第34回ヤングチャンピオン観戦報告
2003.11.24、福山、1600m
◆レースのあらましなど
福山競馬の2歳重賞、ヤングチャンピオン。かつては当地の2歳王者決定戦であったところ、2001年、全日本2歳アラブ優駿が新設されたことに伴い、開催が11月に繰り上がって、それに向けての地元前哨戦といった位置づけのものに変容した。
前開催の2歳1組2組3組戦は、当レースへのトライアル戦として、それぞれニューヒーロー特別、ビクトリー特別、エクセレント特別と銘打って施行、結果それぞれ以下の馬たちがここへ駒を進めた。このうち、ビクトリー特別とエクセレント特別については、こちらに少々記述ありますので参考までに。
・ニューヒーロー特別(1〜5着馬に優先出走権)
2着ピアドジャザー、3着ユタカマンタロウ、4着ハマノミーキ、5着ホマレタイセイ、9着アトムビクトリー、10着フクイズミ
・ビクトリー特別(1〜3着馬に優先出走権)
1着ヤスキノショウキ、2着ホワイトファイター、3着フジキウルフ
・エクセレント特別(1、2着馬に優先出走権)
2着ホクザンファイズ
なおエクセレント特別1着で、あのワシュウジョージの全弟の素質馬として注目されるタッカーワシュウは回避。また、肝心のニューヒーロー特別の勝者キタキコウは、道営デビューのため、2001年度より実効の「ヤングチャンピオン、キングカップ、クイーンカップ、福山ダービーは、福山デビュー馬に出走資格を限る。」なる規程、俗に言う「鎖国政策」に抵触して、出走は叶わない。
◆当日の概況
現地には正午頃に着。天気予報は晴れのちくもり。その通りに、午後になると雲が出て翳った。曇ってからは風が吹き始め、結構寒くなった。
馬場状態は朝から稍重。前々日の土曜日に砂が入って、特にインコースがかなり深め。好位差し、それも最後馬場外目を上昇した馬の連入が目立つ傾向。
特記すべき出来事が一つ。第4競走、2歳4組戦の本馬場入場時、セトウチキャロル騎乗の岡崎さん、通路で馬が暴れて落馬負傷。以後の全鞍を乗り替わりに。のみならず、またもや長期欠場に追い込まれてしまった。因みにセトウチキャロルはあのニホンカイキャロルの仔だが、ホンマに気性悪いらしい。「とうとうやらかしてしまいましたか・・・」とは、この事件を知った3号馬さんが後に語ったところ。
◆レース模様
距離は1600m。向こう正面半ばからのスタート。
まずは最内ホマレタイセイと中ホクザンファイズの出が目立ったが、ホクザンは程なく控える。そしてハマノミーキが、鞍上對ィクンに押されて、最初の3コーナーまでにハナを奪取。ホマレタイセイは差のない2番手に。外からユタカマンタロウが追って、これも2列目先行態勢。一方先手を取るかと思われたピアドジャザーは、出っ端に勢いなく馬群に包まれそうになるところ、何とか押し上げマンタロウの後ろまで。
正面スタンド前。先頭変わらずハマノミーキ。1馬身程あって次列内にホマレタイセイ、外のラインにユタカマンタロウ。この直後さらに外目にピアドジャザーがいて、フジキウルフはジャザーの同列イン。次いで中団3頭、内ヤスキノショウキ中ホクザンファイズ、やや下がった外にホワイトファイター。アトムビクトリーとフクイズミは後方追走。ホームストレッチを進行するうちに、内ラチ沿いをヤスキノショウキが掛かり気味になって、1コーナーあたりでは、2番手ホマレタイセイの直後インにまで押し上がっている。
最初の正面スタンド前、先頭ハマノミーキ
次列外桃帽マンタロウ、次いで外の橙帽がジャザー
2コーナー、先頭ハマノミーキ、次いでヤスキノショウキとホマレタイセイが内外タイトに。そしてユタカマンタロウ、ピアドジャザー。この先団5頭は一団。
三角手前、ホマレタイセイが仕掛けて先頭に立つ。呼応してユタカマンタロウも野田クンに押されて動く。さらにピアドジャザーが追撃。三分三厘、勢いあるのはユタカマンタロウ。四角あたりでホマレタイセイを捉え、これで先頭に躍り出た。そして直線、勢い衰えずゴール目がけて一目散に。
