第42回楠賞 兵庫アラブ優駿観戦報告
2003.6.19、園田、2400m
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はじめに
楠賞といえば、間違いなく園田の看板レースであった。「園田の誇る」との修飾句も、何ら誇張ではなかった。
が、主催者のサラ化政策のもと、辿り着いた果て、今年の実態は以下の通り。
・「全日本アラブ優駿」の併称は「兵庫アラブ優駿」に変更。
・1着賞金、昨年の800万円からさらに下がって500万円。
・アラブ3歳全国交流としては、公式発表こそないが、間違いなく今年で最後。
思うところはいくらでもあるが、書くだけ腹立たしいし馬鹿馬鹿しい。が、敢えて一言、どうしても記させて貰いたい。
「主催者が誇りを失った競走(主催者に誇りを剥奪されたと言うべきか)ほど、無惨なものはない――」
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出走メンバーについて
出走馬は内枠より以下のフルゲート12頭。()内は騎手、性、斤量、所属地区。牡馬55k牝馬53kの馬齢定量戦。
スイグン(片桐、牡、55k、福山)、ブラウンブルドン(宇都、牡、55k、名古屋)、ニホンカイブルー(小牧太、牡、55k、兵庫)、ヤマノユーノス(東川、牡、55k、笠松)、サンクリント(田中、牡、55k、兵庫)、シルバーブレット(蔵重、牡、55k、金沢)、クールフォーチュン(岩田、牡、55k、兵庫)、ビミョウ(平松、牡、55k、兵庫)、キジョージャンボ(丸野、牡、55k、名古屋)、シルクダイオー(米田、牡、55k、兵庫)、ミハラエンペラー(坂本、牡、55k、兵庫)、ミルフィーユマリモ(関本淳、牝、53k、上山)
こんなトホホな楠賞ながら、有り難いことに、他地区から6頭参戦してくれた。各地区の筆頭馬も多い。
上山からはミルフィーユマリモ。唯1頭の牝馬である。昨年の全日本2歳アラブ優駿2着馬。今季の上山競馬、アラブは2歳馬以外全てサラと混走、この事情のもと、サラ3歳A2戦で2着4着。息の長い差し脚が武器。因みに父は上山往年の長距離王カガヤキヨシオー。
金沢からはシルバーブレット。ムラのある戦績は気になるが、地元2歳重賞アラブフレッシュカップと、今年5月の3歳特別アラブ優駿の勝ち馬。両方を一頭占めは昨年のチョウヨームサシと同じ。冬季に名古屋出張して、この時A4戦を勝っているのも同様。「この時点でA4を勝てるのは評価に値しますよ。」とは3号馬さん。
レベルの割には意外と楠賞に縁がない東海地区だが、これは5月中・下旬に笠松でアラブダービーがあり、楠賞と日程重複していたが故。今年は両者の日程がずれたこともあり、二強が揃って登場。
まずは笠松のヤマノユーノス。先月の名古屋アラブカップと笠松アラブダービー、重賞を連取。かつては出遅れ癖ある追い込み馬だったようで、全日本2歳アラブ優駿5着時もそんな競馬だった。が、ここ2戦は好発からの逃げ・先行競馬で、終い叩き合いを競り勝っている。その勝負根性は特筆もの。元来が追い込み型だけに、前付けしても、終いの脚に斬れがある。
そして名古屋のブラウンブルドン。ここ2戦はヤマノユーノスに、それぞれクビ差ハナ差の惜敗。いずれも最後の直線一旦ヤマノを抜きつつも差し返された。が、能力はこれと互角だろう。ブラウンダンディの全弟で、その兄は若葉賞(今はなき、他地区馬も出走可だった楠賞トライアル)で3着して登場するも最下位だった。ルックスは当時の兄よりは上だけに、兄以上の走りに期待大。
名古屋のもう1頭キジョージャンボは、当初出走予定だった福山のビートザウイングの回避により、他地区補欠待遇から繰り上がり。アラブカップとアラブダービーは共に5着だが、二強からは遙か遅れての入線。前走地元3歳特別戦を勝って臨むが、現時点で古馬編入に至らぬのは格下の証。「参加することに意義がある。」とゴールドレットさんもズバリ。
そして福山。優先出走権のある福山ダービー馬ユノエージェントは賞金同額の地元重賞瀬戸内賞に矛先を向け、ここは登場しない。代わって出走するのはダービー5着馬にしてキングカップ2着のスイグン。実績はユノエージェントに到底及ばぬが、初夏を迎えての成長は急。前走C2の3組戦は、自然と逃げ競馬になって後続を楽々突き放す圧勝。あのエイランボーイの全弟でもあり、ルックス・雰囲気共、偉大なる兄に似たものがある。
迎え撃つ地元勢は6頭。
