもレオグリングリン産駒にしては重量感がない。気合いはかなり入っての周回。
3番がユノエージェント。胴も長く背も高く、加えて首の付く角度がやや立っているので、馬体重495kに増してさらに大きく見える。実入りも充分。うっすら発汗して、かなり黒めな灰色まだら芦毛の体表がテラテラ輝く。首を上下してキビキビとした身のこなし。前開催休んだので、ダービー以来の実戦である。
4番モナクラムセス。近4走2勝2着2回と好調だが、前走勝利も3歳3組戦であり、格はまだ低い。マイル戦も今回初。因みにあの、往年の兵庫の女王ヒカサクイーンの仔。チャカチャカと気配は煩く、それが故か、10号馬の後、最後にパドックに入場した。
5番ムツミセンター。福山ダービー3着で、前走はC2の8組戦2着。じんわりとした気配で大股な歩み。胴長首長、腹は重いのだがヒ腹が上がっていて、加えてケツが小さい、何となく珍なるフォルム。
6番フジナミスパート。ダービー6着、前走3歳1組戦2着。胴がかなり太い、そして写真で見ると、腰よりもキ甲の高さの方がやたらあるようなルックス。張りは充分で発汗も相まって体表は光っている。じんわりした気配。
7番高知のコスモユーメー。高知3歳三冠重賞の第一弾たるマンペイ記念2着馬で、これが前走。明るい栗毛ということもあって、入場当初から汗の滲みが目立つ。やや煩い気配だが、輸送競馬でもありこれは想定されたこと。ただ馬体重441kで前走比-18kというのは、やはり減り過ぎか。が、日頃がいかなるルックスかは判らぬが、それほどガレた感じはなかった。体高ありそうで目方以上には大きく見える。が、ディープさんはじめ、少なからぬ同志の方々は「見た目感心しないな。」と、いい印象抱かなかったようで。
8番マリンジョージ。前走3歳1組戦4着、この前走が自己最高位なのでちょっと格下。馬体重438kの値通りコンパクトな、そしてフツーの鹿毛馬。ケツは小さめ。キビキビとした身のこなし。
9番ムサシボウタッチ。追い込み一手で勝ち味に遅いながら、2歳晩秋から3歳初頭にかけてはかなり期待された馬。ところがキングカップ6着ダービー7着と、近々の結果は散々。前走3歳1組戦も6着。元来がスラッとした体型だが、相当な発汗で鹿毛の体表がギラギラしていることもあって、一層細さが強調されている。ケツの小ささも目立つ。
10番ドウモナラン。補欠待遇からの繰り上がりで登場。6走前に3歳5組戦を勝って、5走前には高荒福交流4着したものの、以後5着4着8着とさっぱりで、前走前々開催の3歳1組戦も9着大敗。首を上下してキビキビとした周回。明るい灰色芦毛ではあるが、それにしても馬体張りは目立たない。
本馬場入場から返し馬。モナクラムセスは入場口から即左折で一角方向に直行。最後に入場したドウモナランも同様。ビートザウイングは一角側へ暫く曳かれていって、そこから離されやはり1コーナーへ。そして真っ先にホームへ流してくる。伸びやかなキャンター。モナクラムセスはやはり気性難しいのか、返し馬の口向きも悪い。ユタカレオグリンのキャンターはピッチも強くシャープ。ユノエージェントは割と強めの駆けりで、嬉騎手の手綱は張り気味。ムサシボウタッチは軽め。コスモユーメーも楽に。最後にムツミセンターが、他馬よりかなり遅れてダクでホームを通過。「對ィ、何ともやる気なさそうな返しやなあ。」とはディープさん。
予想。アタマはユノエージェントで鉄板。考えるのは相手だけ。ところが、これが何とも難しく、また配当の割には旨味のないもの。