終盤の攻防。ホマレタイセイは内で粘るも、盛り返す勢いはない。その一方でマンタロウに迫ったのはピアドジャザー。さらに外からホクザンファイズが、バックからロングスパートでやって来る。が、勝負は決した。ユタカマンタロウ、きっりゴールまで走破して、重賞の星をGet成功。2着とは結局2馬身差だったようだが、印象としては着差以上の完勝。
際どくなったのは2着争い。先にマンタロウを追ったピアドジャザーを、ホクザンファイズがゴール寸前、アタマ差交わして先んじた。
ユタカマンタロウ、ゴール目がけて快走
思った以上に強かったな
1着 9 ユタカマンタロウ 牡2 54.0 野田誠 堀部重 447 0 3人 1:50:1
2着 5○ホクザンファイズ 牡2 54.0 渡辺博 外山清 468 -6 2人 1:50:5 2
3着 7△ピアドジャザー 牝2 53.0 嬉勝則 白津壽 421 -2 1人 1:50:5 アタマ
4着 3◎ヤスキノショウキ 牡2 54.0 片桐正 神原勝 467 +7 4人 1:51:1 3
5着 1△ホマレタイセイ 牝2 53.0 岡田祥 堀部重 450 -1 5人 1:51:3 3/4
6着 2 ハマノミーキ 牝2 53.0 對ィ雄 番園一 448 0 9人 1:51:5 1
7着 10×ホワイトファイター 牡2 54.0※黒川知 那俄哲 469 +2 6人 1:52:1 3
8着 8 アトムビクトリー 牡2 54.0 佐原秀 那俄哲 447 -1 7人 1:52:2 1/2
9着 6 フクイズミ 牝2 53.0 高森良 吉井昭 465 +2 9人 1:52:4 1
10着 4 フジキウルフ 牡2 54.0 楢崎功 東森優 472+10 8人 1:53:0 3
※ホワイトファイターの騎手は岡崎から黒川に変更
(予想印はワシの現地最終判断)
- ◆出走馬へのメモ
- ユタカマンタロウ(1着)
- 実入りと馬体張りに富んだガッチリ体型、これはレオグリングリン産駒らしいところ。それでも胴回りは心持ち緩めか。気性難あるようで、デビュー当初はゲート入り嫌ったり出負けたりと、正直アテにし辛いなと思っていた馬。ところが今回、包まれぬ外枠発走も幸いしたか、見事な先行押し切り競馬。終いまでしっかり走り切った。因みに昨年の勝者ユタカリュウオウとは、同一騎手、厩舎、馬主、そして同じ父馬。
- ホクザンファイズ(2着)
- 持ち賞金は出走馬中最低額ながら、息の長い脚で距離延長して良かろうと目されていた馬。パツキン尾花栗毛のド派手なルックス。明るい毛色の毛あしは長めで、艶はソコソコ。胴はやや緩め。気合い入って大股でパドック周回。戦前の見立て通り、中団待機から後半ロングスパートで2着に届いた。今後が楽しみ。
- ピアドジャザー(3着)
- ベルベットのような毛並み、灰色芦毛のユーノス産駒。線の細いスリムな体型。歩幅は普通だが歩様は柔らかい。時折小走りでのパドック。先手奪うかと思いきや、それが叶わなかったのは誤算か。尤も、元来ゲート不安あったようだが。超早熟が相場のピアドタイトルの仔でもあり、さほど期待もしていなかったが、その割には好位差しの体裁になって、しっかり複勝圏入り。思ったよりは好走。
- ヤスキノショウキ(4着)
- 馬体重467kはホーエイヒロボーイ産駒としては大きくないが、どっしりした胴と大きな腰はそれらしい。馬体張りはなかなか。踏み込みはやや硬めか。しっかりとした、且つ鋭い終いの脚が身上、今回もそれを活かす競馬かと思ったところ、正面スタンド前で掛かって押し上がってしまった。ササり気味でもあって、最内でタイトに過ごすことに。結果4着も末脚は発揮されず、片桐騎手としても誤算、不満ある競馬だったのでは。
- ホマレタイセイ(5着)
- あのホマレエリートの半妹、父がスマノヒットからカヅミネオンに変わっている。デビューから3連勝で夏の特別戦ひまわり賞を制した。が、その後スランプに。「カヅミネオン産駒は一頓挫あると立て直すの大変。」とは"同志"ディープさん共々唱えるアラブ界の定説。張り艶は思ったよりいい。割と胴はガッチリ。首長なところは姉似か。2番手から抜け出し一旦は先頭に。四角まで持ち堪えたのは、現状よくやったと見るべきか。
- ハマノミーキ(6着)