その筆頭はサンクリント。デビューは昨年12月と遅かったが、初戦の800m戦を2着に落としただけで破竹の進撃。8連勝でフクパーク記念(今年は指定競走に格下げで重賞の星にならぬのが悲しい)を制した。前々走は初の古馬S1戦で3着だったが、前走のS1戦では、好調ストロングゲイルや新春賞2着馬ソレユケイチマツ以下、古馬有力どころを下し、能力を強烈にアピール。あのサンバコールの全弟で、レースぶりも必殺技がバック捲りと同じ。顔の流星の入り方まで似ている。
ニホンカイブルーは、フクパーク記念2着で優先出走権を得て登場。園田2歳優駿2着馬で昨晩秋来の有力どころだが、なかなかレースで勝てない馬。以前は後方からの競馬だったが、最近は先行脚質になっている。
他の地元4頭は収得賞金上位馬。以下その順に。
まずはクールテツオーの全弟、クールフォーチュン。全日本2歳アラブ優駿の勝者だが、その後4ヶ月半レースを遠ざかり、フクパーク記念がぶっつけの復帰緒戦で5着敗退。以後2戦して3着1着だが、昨秋の状態には遠そう。馬体重もその頃より10kほど軽く、戻っていない。
シルクダイオーは年明けから3月にかけての、5戦4勝2着1回の好成績が効いて、賞金を着実に加算。しかしながらこれは最上位と当たらぬ状況でのこと。現にクリスタル賞もフクパーク記念も4着と、地力差が着順に素直に出ている。
ビミョウは道営デビュー、全日本2歳アラブ優駿にも出たが8着(単勝2番人気!)。正月開催から兵庫所属。以後9戦して2着6回3着2回4着1回と、堅実だがどうしても勝てない。エンジンの掛かりが遅い、そして末を活さねば良さが出ない追い込み馬。長丁場は合いそう。
ミハラエンペラーは事前登録馬のうち、賞金順は6番目だったところ、上位2頭の回避で滑り込んだ。4月以降4連勝でこの数字は目立つが、古馬混合の下級条件でのこと。因みに父は、近年有数の名馬ながら、意外に産駒は多くないコスモノーブルである。
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当日の概況
季節は梅雨の真っ直中。案の定、天気予報は雨。しかも梅雨前線が故でなく、何と台風。よりによって楠賞デーに、日本列島上陸とのこと。雨だけは絶対イヤなので、ハラハラしつつ迎えた当日。台風は九州直撃したものの、真北に進路を取ったため、関西はその影響を免れたようだ。しかもこの台風、梅雨前線を日本海まで押し上げてくれて、却って天気好転の一助となった。
というわけで、朝からくもりで雨は落ちていない。空は明るくなったり暗くなったりを繰り返しつつ時間が過ぎる。曇天の割には気温は相当高く、台風が湿気を運んだおかげで、とにかく蒸し暑い。台風接近の割には風も大して吹かず、不快指数もレッドゾーンか。
昼過ぎに職場を抜け出して、競馬場に着いたのは2時頃。ここで雨粒がぱらぱらと落ち始める。「せっかくここまで保ってたのに、Uちゃん来たらこれだもん。"高気圧オトコ"のジンクスもこれまでか。」と、ニーナさんがグサリと言う。が、結局これ以上崩れもせずに、時折雨粒が落ちるような状況で、メインレースまで時は経つ。
ここ数日来のぐずついた天気のもと、馬場状態は不良。「泥田のような」と呼ぶには至らぬが。砂はたっぷり水分を含んでいて、馬が駆けるといかにもそれらしい音がたつ。
後で深夜の『競馬ダイジェスト』観て確認したところ、上位入線した馬の多くは、前半の位置取りはまちまちなれど、中盤以降進出して、直線入り口ではフロントになってそのまま押し切っている。追い込んで2着となる馬もいるにはいるが、概ね先に抜け出した方が有利。終いまで脚の止まらぬ馬場のようだ。アラブ下級条件の千四戦でも、1分30秒台の勝ちタイムが出ており、時計の速い馬場だとは推察される。
メイン前の第9レースのパドック周回が終わって暫くすると、楠賞騎乗の騎手さん達が、三々五々パドック内の控え室にやって来る。ここで「まるのぉ〜!まるのぉ〜!」と男女混声でハモって声援送るのは、ゴールドレットさんと"おかん"ことあすかさん。この頃になると、空がどんどん明るくなり、雨の心配は完全に去った。それどころか薄く日まで差すほどに。やれやれである。"高気圧オトコ"のメンツ(そんな大したもんじゃない)も、辛うじて保たれたか。
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パドック、本馬場入場、そして返し馬
そして出走馬が姿を現す。昨年も書いたが、3歳伸び盛りの精鋭の姿は、やっぱり明るい日差しの中で観たいもの。
1番スイグン。馬体重487kは前走比-7k。元来好馬格の馬だが、いい意味でとてもスカッとしたフォルムで出てきた。トモ回りに特にそれを感じさせる。馬体張りはパンパン、黒鹿毛の体表は滑らかで艶も文句ない。トモの送りも力強い。何かに驚いたのか、途中一度跳ねて駆けた。周回を重ねるうちに、どんどん気合いが乗って集中してくるのが判る。好印象との声は多く聞かれた。余談だが、この馬、鼻筋凹んだしゃくれ顔で、いわいる「アラブ顔」の典型。