実績だけを見れば、ユノに次ぐのはビートザウイングなのだが、元来が自分でレース作れない、他力本願な追い込み専門。ダービー2着もキングカップ3着も、先行勢が崩れたところを終いなだれ込んでのもの。殊にダービーは、前に行って押し切ったのは勝ち馬だけ、逃げずラピッドリーラン、早々沈没デザートビュー、保たずスイグン、と、これらが悉く勝負から脱落した後での終いイン強襲。距離がマイルに縮むのも不安。ダービー3着のムツミセンターも同様な脚質。というわけでこの2頭、ダービーの着順をそのまま実力だとは認め難く、信頼を寄せるには余りに役不足。とは言うものの、他にこれといった馬も見出されず・・・
このような状況もあって、コスモユーメーが、他地区馬故の未知の魅力と、通算11戦6勝2着4回の戦績からか、かなり人気になっている。ユノエージェントとの組み合わせは、連勝式のどの券種も1番人気のオッズを示し続け(最終的には馬単だけは、ビートザとの組み合わせに1番を譲ったようだが)、単勝も2番人気。これには高知のもりも先生、かなり焦って、曰く「みんなぁ、たかだかコスモユーメーなんだよぉ。もっと冷静になろおよぉ〜」と。Oku師匠やディープさんも同意見のよう。さりながら「じゃあ他に買う馬は?」となると、返答に困るところ。
その中にあって、"リーダー"前田っちは「今日もムサシボウタッチ、買うでえ。こうなったらとことん付き合ったるで。」と、昨秋来半ば腐れ縁となりつつあるこの馬も、馬券対象にした模様。ワシは結局、ユノエージェントから馬単でばらばらと。「やだなあ、どれが2着でもトリガミなんとちゃうか。」と、買った後で気付く。
◆レースなり
さてレース。距離1600m。向こう正面半ばがスタート地点。ゲート入りを嫌がるのが1頭、これが注目のユノエージェント。相当時間を費やして、ようやく発走。
ゲートが開く。一瞬ユタカレオグリンの出が目立ったが、程なくユノエージェントが前に出て、三角手前、すんなりハナに立つ。ユタカレオグリンの外へモナクラムセスが続き、さらに外からコスモユーメーも先行希望。
正面スタンド前。先頭変わらずユノエージェント。後続とは3馬身程度の差、余裕の走り。次列は4頭。内にユタカレオグリン、中モナクラムセス、外マリンジョージ。コスモユーメーはラムセスとマリンの間、ほぼ同列ながら僅かに下がって。次いで内にビートザウイング、やや下がって、馬場中程にムサシボウタッチ、その外にフジナミスパートが併走。ここで隊列が切れて、ケツ二がムツミセンターで殿にドウモナラン。
最初の正面スタンド前
先頭エージェント、次列は4頭ほぼ一線
1、2コーナーあたり、ユノエージェントは楽々先頭快走。次列内からユタカレオグリン、モナクラムセス、マリンジョージ、3頭タイトに併走で、うち外2頭の方が積極的か。コスモユーメーはここからはみ出してしまった感じで直後を走行。
そして向こう流し。ユノエージェント、スイスイ走るうちに後続を離していき、3コーナーを回る頃には既に独走となる。そして三分三厘、ブッチ切りの大差をつけて、最後の直線もそれっきり。結果後続に2秒の大差をつけて、ゴールを駆け抜けた。記すにコトバに困るほどの、圧勝楽勝なり〜。
ユノエージェント、楽々のゴール前
しかしながらフォームは高いし口も割り気味
こうなるとレースの焦点は2着争い。時間を向こう流しの場面まで戻して。先団4頭のうち、若干先んじたのはマリンジョージ。しかし外からコスモユーメーも押し上げる。三角回ってぐいぐいと、そして遂には2番手にまで。「おおっ!コスモユーメー行けるんとちゃうか。」と、"大御所"Oku師匠やもりも先生も色めき立つ。そのまま4コーナー回って最後の直線に。後続からも数頭(全く)追ってきてはいるが、コスモユーメー、何だかんだでよく持ちこたえて2着入線。
コスモユーメー2着獲る!