- あのイセイチフブキやクールテツオー・フォーチュンらの全妹だが、これらセルレアの仔、活躍馬が牡馬に偏っている。首差しはスラリと、張りはまあまあ。明るい鹿毛。首を高くしてチャカチャカと周回。「行って粘るだけ。」と評される脚質。近走先行叶わなかったことを思えば、逃げてやるだけのことはやったとも。
- ホワイトファイター(7着)
- あのマジックフエルドの初仔。濃い灰色芦毛は母父イムラッドからの遺伝(因みに父ミスターオリビエは鹿毛)。雰囲気もルックスも、母や叔父ホワイトキャンプに近いか。コロコロパンパンな胴。じんわり力強い歩み。中団から差し脚を活かす競馬だが、結局届かなかった。脚質もこの一族らしい。
- アトムビクトリー(8着)
- 鹿毛のユーノス産駒。やたら脚長背高なのはそれらしい。パッと見華奢なルックス、幅も薄い。毛艶なかなか。前半動けない追い込み一手の脚質のよう。今回も殆ど後方ママだった。
- フクイズミ(9着)
- デビューから3連勝を飾るも、7月早々に頭打ちとなった超早熟馬。元々のフォルムは均整取れていていい感じなのだが、艶も冴えず張りも一息。ヒ腹から後半身の力感も乏しい。身のこなしは柔らかいが覇気は全くない。先行脚質の筈だが、それすら叶わず後方ママ。
- フジキウルフ(10着)
- 胴のラインは緩めでちょっと背垂れ。鶴首気味になって小走り、焦れ込み気味か。逃げたいクチのようだがハナは叶わず。先行勢の一団で、道中かなり掛かり気味に、気性は激しそう。中盤で後退したしまった。
ホクザンファイズ、返し馬
ド派手なパツキンをなびかせて
◆ちょっと注目の最終競走
最終第11レースはA1戦、つばき特別、距離1800m。菊花賞馬のユキノホマレと同3着のホマレエリートはお休み。出走馬はおしなべてプラス馬体重、それが見た目にハッキリと。
ここはモナクカバキチ、ライトジュピロの逃げを1コーナー早々に捉え先頭に、終いは7馬身差のブッチ切り圧勝。前開催の菊花賞、距離2250mに掛かって5着沈没の鬱憤を晴らした。何だか力有り余っている感じ。得意の千八戦ならば、今や怖いものないのでは?と思われるほど。今夏来、ホンマに強くなっている。2着も千八得意のネーチャーフレンドが、今日は中団差しで。菊花賞2着のハカタカッサイは、先行競馬するもネーチャーに差されて3着。
このレース、最大の注目はあのワシュウジョージ。この秋園田から転入して、前開催A3戦に登録されるも回避で、今回当地緒戦。馬体重461kは+17kで生涯最高値。胴は「これがワシュウか?」と思うほど太い。恐らく生涯初めて、素顔でレースに臨む。星も何もないフツーの顔。さてレース、中盤までは先団で掛かり気味に進めるも、後半脚を完全に失してブービー入線。
一昨年あたりから、非常に乗りづらく、鞍上の指示に従おうとしなくなっているとは聞いている。野田クンも苦労して乗っていた。が、問題はもっと根本的だろう。ズバリ「もう無理でっせ!」。ナミダ出そう・・・
◆おしまい
このヤングチャンピオン、1着〜5着馬までに、次開催12月21日に施行される、全日本2歳アラブ優駿への優先出走権が与えられる(恐らく5着馬は予備馬=補欠)。結果、自動的に、全国交流決戦における、地元勢の陣容が定まったことになる。
その2歳決戦、最大の注目を集めること必至なのは、あの、北から襲来する超大物。さて地元勢、これをどう迎撃する?その日は27日後、楽しみに待つとしよう。
などと書きつつも・・・
「この面々が、アラブ競馬最後の王国の、選りすぐられた筆頭迎撃手たちとはなあ。そりゃエエ馬素質馬かも知れやんけど、小粒な感は否めんよなあ・・・」というのが実は本音。「上位混戦、粒揃い。」こう捉えれば格好付くのだろうが、どうもそれとも違う。とにかく押し出し感が、ホンマにない。
せめてキタキコウが・・・って、ヤングチャンピオン走らなければ、"全日本"への出走権、絶対回ってこないシステムの前には、どうしようもないという、これが。「不憫だ・・・」
2004.1.11 記
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