2番ブラウンブルドン。うっすら発汗が目立ち、黒鹿毛の肌色も相まって、馬体が光る。毛艶もいい。馬体重493kは前走比+1kだが、馬体はスッキリした印象。体高と首の付く角度の高さが目立つ。入場当初は首を巡らせ物見加減。悠々とした周回で、前との間隔が開くくらいじんわりとした歩み。堂々たる身のこなし。
3番ニホンカイブルー。下腹のラインは直線的だが、実入りは充分感じられる。これまで目にした彼のうちでも一番の見た目。キビキビと歩いており、身のこなしも今日が一番。
4番ヤマノユーノス。首差しも胴体もスラッとしていて、トモは小さめで脚長。その一方で、腹回りはポッコリしている。目にした時はだいたいいつもこうなのだが、フォルム総体のスリムさ故、この腹のラインがどうも目立つ。いつも仕草は煩いクチで、今日も二人曳きで鶴首気味の周回。それでも輸送競馬ということを考えれば、よく抑制されている方だと思った。毛艶は上々、馬体も張っている。
5番サンクリント。暑さ故か、キン○マは若干下がり気味。513kの馬体は値通り雄大。ワシは若駒賞、フクパーク記念に続いて、実物目にするのは3度目。若駒賞の時は、「恐ろしくゴツゴツした馬体で何て力強いんだ!」と思ったのだが、フォルムはかなり滑らかになった。逆に言えばムキムキ感は薄れた。過去2度の時は、鶴首になりつつ、しきりに前脚を振り上げてバスバスやらかしていたところ、今日はまずまずじんわり周回している。前走時初めて素顔でレースを走ったのだが、今日も頭絡はメンコの下、どうやら素顔で走るよう。このあたり、気性面に落ち着きが出たということか。ワシ個人としては、以前のインパクトの方が強烈で、今日は比較的平凡に思ったのだが。
6番シルバーブレッド。470kは前走比-13k。ワシは「金沢所属馬は地元での仕上げが緩い」との先入観があるので、この値はいい傾向だと思った。馬体張りはパンパン。毛色はちょっとくすみ気味の鹿毛なので、艶はソコソコ。腹回りはボコンと太いが、ヒ腹はちょっと上がり気味。骨太なところはミスターヨシゼン産駒らしいが、フォルムはイマイチ格好良くない。鶴首になっての周回で、入場当初は気合い過多な感あったが、次第にじんわりしてきたような。
7番クールフォーチュン。馬体重421kは前走比+1kだが、結局昨晩秋の頃の目方に戻せなかった。元々胴の厚みがあるフォルムながら、その実肉が相当落ちているようで、歩いて馬体が伸縮すると、浮き出たアバラが目立つ。隣の3号馬さんもそれに言及された。「あれじゃ駄目でしょう。」と確認し合う。トモのボリュームも物足りない。小柄な馬で、雰囲気の押し出し感が薄れるとそれが一目瞭然。ちょっと鶴首気味だが、焦れ込みには至らずよく抑えられてはいる。
8番ビミョウ。ほぼ真っ白になった芦毛ながら、馬体張りはよく感じられる。首を小さく上下に振りつつの周回で、身のこなしはキビキビとしている。気合いはじんわりと。胴の実入りもガッチリしており、2歳秋門別で観た時(鳳凰賞)のような、線の細さは今や殆ど感じられない。
9番キジョージャンボ。背が高くて首も高く、馬体重499kの通り雄大な馬体。張りも毛艶も大したもので、キビキビとした周回態度も相まって、非常に見栄えがする。「キジョージャンボ、よく見える。」と、ニーナさんもおかんも。「見た目だけはいつもエエで。」と返しておくワシ。
10番シルクダイオー。馬体重440k、この中に入ると確かに小柄だが、これでも大きく作ってきた方で、コンパクトにまとまっている。毛艶も張りも上々。この馬、いつも気合い乗り充分なのだが、今日は周回を重ねるに連れ、相当煩く、明らかにエキサイト気味になった。途中1、2度暴れたほど。
11番ミハラエンペラー。503kの馬体重通り、とても大柄。体高もかなりある。加えて胴も首も長い。が、馬体全体の力感はまだ不足気味で、何となくぐにゃぐにゃしている。昨年のケシゴホーエイや、初期のベロシダハーバーのような感じ。首を上下させつつキビキビと、大外を大股で歩いている。
12番ミルフィーユマリモ。昨年は430k台で競馬をしていたところ、今季2走はいずれも417k。気になる馬体重減であったところ、目方は結局戻らず、前走比-3kの414k。ひと目でそのギリギリ感が判る。ガレてはいないのだが、胴回りも首差しも、キチキチに細いのだ。全日本2歳アラブ優駿時は431k、値以上に大きく見せ、また程良い肉付きを感じさせた馬体だっただけに、比較するにつけ、印象の違いが一層強まる。落ち着きながらもスタスタと、小気味よく歩いてはいるし、毛艶はまずまずではあるのだが。