よくやった!イイぞ
以下はリアルタイムでの記憶なし。1馬身差の3着は中団からフジナミスパート。3/4馬身差の4着は先行粘走ユタカレオグリン。マリンジョージは四角3番手で回って内で粘るもハナ差5着。ムサシボウタッチは中盤半端に好位まで来たようだが、結局半馬身差6着。ビートザウイングとムツミセンターは中団以下のママで、7着8着と枕を並べて討ち死の体裁。9着好位から終い脱落したモナクラムセス。最下位殿ママで「どうもならん」の(←定型句!?)ドウモナラン。
口取り撮影、鞍上の嬉騎手の掲げた左手、突き立てる指3本。重賞3つ目ということね。この後、オーナーの眞吾さんが気を配って下さり、スタンドの方にも馬を向けて下さった。さらにさらに、ちょっと距離のあった、まりおさんニーナさんの前までやって来てぐるり。うひゃうひゃ状態の"アラブなオンナ"2名でありました。
◆振り返って、そしておしまい
「勝ち時計、1分48秒フラットかいな!この馬場でこのタイム、ムチャムチャ速いで。しかも終い流しとるやろ。」。このOku師匠のコトバで、ユノエージェントの今日の総括は足りよう。同距離の第8、第9レースのタイムがそれぞれ1分50秒9と1分51秒2であるからして、段違いなのである。戦後樋本デスクがHPに記したところによれば、嬉騎手、「逃げて勝ったことがなかったので、それだけが不安だった。」そうだが、それも全く杞憂だったということ。が、ここまで楽勝だと、2着争いに注目が行ってしまうことも手伝い、結果に関するインパクトの大きさの割には、馬自身の印象が不思議と希薄になってしまった。そもそも、同じレース走るのが違和感あるよな。
コスモユーメーは大健闘の2着。「道中あんなちぐはぐなレースで2着するんやから、力あるで。」とは、これもOku師匠。ワシはそれほどちぐはぐとも思わず、終始先団で踏ん張ってよくやったと感じたが。陣営としては何より嬉しいのは、やはり賞金だろう。2着の本賞金は150万円、これにJRA所有者賞が66万円で計216万円。地元で三冠達成しても及ばない額なんである。そして意義深いのは、この馬と接戦を繰り広げる、高知の3歳有力どころ総体のレベルが、決して低くないということが明らかになった点。とにかくこの2着は、貴重な2着だ。
その一方で、ビートザウイングやムツミセンターやムサシボウタッチといった、地元有力どころのイマイチさといったら・・・着順悪過ぎ。ただ、ビートザウイングに関しては、この先ちょっと気になる存在。というのも、この馬、同時期のユキノホマレに、戦歴とキャラクターがちょっと似ているので。すなわち、比較的早い時期から上位なれど、追い込み脚質で勝ち星には乏しい、が、隙あれば上位入線し得る、という。馬体の雰囲気も近いし、父ナタリージョージはユキノの父ミスタージョージの産駒。加えて同じ田代厩舎所属。さて、今後どうなるか。何しろユキノホマレは、実に希有な出世遂げた馬だからして、その真似は、なかなか。
馬券は案の定、トリガミ。
最後に、再度主役のユノエージェントに触れたい。この圧勝目にしてしまうと、「やっぱり楠賞、出て欲しかったよなあ・・・」という未練、一層増してしまう。「楽々走ってるから消耗してないやろ。中10日で連闘してしまえ!」無茶な冗談とは百も承知なれど、そう言いたくなるよなあ。
楠賞来てほしかったなぁ・・・ボソ
今からでも来てよぅ・・・ボソボソ byまりおさん@『オヨヨボード』
↑
これぞファン心理なり。
2003.6.18 記
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