観察するに充分な周回時間の後、「とまぁ〜れぇ〜」の声。ここでニホンカイブルーとキジョージャンボ、シルクダイオーの3頭が退場し、騎手は裏手で跨ることに。シルクダイオーはズドドドッと駆け出しそうになって、厩務員さんを引きずっていく。「パッピーケイオーでもあるまいに。」ボソッとワシ。「アハハ、ホンマにパッピーや!」と、笑うまりおさん。
ヤマノユーノス、これから本馬場へ
東川騎手も気合い入った表情だ。
本馬場入場。他馬に先んじ、シルクダイオーが真っ先に出てくる。そのまま四角方向にとっとと進んで、返し馬も真っ先に。クールフォーチュンは最後に登場。即左折して、一角方向に直行、そのまま4コーナーの待機所へ。これ以外の各馬は、ホームストレッチの途中、あるいは4コーナーで反転して返し馬に。長丁場を考えてか、全馬4コーナーまで順回りで行って、そのまま待機所に入ってしまい、再度ホームを流す馬はいない。サンクリントは外ラチ沿いを、悠然と四角方向に歩いて行く。この時点でメンコは外されて素顔。ビミョウもパドックメンコ(またまたトライバルサンダーのお下がりの、額に稲妻マークの白メンコ)外されて素顔。ブラウンブルドンもスイグンも伸びやかに。ヤマノユーノスは口を割ってのキャンター。地元では、返し馬になると煩さが退いて俄然まともになったので、これは意外。ミルフィーユマリモは充分時間をかけて、内ラチ沿いをダクで。
ブラウンブルドン、返し馬
伸びやかに駆けて、期待も高まる。
ミルフィーユマリモ、返し馬
じんわりとダクを踏んで。この目方でどうか?
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予想など
予想。ワシと辻本くんの事前予想は
こちら
。ここではワシはスイグンに本命印打った。が、実はホントの本命馬は違う。すなわち、ヤマノユーノス。先月のアラブカップとアラブダービーを観戦して、かなり惚れ込んでしまったので。「じゃあ何故に事前予想で本命にしないのだ?」というと・・・この世代で、ここまでワシが肩入れした馬、悉く頓挫しており、声を大にして応援すると、ろくなことがないから。誰かって?ダイヘイゲンとホワイトタイガーですわ・・・
相手筆頭はやはりサンクリント。確かに強いと思うが、地元断然の本命馬がここ4年、勝てていないジンクスを踏まえて、敢えて本命から外す。馬場不良というのも、前々走古馬S1で3着に敗れた時と同じ。兄バコールもそうだが、この馬、バサバサの良馬場深馬場でこそ真価を発揮する馬だと思う。「確かにそんな感じだわな。軽い馬場が合う馬には全然思えやんな。」と"大御所"Oku師匠も。続いてスイグンとブルドンを。スイグンはユノエージェントを物差しとせずとも、かなり強くなっているし、現時点でも相当なものだと思うので。さりながら福山在住おさるさんは「そんな大したもんじゃないだろう。」と、かなり醒めている。
というわけで、買う馬券、軸はヤマノ。これがアタマの馬単が勝負馬券で、馬複も押さえる。あとは、「距離延びて2着あるか?」のビミョウを軸に、上記の馬たちへ軽く。
「ヤマノユーノスねえ、どうだろう。ホントはあんまり買いたくないんだけどな。」とは栃さん。「ヤマノユーノスは出遅れ癖あるからなあ。最近は先行してるっていっても、相手が相手だからそうなってるだけだ。」とはゴールドレットさん。レットさんはヤマノよりむしろブルドンの方に期待の重心があるよう。ブルドンに関しては、長距離適性がちょっと関心事・話題となり、「そのあたり、どうなのよ?」と栃さんも。「掛かり癖はあるが近走解消されつつある。」「全兄ブラウンダンディを踏まえて・・」これらが判断材料となろうが、人それぞれ見解が割れ、結局のところ、判らぬ。
「マリモ、あの目方はどうです?」と、遥々米沢からお越しで、お目に掛かるのは久方ぶりの山形シチーさんに振る。曰く「要らない要らない。せめて430k台に戻ってたら考えたけれど。私は金沢の馬が良く見えましたね。東海2頭はいい感じしなかったなあ。だから全く買ってません。」と。相馬眼も人それぞれ。だから現場での、お知り合いの方々とのやり取りは面白い。
環ちゃんはサンクリント全面支持のよう。「いいなと思う馬はその都度いるけど、『好きな馬』は、そう簡単には作らない。」と豪語する硬派な彼なのだが、実はサンバコールのファン。その全弟クリント、気に入ったようで。そして"リーダー"前田っちは、あれこれせっせと。「ビミョウ、当然買うでぇ。フォーチュンだって買うでぇ。」と。
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レース〜誇らしく駆けろ!
いよいよレース。距離2400m。スタート地点は4コーナー、1400m戦のそれから、約50m前に出たところ。馬場をまる2周、ホームストレッチを3度通過する長丁場。
ゲートが開く。最内のスイグンがスッと前に出て、そのまますんなりハナを奪取する。ブラウンブルドンやニホンカイブルーも連れて前に、先行主張するが、スイグンを抜くには至らず。2頭とも早々に掛かっている。ヤマノユーノスはタイミング合わず出遅れてしまう。が、東川騎手に少々叱咤されると、二の脚ついて前3頭に次ぐ4番手に収まった。注目のサンクリントの発馬はまずい。全くダッシュが効かず、後方からの競馬を余儀なくされる。ゴール板通過時点でケツ二。シルバーブレットは殿。リプレイ確認したところ、発馬はかなりよかったのだが、内のヤマノユーノスが外にヨレて、外のクールフォーチュンとの間でパッチン食らって下がってしまっている。
最初のゴール板前、殿追走シルバーブレット
実は発馬後パッチン食らって。
最初の1、2コーナーから向こう正面へ。先頭スイグン。折り合いばっちりでスイスイと。1馬身程下がって2番手にブラウンブルドン。さらに1馬身弱あって、スイグンの直後にニホンカイブルー。この3頭が先団。ここで5馬身弱開いて、以下好位から後方まで、ほぼ等間隔の隊列。そのフロント内にクールフォーチュン。ヤマノユーノスは二角まではフォーチュンの外併走だったところ、徐々に下げて5番手。キジョージャンボ、シルクダイオーが併走気味で続く。やや切れてビミョウが内、直後外にミハラエンペラー。その1馬身ちょっと後ろにサンクリントが、これは10番手。外にミルフィーユマリモがいて、殿シルバーブレットは変わらず。バック半ばを過ぎる頃には、先頭スイグンが相当ペースを落としたようで、これに伴い続く2頭、ブルドンとブルーが直後に迫り、4番手フォーチュンも前に追い付く。
そして3コーナー、事件は起こる。2番手ブラウンブルドン、鞍上宇都騎手落馬で競走中止。リプレイ見直すと、宇都騎手は一旦手綱を引っ張り加減、これで馬が天を仰ぎ、次の瞬間ガクンと前につんのめっている。
2度目の正面スタンド前、先頭スイグン
見事に折り合って、颯爽と。しかし事件はこの前に・・・
しかしレースは続き、2度目の正面スタンド前。引き続き先頭はスイグン。片桐騎手、馬を励ますかのように、時折手綱を軽くしごきつつ。相変わらず見事な折り合い。ブルドンが去って、ニホンカイブルーが単騎2番手に、いまだに掛かっている感じ。四角手前あたりからクールフォーチュンが追い付いて、ブルーの外に並びかける。次列内にヤマノユーノス外シルクダイオーが並んで。ヤマノの直後インにビミョウが密やかに。その外にはキジョージャンボ、ミハラエンペラーがこの大外。この外に空馬になったブラウンブルドンが。サンクリントはこの後ろ、馬場中程からミハラの外へと出しつつ。最後列はシルバーブレットとミルフィーユマリモ、ブレットはイン、マリモは五分どころ。ピタリと折り合って位置を上げた岩田クールフォーチュンが、何とも不気味だと思われた局面。
2度目の正面スタンド前、先団・好位
2番手内ブルーだが、外からフォーチュンが交わす勢い。次列内がヤマノ。
一角手前から1、2コーナー、クールフォーチュンがニホンカイブルーを交わして前に出る。そしてバックに出たあたり、スイグンの直後にひたと張り付く。「アンタがタレたらワテがハナで押し切ったるでぇ。」とばかりに。そのスイグン、片桐騎手の手綱がかなり動きつつも、まだまだ先頭にどっかり。追うフォーチュンの方も、岩田騎手のアクションが大きくなっている。他の先行勢も、軒並み鞍上に激しく追われて必死の追走。
二角周回から2度目の向こう正面、ここでサンクリントが動く。まずはゆったり楽々と、中団以下の連中を交わして前へ。鞍上マナブの手綱が動くと、じわじわっとエンジン掛かって、バック半ば直前、シュパッと加速。先に動いて追い上げ始めたビミョウや、好位死守のシルクダイオーやヤマノユーノスやニホンカイブルー、そしてクールフォーチュンを一気に置き去って、三角手前、先頭スイグンに急接近。その周回では、一瞬スイグンを交わしたかという程の勢い。さりながらこの時点で、マナブのアクションは小休止、余裕充分か?
スイグンも踏ん張る。片桐騎手は激しく手綱を押し、肩鞭交えて叱咤する。それに応えて懸命の力走。サンクリントを併走から抜かせず、三分三厘回ってくる。追うサンクリント、交わせないのか?それとも鞍上マナブ、敢えて交わさないのか?
この後方、ヤマノユーノスがもがいてもがいて、三角あたりから集団を抜けて単騎3番手に、前2頭とは数馬身の差。この外にビミョウが、クリントには先に行かれながらも、捲り気味に押し上がって来ている。さらにさらに外にはミルフィーユマリモ。リプレイ見直すと、二角を最後に回ってから、クリント追いかけバックを急上昇。三角前では好位外まで押し上げて、ビミョウに取り付いてきた。
しかしながら優勝は前2頭の争いに絞られたような。4コーナー手前、コーナーワークでスイグンが依然先頭、半馬身のリードをまだ守っている。が、四角周回、サンクリント、マナブの左鞭連打でずんと、外から被せ気味に前に出て、最後の直線勝負を迎えた。
内スイグン、外サンクリント、片桐右鞭ふるい、マナブはシゴいて、両頭全く同列での叩き合い。が、残り100を切ったところ、サンクリントがグイと前に出て、懸命に堪えるスイグンを交わして、勝負あり。残り50で1馬身先んじ、ここからマナブ、手綱を抑えて楽走として、優勝のゴールに飛び込んだ。スイグン、惜しくも1馬身負けての2着入線。
サンクリント、スイグンを交わしてゴールへ
1馬身抜けて、鞍上マナブ、既に手綱抑え加減。
そして3着以下の争い。ヤマノユーノスが馬場真ん中、3番手で前を追う。その差4、5馬身、これがどうしても詰まらない。「このままか?」というところ、残り100を切って以降、外からミルフィーユマリモが追い付いてくる。ラインが内に寄って行くヤマノに対し、馬場真ん中一直線で馬体を併せず迫るマリモ。残り50あたりで同列となって、後は首の上げ下げ、結果クビ、マリモがヤマノを競り落として3着入線、スイグンとは1馬身半差。ヤマノユーノス4着入線。よく追い上げて最後の直線まで来たビミョウだったが、終い伸び切れず3馬身差の5着入線。
ここで大差9馬身開いた。クールフォーチュンがどうにかこうにかゴールに辿り着こうというところ、外からシルバーブレットが交わして先んじた。フォーチュンは1馬身1/4遅れた。以下、ミハラエンペラー、シルクダイオー、ニホンカイブルー、キジョージャンボの順。
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審議なり、その結果は・・・
しかしながら、実は1周目3コーナーにおけるブラウンブルドン落馬の時点で、掲示盤には「審」のランプが点灯。ということで、そのまま審議に。もし加害者がいるすれば、同列で口向き悪い感じがしたニホンカイブルーだと思ったところ、ジャンボトロンに映し出されたリプレイ観ると、問題の局面でブルーはブルドンよりやや後方、違うようだ。とすれば、審議対象は、ブルドンの前にいたスイグンか。「でもこっち(観客のいるスタンド側)から観る分には、スイグン特段ヨレたようにも見えないよねえ。」と、環ちゃんらと語らう。4コーナーで観戦していた3号馬さんも、「ブルドンが自分で蹴っ躓いたんじゃないですか。」と。他方、馬券の都合か「いやいやスイグン失格や。」との声もあって、お客さん一様あれやこれやと言い合いつつ、確定を待つ。が、なかなかそうならず、「ただ今の審議は、上位入線馬が対象となっておりますので云々」というアナウンスまで流れる。
発走時刻から15分弱経ったろうか、チャイムが鳴って、確定。同時に掲示盤の着順表示が、消える。「あ、順位変わるわ。」となると・・・
結果、「2着入線のスイグンは、1周目3コーナーで、ブラウンブルドンの進路を妨害し、同馬を競走中止せしめたので、失格とします。3着入線以下の順位は繰り上げて・・・」と。
「ホンマにそこまで邪魔したのか?」ワシを含めて、少なからぬお客さんの疑念を晴らすべく、程なく、パトロールビデオの映像が、ジャンボトロンに放映される。スイグンが外に張り気味にコーナリングしたところ、そこへ直後外を走っていたブルドンが乗り上げて、両頭の脚がもつれている。さりながら、スイグンのライン、路面に刻まれた蹄跡なりにも見えて、ワシ、リアルタイムでは、「加害者として失格とは、キツいなあ。」とも思った。が、帰宅して『名古屋競馬公式HP』に掲載された、レース映像のパトロールプレイを見直すと、確かにスイグン、1馬身ちょっと、明らかに外へ膨れており、「あれじゃしょうがないなあ」と納得。とは言え、その度合いはソコソコ、後ろが2、3馬身離れていれば何ら問題なかったろうに。よりによって、ブルドンがタイトに直後、しかも引っ掛かっているので制御しにくそうな状況。スイグンからすれば、何とも運がない。
全国交流の大一番で失格決着とは、何とも後味悪い。が、仮にお咎め無しの"灰色裁定"下したならば、必ずや後で問題となり、遺恨を残すことになりかねぬところ。であるからして、これは英断として、評価しておきたい。
しかし・・・この失格のおかげで、馬券は丸負け。2着スイグンならば、収支トントンくらいにはなっていたのになあ。ところがこの馬券、意外にも獲ったお知り合いの人、多数。「全国交流での、上山のお馬は怖い思うてん。」とはまりおさん。そうなんだよなあ。それにしても、毎度毎度、よう負けるよなあ、ワシ。そしてリーダー(←道連れ)。上山馬であるマリモの馬券、全く買っていない山形シチーさんも、何だかなあ。
旧ウィナにて口取り撮影。跨るマナブちんの表情も微妙ににこやかで満足げ。「田中ぁ、今日はようやった!」との山根さんの声援が、「『今日は』かいな!いつもはどないやねん。」とツッコミ受けていて可笑しかった。サンクリント、若駒賞の口取りでは終始煩かったのと比べれば、今日は全く落ち着いている。やはり気性面の成長があったのか。審議の時間が長かったので、充分クールダウンもしていよう。ただ、両後肢の球節と繋ぎのあたり、レース中他馬の脚と衝突したのか、血が滲んでいて、激闘を物語っていた。
表彰式では、吉田アナが、また例によって兄サンバコールを引き合いに出しつつ、嬉しそうにインタビュー。ただこの内容、場内の音響最悪で、全く聴き取ること出来ず、残念。山根さんも残念そう。が、山根さん、何故かマナブちんに握手求めて、それが叶って御満悦。オホホ。
サンクリント、お客さんの方向いてポーズ
マナブちんも厩務員さんも晴れ晴れしいぞ。
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ここでも反省
サンクリント、勝ったなあ。単勝1番人気で制したのは、'98年タッカースカレー以来だ。その時4着に敗れた兄の着順を越えてもみせた。もっと前の好位で競馬するかと思ったのだが、出負けもあって後方から。このビハインド、ひっくり返したのも凄い。そしてバックでの脚はまさに「伝家の宝刀」。兄の捲り脚はまさに「炸裂っ!」という感じで、迫力尋常でないのだけれど、この弟の今日の脚は、何だかとても滑らかで、瞬間移動のよう、両者の印象、ちょっと違う。フォームの違いもあるのだけれど(バコールって追い出されても相当クビが高いままで、ガシガシ突っ走るので)。
「出負け、後方からの競馬」という点に関しては、翌日のスポーツ紙に載った、マナブちんの戦後談によれば、「もう少し前で競馬するつもりだったのだが、出負けでじっくり乗る戦法に切り替えた。仮に無理して早めに動いていれば、スイグンは交わせたとしても、他の馬に食われていたかも知れない。」とのこと。2周目の三分三厘以降、スイグンとずっと併走で、単騎先頭にはならなかった件についても、「抜け出して1頭になると遊ぶ癖があるので。あそこは息を入れさせた。おかげで終いも伸びて、巧くいった。」と。やはり「交わせなかった」のではなく「交わさなかった」ようだ。「何とか勝てたなあ。そやけどさすがに現状2400mはしんどかった感じやろぉ。」とは山根さん。リアルタイムでの印象は確かにそうかも。しかしその晩ダイジェスト見直すと、やっぱり終い余裕になっているのだよなあ。大したもんだ。
問題は今後。最大目標は当然、秋の全日本アラブグランプリとなろう。が、兵庫所属である限り、以後ずっと古馬オープンでの戦いとなろう。休養するのでなければ、真夏の摂津盃、もしくは9月の白鷺賞、古馬重賞でも人気背負って走ることになりそう。「しかしこれ、このまま行ったら、兄弟対決、せざるを得んやろ。そうなると楽しみやで、ホンマに。」と山根さんも。
そして田中学騎手。この1年間で、アラブの全国交流競走を3勝。そして重賞8勝のうち、アラブで7勝(トライバルサンダー2勝、サンバコール2勝、ミスターサックス2勝、そして今日のサンクリント、サラはのじぎく賞のバクシンクリークのみ)。まあ、強い馬たちばかりといえばそれまでだが、アラブでの、それもサラ導入後の活躍が目立つ。まさに兵庫の"ミスターアラブ"だな。
失格となってしまったが、先に2着入線のスイグンを。斜行の件は置いておくとして。完璧な競馬だったと思う。鍵はスタート、すんなりハナ奪取にあろう。見事に自分のペースに持ち込んだ。先行他馬が折り合いに苦心する中、1頭際立つ折り合いで、絶妙のスローペース、終いまで脚を保たせた。「やっぱりこの馬場、前が止まらへんわな。あれでゴールまで行けるんやもん。」とはOku師匠。確かにそうだろう。が、他の上位入線馬は終い上昇した連中ばかり、この粘走は目立った。ホンマにこの馬、かなり強いと思う。今後も大いに注目したいし、ワシは応援するぞ。秋の重賞舞台で、ユノエージェントの牙城に、果たしてどこまで迫れるかな。それにしても、これだけの競馬をしつつも、一銭も賞金稼げずに帰らねばならぬのはツラい。地元でクラス上げるのに、全く足しにならなかったわけで。が、メゲるな!そして、早く上位にやって来い!
ブラウンブルドンは残念なことになってしまった。それにしてもムチャムチャ掛かっていたよなあ。ここ2戦鳴りを潜めていた癖だったが、このスローペースでは堪らなかったか。あれでは、よしんば競走中止がなかったとしても、どこまで持ち堪えられたか。なお、競走中止の際、鞍上宇都騎手、鐙から足がなかなか抜けず、馬体の左からずり落ちて、ブルドンの脚の間に着地と、非常に危険な落ち方をしていた。安否が気遣われたが、幸い軽傷だったとのこと(7月はじめには騎乗復帰)。
それにしてもこの2頭、兄弟揃って楠賞に縁と運がない。片や最下位の兄に競走中止の弟。片や上り馬ながら出走できなかった兄(エイランボーイは「出れば必ず好勝負になる」と森澤調教師は見込んでいたものの、同厩のヤングメドウを勝負賭けて臨ませたため、出走控えたいう話もある)に、失格の弟であるからして。
ミルフィーユマリモには恐れ入った。ギリギリの馬体も何のその、サンクリントのさらに後ろから発進して2馬身差まで来ている。つまり上がり4ハロンのタイムは勝ち馬と同じ、もしくは上なのである。実のところ、リアルタイムでは全く意識していなくて、ゴール前、ヤマノユーノスの外に突如突っ込んで来た記憶が残るだけ。3号馬さんは「追い上げ、凄かったですよ。ホントに必死で走ってて、まさに『根性娘』という感じだったですね。」と。そう、離されても絶対諦めずに前に迫るこの根性こそ、彼女最大の強みなのだよな。2歳アラブ優駿でもそうだったし。それにしても今後、どうする?いつまで上山所属でいるのだ、いられるのだ?
ヤマノユーノスは、ゴールドレットさんの危惧的中、肝心のこの舞台で発馬ミス。これでリズムが多少狂ったか。道中の折り合いはまあまあだったが、口向きの悪さとヨレ加減の走りが気になった。個人的に「間が悪いなあ」と思ったのは、勝負所の三分三厘以降。前にも横にも馬がいない、全くの単走になってしまった点。他馬と競り合ってこそ、勝負根性が活きるクチであろうので、これは響いたろう。また、最後の直線もヨレて真っ直ぐ走っておらず、ひょっとしてこの馬、ラチ沿い走るなり他馬と併せるなり、タイトな状態にならないと駄目なのかも。期待していただけに、残念だ。
ビミョウは健闘したと言えよう。二度目のバック早々に追い立てるのは、鞍上平松っちゃんの間合い、それによく応えたとは思う。しかしやっぱり勝利に縁がない。が、ここはむしろ、大舞台だろうが平場戦だろうが、殆ど関係なくソコソコ上位入線する点を強調するべきか。まあ、やっぱり長丁場は合うようで、いつになく生き生きしていた気もする。
シルバーブレットは、最初のホームストレッチ、いきなりの殿が印象に残っただけで、中盤以降の印象は皆無。仮にスタート直後の不利がなかったとしても、果たしてどこまでやれたのかは疑問。最後はそれなりに詰め寄って来てはいたようで、ミスターヨシゼン産駒らしく、長距離適性はまずまずあるのかも。今回は残念。金沢所属馬、そして蔵重騎手の、連続Vは成らなかった。
クールフォーチュンは、現状の割にはよく走った方なのでは。フクパーク記念では道中やたら引っ掛かっていたが、今日は打って変わって、殊に中盤いい感じに折り合えていた。岩田騎手も問題なく乗ったと思う。後半伸びなかったのはちょっと力負けな感じ。因みにこのレース後、兄テツオーを追う形で福山移籍。この馬、2歳末の時点で、完成されてしまっている感じがして、今後の伸びしろ、あるのかどうか、ちょっと心配。この見立ては少なからず聞かれる。
勝ちタイム、2分41秒6。この馬場の割には明らかに遅い。それだけスイグンが作り出したペースがスローだったわけだろう。スローペースの長丁場であれば、前行った馬が絶対有利と思われるのだが、先行馬は数多く脱落。勝者が本命の捲り馬、「能力なり」と言えばそれまでだが、競馬はやはり、やってみないとわからない。
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おわりに
メインレースの時間帯の明るさは、天気の神様と競馬の神様の、せめてもの計らいか。表彰式が終わって最終レースを迎える頃には、再び雲が重くなって、あたりは陰に濃く覆われてしまった。それはあたかも、アラブ競馬の今後を象徴するかのよう。天気のことであれば、やがて回復して晴れ間もやって来る。が、アラブ競馬にその時は、もう訪れまい。そう思うと、一抹の寂しさは禁じ得ない。
されど、これでメゲてはいかんのだ。今日を走った馬たちの闘いは、まだまだ続くじゃないか。そこまで射程に入れて観戦せずして、何の意義があろうか。「楠賞が全て。後の馬生は知りません。」そんなもんじゃないだろう。
楠賞の終わりは確かに残念であり、重大だ。ここにおいて「アラブは終わった。」と、言ってのけるのは容易かろう。が、現状でアラブ終焉を云々するのは、観念論的な言い回しで恐縮だけれども、詰まるところ、ファン個々人の捉え方向き合い方次第だ。ワシ個人、観たいレース観たい馬、まだまだ続くし、たくさんいるんである。
だから、「アラブは終わった。」なんて物言い、ワシは絶対イヤだから。そう見なさざるを得ぬ日は、やがて必ずやって来よう。それは判っている。いるけれども、
その時には、まだ早い。断じてまだ早い――
2003.7.3 記
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